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国土交通省が、同省のホームページに土地取引価格データを公表している。
四半期ごとにまとめて発表している。
この公表データより、住宅地の土地価格を求める方法を述べる。
まず、国交省の公表の土地取引価格データにたどり着く手順を述べる。
手順が分かっている人は、ここ(1~10)を飛ばして先を読んで下さい。
1.国交省のホームページを開く。
http://www.mlit.go.jp/
2.ホームページの玄関ページが表れる。
その画面の「土地・建設産業」の政策リンクをクリックする。
3.表れた画面の左欄の「地価公示・都道府県地価調査・不動産取引価格情報」をクリックする。
4.表れた画面の「不動産取引価格情報検索」をクリックする。
5.日本全国の都道府県区分地図が出る。 その検索したい都道府県をクリックする。
6.例えば東京都府中市の取引価格を知りたい時は、地図上の「東京都」をクリックする。
7.表れた画面の「土地」をクリックする。
8.「取引時期「平成23年第4四半期(過去1年間を含む)」、「東京都5,185件」とでる。
9.「市町村」のプルボタンをクリックする。
都の市町村一覧が出る。
「府中市152件」と表される。
ここをクリックする。
そして「この条件で検索」をクリックする。
10. 表れた画面には、府中市の土地取引価格152件の一覧が表示される。
こうして土地価格のデータにたどりつくことが出来る。
データは、所在地、最寄り駅、取引価格、面積、㎡当り単価、道路幅員等16項目の要因が記されている。
この府中市152のデータの内、駅勢圏「府中駅」のデータを選び、その他、次の要因のデータを削除する。
・「住宅地」以外は削除
・都道及び幅員10m以上は削除
・道路幅員4m未満のものは削除
・不整形地形の土地も削除
こうして残されたデータは12件である。
下記のデータである。
№ 所在地 地域 最寄駅 距離 取引価格 坪単価 面積 ㎡単価 形状 幅員 種類 方位 都市計画 建蔽率 容積率 取引時期
22 府中市 幸町 住宅地 府中(東京) 11分 9,200万円 200万円 155m² 59万円 長方形 4.0m 私道 南西 1低住専 50% 100% H23/10-12月
26 府中市 幸町 住宅地 府中(東京) 15分 3,900万円 120万円 105m² 37万円 長方形 4.0m 市道 北西 1低住専 50% 100% H23/07-09月
28 府中市 幸町 住宅地 府中(東京) 14分 5,000万円 90万円 185m² 27万円 ほぼ長方形 4.5m 市道 東 1低住専 50% 100% H23/07-09月
54 府中市 新町 住宅地 府中(東京) 24分 3,300万円 95万円 115m² 29万円 ほぼ台形 6.0m 市道 東 1中住専 60% 200% H23/04-06月
64 府中市 天神町 住宅地 府中(東京) 26分 2,600万円 80万円 105m² 24万円 ほぼ長方形 4.0m 市道 西 準住居 60% 200% H23/01-03月
75 府中市 府中町 住宅地 府中(東京) 11分 3,200万円 150万円 75m² 44万円 長方形 6.0m 市道 北東 準住居 60% 200% H23/10-12月
77 府中市 府中町 住宅地 府中(東京) 12分 9,000万円 110万円 280m² 33万円 ほぼ長方形 4.0m 市道 南西 1低住専 60% 150% H23/07-09月
78 府中市 府中町 住宅地 府中(東京) 9分 7,400万円 120万円 210m² 35万円 ほぼ長方形 4.0m 市道 南 1中住専 60% 200% H23/04-06月
79 府中市 府中町 住宅地 府中(東京) 14分 3,500万円 130万円 85m² 41万円 ほぼ長方形 4.0m 市道 南 1低住専 60% 150% H23/04-06月
80 府中市 府中町 住宅地 府中(東京) 9分 4,100万円 150万円 95m² 44万円 ほぼ長方形 4.0m 市道 南 1中住専 60% 200% H23/04-06月
82 府中市 府中町 住宅地 府中(東京) 9分 8,900万円 140万円 210m² 43万円 ほぼ長方形 4.0m 市道 南 1中住専 60% 200% H23/04-06月
84 府中市 府中町 住宅地 府中(東京) 13分 4,300万円 140万円 100m² 43万円 ほぼ長方形 4.0m 市道 南西 1低住専 60% 150% H23/01-03月
上記データの16項目の内、駅距離、㎡当り単価の項目のみ使用する。
㎡単価(万円) 駅距離(徒歩分)
59 11
37 15
27 14
29 14
24 26
44 11
33 12
35 9
41 14
44 9
43 9
43 13
ここで、㎡単価をY、駅距離徒歩分をXとする。
土地価格は、駅もしくは経済中心地に近づくに従って高くなる。
逆にいえば、駅もしくは経済中心地より遠ざかるに従って安くなる性質を持つ。
この土地価格の価格形成特質を「地価のコンケープ」説という。
この土地価格形成の特性を利用して、
Y=a+bX
の関係式が、XYの間に成立すると考える。
上記データを最小二乗法(単回帰分析)で求める。
パソコンのエクセルというソフトの中に、「回帰分析」という解析ソフトがある。
標準タイプでは、回帰分析の解析ソフトは使える状態になっていない。
「ツール」→「アドイン」をクリックし、「分析ツール」をチェックすれば、回帰分析の解析ソフトが使える状態になる。
回帰分析の解析ソフトを呼び出す。
XYのデータを入力すれば、回帰分析の計算が瞬時に成される。
結果は、
Y=53.458-1.092X・・・・・・・・①式
である。
相関係数は0.63である。低い。
観察値データと理論値は、下記の通りである。
№ 観察値 理論値 偏差
1 59 41.43 17.56
2 37 37.06 -0.006
3 27 38.15 -11.15
4 29 27.23 1.76
5 24 25.04 -1.04
6 44 41.43 2.56
7 33 40.34 -7.34
8 35 43.62 -8.62
9 41 38.15 2.84
10 44 43.62 0.37
11 43 43.62 -0.62
12 43 39.25 3.74
データ№1の偏差(誤差)が大きい。次いでデータ№3の偏差が大きい。
この2つのデータは、№1が甚だ高く、№3が逆に低すぎると云うことである。
相関係数が低く求められたのは、この2つのデータによることが大きいものと思われる。
№1、№3のデータを具体的に調べれは、どうしてそうした取引価格になったのか、その理由が分かるであろうが、現段階ではこれ以上は分からない。
イレギュラーのデータと思われ、この2つのデータを削除すれば良いが、そうすると思惟性が入ることとなり、それは行わない。
上記①式より、対象地が駅より徒歩10分の距離にあるとすると、その土地価格は、
Y=53.458-1.092×10
=42.54
㎡当り42.54万円である。
駅より徒歩10分の、幅員4m道路に面する土地価格は、㎡当り42.54万円である。
同様にして、徒歩1分、2分、3分・・・・・20分の土地価格は、Xに1,2,3・・・・・20を代入すれば求められる。
下記の通りである。
徒歩分 土地価格㎡万円
1 52.37
2 51.27
3 50.18
4 49.09
5 48.00
6 46.91
7 45.81
8 44.72
9 43.62
10 42.54
11 41.45
12 40.35
13 39.26
14 38.17
15 37.08
16 35.99
17 34.89
18 33.80
19 32.71
20 31.62
国交省の公表している土地取引価格より、土地価格はこの様にして求めることが出来る。
この価格に、個別的な要因の道路幅員、地形、角地等そして対象地の土地価格に特別に影響を与えていると思われる用途地域、環境等の要因修正をすれば、かなり適正な土地価格に近づくことが出来る。
上記で徒歩分ごとの土地価格が求められた。
この価格を評点化する。
徒歩10分の土地価格を評点100とする。
徒歩5分の土地価格評点は、
48.00万円
─────── × 100 = 112.8
42.54万円
と求められる。
同様にして、駅徒歩分の各分の土地価格評点を求めると、下記の通りである。
徒歩分 土地価格評点
1 123.1
2 120.5
3 118.0
4 115.4
5 112.8
6 110.3
7 107.7
8 105.1
9 102.6
10 100.0
11 97.4
12 94.9
13 92.3
14 89.7
15 87.2
16 84.6
17 82.0
18 79.5
19 76.9
20 74.3
徒歩10分の土地価格を100とすると、府中駅勢圏の土地価格評点は、徒歩1分当りプラス・マイナス2.5ポイント増減していることがわかる。
これが、駅距離要因の土地価格修正率である。
この駅距離修正率は、各駅勢圏ごとに形成されているが、多くの駅勢圏の価格評点を分析してみると、傾向が認められ、幾つかのパターンに収斂されてくる。
それは、駅勢圏の駅前商業地の規模、背後の住宅地の熟成度と規模によってパターン化されてくる。
この駅勢圏要因の土地価格評点を利用すれば、データの平均値より、土地価格を求めることが出来る。
前記府中駅勢圏の12データの平均値は、
土地価格平均 ㎡当り38.25万円
徒歩分平均 13.92分
である。
例えば、求める土地は、府中駅より徒歩8分の所にあったとする。
ここでデータの徒歩分平均の13.92分は、四捨五入して徒歩14分と考える。
とすると、評点は89.7である。
徒歩8分の評点は、評点表から105.1である。
徒歩13.92分(≒14分)の土地価格は、38.25万円と求められている。
徒歩8分の土地価格は、
105.1
38.25万円 × ───── ≒ 44.8万円
89.7
㎡当り44.8万円と求められる。
この求め方は、駅徒歩分の土地価格評点が前もって分かっていなければならないが、前記したごとく、駅勢圏の駅前商業地の規模、背後の住宅地の熟成度と規模によってパターン化されてくることから、当該駅勢圏がどのパターンに属するのか分析することによって、採用する土地価格評点表が分かる。
これがデータの平均を利用して求める土地価格分析手法である。
現在の不動産鑑定評価基準は、土地価格等データを平均して、それから不動産価格を求めるという分析手法について全く記述していない。
平均で不動産価格を捉えるという考え方が、視野に入っていない。
個々別々の取引事例と比較して価格を求める手法しか考えていない。
それ故に、上記のごとく平均で不動産価格を求めた鑑定評価に対して、「鑑定評価基準が認めていない手法であり、鑑定評価基準違反であり、不当鑑定だ」と批判、主張する業界の人々もいるかもしれない。
果たしてその主張が適切かどうか。
私には単眼的なそれら主張は、随分と時代遅れの考えと思われるが。
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