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『システム賃料』

 田原拓治

 「システム賃料」とはどういう賃料なのか。
 名前は私が勝手につけたものであり、「新規賃料」とか「比準賃料」のごとく業界に概念が確立しているものではない。

 システム賃料の概念は、賃料を「平均」で捉えようとする考え方である。

 1つの駅勢圏に存在する多くのマンションの賃貸事例データの、賃料を含め、その賃料に附随する徒歩分、経年、面積のそれぞれの平均値を求め、その平均値から徒歩5分、築5年、面積60uの賃貸マンションの「標準賃料」を求める。

 その「標準賃料」から対象マンションの駅徒歩分、経年、面積によって対象マンションの「基準賃料」を求める。その「基準賃料」に前記3要因(徒歩分、経年、面積)以外の個別的要因によって修正を行い、対象マンションの賃料を求めるものである。

 各駅勢圏の賃料及び3要因の平均値は、バラバラで、全くの一貫性も経済法則性も認められない数値であるが、駅勢圏ごとに決められた修正値を使用して、徒歩5分、経年5年、面積60uの「標準賃料」を求めてみると、同一沿線では都心に近づくにつれて「標準賃料」は高くなり、急行停車駅の「標準賃料」は、止まらない駅の「標準賃料」よりも高いという1つの規範性ある賃料現象が認められる。

 それは目に見えない糸によって経済行為が行われているのではないかと思いたくなる現象である。

 現在の不動産鑑定では、賃料あるいは価格を平均で捉え、あるいは考えるという考え方はない。
 個々別々のデータから比較して求めることが優れていると考えている。

 この考え方の最大の欠点は、採用した個々のデータが、1つの駅勢圏(母集団)の中で、どの位置にあるのかということが全くわからずに比較作業が行われ、賃料が求められ、求められた結果が適正であると考えられ、主張されることである。

 採用した賃貸データを、評価する人が適正な賃料データと思った根拠は何なのか。その実証根拠が示されない。

 適正と思って採用した賃料が高い水準のものであった場合、求められる賃料は、結果において高い賃料水準のものとなり、それは、「適正」という名のもとで罷り通るということになる。

 DCF法で使用される賃料を、契約されている賃料であるからといって無条件で適正と判断して、採用してよいものかどうか。
 あるいは何のデータ根拠の説明もなく使用されている賃料を、そのまま100%信用して、DCF法で得られた価格を適正と認められるものかどうか。

 DCF法は還元利回りや、借入金割合等にとかく目を奪われているが、DCF法に使用する根本である賃料の妥当性の検証こそがより大切である。

(目次内容)
      1.なぜ、市場賃料が必要か
   2.伝統的な賃貸事例比較法による比準賃料の問題点
   3.システム賃料の概要
   4.システム賃料の求め方
   5.システム賃料は市場賃料を反映しているか
   6.駅徒歩分、経年、面積の3要因で賃料の90%が説明されるか
   7.その他の個別要因とは何か
   8.従来の賃貸事例比較法の賃料誤差
   9.従来の賃貸事例比較法の賃料とシステム賃料
  10.平均賃料から対象賃料を求める術を知らなかった
  11.異なる駅勢圏賃料の比較
  12.標準賃料の沿線グラフ
  13.システム賃料の応用・・・標準賃料と賃料指数

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