2245)「建物等取壊費用の積立金」は償還基金率で求めるべきではないのか
1.はじめに
私はあまり関心を持っていなかったのであるが、ある不動産鑑定士の方から、
「地価公示の土地残余法を見ていてふと思ったのですが、費用に「建物等取り壊し費用の積立金」があり、償還基金率ではなく元利逓増償還率を使用しています。」
と事実を指摘して、この事について疑問に思いますが、どうですかという問い合わせのメールを頂いた。
もともと私は、40年後、50年後の建物解体工事費費など物価変動等があり、考えても無駄と思っていましたので、深く考えていなかった。
40年後、50年後の解体工事費は、その時になって仮設工事費に含めて考えれば良いという考えから私は解体工事費を全く考えていなかった。
解体工事費は、鑑定依頼者から求めて欲しいと依頼があった時とか、建物が古く最有効使用で無いことによって建付減価が土地に発生している時に、建物解体工事費を求めていた。
ある不動産鑑定士が、地価公示価格の収益還元法の土地残余法では費用として、40年後或いは50年後の建物解体費の積立金を考えているが、その積立金の求め方に疑問を持つという事なので考えて見ることにした。
なお、文中の算式の累乗の表示は、当コラムでは算式表示機能がないため、「の45乗」ごとくの表示になっていることをご了承下さい。
2.地価公示価格の土地残余法の建物等取壊費用の積立金の割合
数年前から国土交通省は、地価公示価格の鑑定書を公表するようになった。
その公表鑑定書を見ると、全ての地価公示価格が収益還元法を採用して収益価格を求めているのではないが、土地価格が高い商業地、住宅地の地価公示価格においては収益還元法が行われている。
公示地の土地上に最有効使用の賃貸建物を想定し、その賃料よりその土地の収益価格を求めている。
その収益価格を求める過程において、総費用の項目の最後の方に「建物等取壊費用の積立金」の項目がある。
その「建物等取壊費用の積立金」は、再調達原価に0.1%を乗じて金額が求められている。
多くの公表されている地価公示価格の収益還元法の総費用に計上されている「建物等取壊費用の積立金」を見ると、殆どが再調達原価に0.1%を乗じて求められている。
3.0.1%の根拠
① 平成30年の「地価公示実務実施についての運用指針」
再調達原価に乗じる0.1%の数値の論理的算出根拠について、手許にある平成30年の「地価公示実務実施についての運用指針」(日本不動産鑑定士協会連合会)を見ると、
「想定建物の初期投資額(再調達原価)に建物構造に応じて0.05~0.1%を乗じて求める。」
と記されているだけで、その数値の算出根拠は書かれていない。
② 平成21年の「地価公示実務実施についての運用指針」
再調達原価に0.1%を乗じて求めるだけでは根拠説明にならない事から、算出根拠が書かれている運用指針は無いものかと、少ない所蔵の書物を探したところ、平成21年の「地価公示実務実施についての運用指針」(「21年指針」と呼ぶ。)に0.1%にする根拠が書かれているのを見つけた。その求め方を下記に記す。
イ、積立金の算式
積立金は次の算式で求めるという。
積立金=建物の初期投資額×取壊費用率×積立率
S・W 6%
RC・SRC 10%
S・W 0.5%
RC・SRC 0.5%
S・W 25年
RC・SRC 40年
T=建物の取壊費用の現価 B=建物等の再調達現価 α=取壊費用率 r =基本利率 g =建設費の変動率 n =土地の純収益の継続期間 a =初年度の積立金
1 T=B(1+g)のn乗×α × ─────── (1+r)のn乗
a (r-g)(1+r)のn乗 ─── = ─────────────── × α B (1+r)のn乗-(1+g)のn乗そして計算結果として、下記のごとく述べる。
a (r-g)(1+r)のn乗 ─── = ─────────────── × α B (1+r)のn乗-(1+g)のn乗
a (r-0)(1+r)のn乗 ─── = ─────────────── B (1+r)のn乗-(1+0)のn乗であり、この算式は利率r、期間nの元利均等償還率の算式である。
a r(1+r)のn乗 ─── = ─────────────── B (1+r)のn乗-1
a/B=0.001572~0.001183である。
21年指針は「0.122~0.157」とあるが、小数1位の0が抜けている。
a/B=0.001221~0.000778である。
21年指針は「0.078~0.122」とあるが、0.078は小数1位の0が抜けており、0.122は小数1位と2位の0がそれぞれ抜けている。| ① | 仮設養生費 | 757000 | 円 |
| 単管足場、養生シート、用水費 | |||
| ② | 建物解体費 | ||
| イ、内部解体費 | 3303860 | 円 | |
| ロ、コンクリート解体費 | 6780000 | 円 | |
| ハ、鉄筋切断費 | 1200000 | 円 | |
| ニ、小計 | 9283880 | 円 | |
| ≒9280000 | 円 | ||
| ③ | 解体処理費 | ||
| イ、内部処理費 | 4346200 | 円 | |
| ロ、コンクリートガラ | 12995000 | 円 | |
| ハ、小計 | 17340000 | 円 | |
| ≒17340000 | 円 | ||
| ④ | 解体費合計 | 27377000 | 円 |
| ⑤ | 諸経費 0.15 | 4106550 | 円 |
| ⑥ | 総計 | 31483550 | 円 |
| ≒31480000 | 円 | ||
| (36200円/㎡) |
79,500,000円÷303.00㎡=262,376円/㎡≒262,000円円/㎡
である。
36,200円
─────── = 0.1381≒0.138
262,000円
13.8%である。
79,500,000円×0.138=10,971,000円≒10,970,000円
と求められる。
r
──────────
(1+r)のn乗-1
である。
0.0222
──────────
(1+0.0222)の45乗-1
の算式となる。1097万円×0.01316=14.436528万円≒14.44万円14.44万円と求められる。
(1+r)のn乗-1
──────────
r
である。償還基金率を求める算式の逆数である。
(1+0.0222)の45乗-1
─────────────
0.0222
2.686052-1
= ─────────────
0.0222
1.686052
= ─────────────
0.0222
= 75.948288
年金終価率は75.948288と求められた。
14.44万円×75.948288= 1096.693万円≒1097万円
45年後の金額は1097万円になる。
積立金額=新築工事費(再調達原価)×解体工事費割合×償還基金率
の算式で求められる。79,500,000円×0.138×0.01316=144,378円≒144,400円上記計算から積立金割合は、
積立金割合=解体工事費割合×償還基金率
となると判断される。
0.138×0.01316=0.001816
である。79,500,000円×0.001816=144,372円≒144,400円積立金額144,400円が求められる。
積立金割合=解体工事費割合×償還基金率
である事が実証された。