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○書評『入門不動産投資信託』

田原 拓治

 リートに関する本がプログレスという会社(電話03-3341-6573)から発行された。R・L・ブロック著『入門不動産投資信託』という本である。翻訳者は松原幸生・河邑環の両不動産鑑定士である。

 不動産投資信託(略称「リート」)とは何んなのか。SPCだ。不動産フアンドだと言われるが、それらと「リート」とはどういう関係にあるのか。

 日本人がリートについて持っているはっきりとわからないもやもやしたものを、アメリカで現実に多く流通しているリートという商品が、具体的にどのように販売され、購入されているのか分かり易く説明して、そのもやもやを解きほぐしてくれる。さらにリートの歴史および現状についても、失敗例も挙げて極めて分かり易く説明されている。自分も買ってみようかという気持ちを起こさせる。

 読んでみると、アメリカでは「不動産=リート」、「不動産業者=リート業者」であると言っても過言ではないとわかる。
 日本で発行された「Jリート」は貸ビルのリートであるが、アメリカではオフィスビルはもちろんアパート、工場、ホテル、ショピングセンター、倉庫、病院、果ては老人ホームまでリートの対象である。

 それらリート発行業者名が何度も出てきて、最初は片仮名名が煩わしかったが、そのうちにその名も覚えてしまい、このリート業者は東海岸のモール(ショピングセンターの複合施設)を得意としている会社だなという具合にわかつてくる。

 FFOとか、NAVとか、アップリート、レバレッジなどの専門用語もどういうところで使用されるのか、実例の解説に伴い、自然とその内容が理解出来る。本書はリートを理解するにはまことに手頃な本である。

 私は本書P82の次の文章に強く引かれた。
 「あるモール・リートの賃料は1平方フィート当り約40ドルと高額で、1平方フィート当りの売上高も400ドルに達する。」
 即ち、アメリカのモールの賃料は売上高の10%と言っている。

 私は常日頃、店舗の賃料は売上高と関係があると考え、それに関する論文も発表したが、アメリカでもその考え方があり、むしろそれが一般的であることを知り、私の考えは間違っていなかったことを確認出来て安心した。

 この本の原書出版社はアメリカのブルームバーグ社である。

 私はありふれた出版社であろうと思っていたら、とんでもない。9月11日のテロ事件後の精力的な働きで世界的に有名になったジュリアーニ・ニューヨーク市長の後を次いで、今度選挙でニューヨーク市長になったあのブルームバーグ氏が、アメリカサクセスストーリーのごとく一代で築き上げたそのサクセスストーリーの当の出版社と聞いてびっくりした。

 それだけの著名な出版社が、「プログレス」という名前を今まで聞いたこともなく、どんな会社内容で、どんな本を出しているのか、誰が経営しているのか、大きいのか小さいのか、いずれもさっぱりわからない会社に、よくぞ本書の翻訳権を許したと驚いている。

 プログレスという会社は、出版にズブの素人の2人の不動産鑑定士が気ままに作った会社であるらしく、編集者に良き人を得て、本書が発行されたと聞く。初めての翻訳本の出版であり、今後、不動産鑑定、不動産証券化等の専門書およびブルームバーグ社の翻訳本を厳選して発行してゆくようである。

 その会社は出版事業を始めたばかりの小さい会社のため、書店では本書を売っていない。

 注文は下記ホームページから直接申し込み出来ます。

        http://www.progres-net.co.jp/

 頒価は2,500円+税です。

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