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924)ビル空室率は不動産業株価と逆比例の関係

 いつの日本経済新聞であったか掲載月日を忘れてしまったが、ずっと頭の片隅に残っていた記事がある。

 それは論文、コラムというようなものでなく、経済分析のベタ記事であった。
 日経記者・アナリストの株価分析の文であった。

 その内容は、ビル空室率と不動産業株価とは逆比例のごとくの関係があると云うものであった。その関係をグラフで示していた。

 本当であろうかなと思って記事を読んだが、その時、日経新聞の記者・アナリストは、あらゆる経済現象を株価で説明しょうとする職業の人達であるのでは無かろうかと思った。

 不動産に関連することであるから、いつの日か時間があったら、分析してみようと思っていた。

 やっと時間が出来た。
 空室率と不動産業株価の関係を分析する。

 株価は、業種別日経平均(500種)の不動産業の株価とする。月末取引日の価格とする。
 空室率は、オフィス仲介業者の株式会社三鬼商事発表の都心5区空室率とする。

 各月のデータは、毎月は手間がかかることから、各年1月、4月、7月、10月と四半期ごとのデータとする。

 こうして空室率の四半期ごとの推移グラフは、既にコラム記事を書いた。(鑑定コラム922『都心5区空室率9.4%と過去10年で最高』)

 この空室率のグラフに、不動産業株価を重ねたグラフが、下記である。
 左軸が不動産業株価で単位円である。
 右軸が空室率で単位%である。


不動産業株価


 グラフを見ればすぐ分かる。
 不動産業株価が低い時は、空室率が高く、不動産業株価が高い時は、空室率は低い。
 両者の間には、見事に逆相関の関係が見いだされる。

 この関係を見いだした日経の新聞記者・アナリストは、優れた人と私は思う。

 日経の記事についてはここまで。

 これ以後は、私の分析である。
 といっても、両者の関係を数式で分析するだけであるが。

 2003年以降の不動産業株価と都心5区の空室率の四半期ごとの数値は、下記である。


年月 不動産業株価円 都心5区空室率%
2003年1月 506.83 7.75
2003年4月 434.58 8.40
2003年7月 563.09 8.54
2003年10月 796.87 8.43
2004年1月 850.35 8.01
2004年4月 1008.67 7.49
2004年7月 983.72 7.42
2004年10月 912.49 6.68
2005年1月 1110.55 6.01
2005年4月 976.15 5.13
2005年7月 1092.67 4.76
2005年10月 1659.67 4.38
2006年1月 2271.36 3.99
2006年4月 2324.78 3.29
2006年7月 2137.49 3.00
2006年10月 2590.1 2.92
2007年1月 2712.19 2.87
2007年4月 2967.94 2.72
2007年7月 2627.14 2.80
2007年10月 2647.78 2.55
2008年1月 1916.33 2.55
2008年4月 1858.29 3.03
2008年7月 1541.62 3.75
2008年10月 1000.9 4.30
2009年1月 705.68 4.93
2009年4月 740.73 6.79
2009年7月 980.8 7.57
2009年10月 881.02 7.76
2010年1月 807.36 8.25
2010年4月 974.85 8.82
2010年7月 734.12 9.10
2010年10月 784.98 8.85
2011年1月 895.96 9.04
2011年4月 770.29 8.92
2011年7月 819.96 8.76
2011年10月 765.39 8.78
2012年1月 716.92 9.23
2012年4月 844.84 9.23


 空室率%を縦軸(Y)に、不動産業株価円を横軸(X)にとって、図示すると下図である。


空室率2


 上図を見ると、XYの間には、右肩下がりの曲線カーブが描かれるようである。
 その関係式は、

      Y=1494.9Xの(-0.794)乗

である。決定係数は、0.7981である。

 グラフは、下図である。


空室率3


 上記式より不動産業株価と空室率の数値を計算すると、下記の通りである。

               不動産業株価円       空室率%

           500              10.76 600 9.31 700 8.23 800 7.41 900 6.74
1000 6.20 1100 5.75 1200 5.37 1300 5.04 1400 4.75
1500 4.50 1600 4.27 1700 4.07 1800 3.89 1900 3.73
2000 3.58 2100 3.44 2200 3.32 2300 3.20 2400 3.10
2500 3.00 2600 2.90 2700 2.82 2800 2.74 2900 2.66
3000 2.59 3100 2.53 3200 2.46 3300 2.40 3400 2.35 3500 2.29
4000 2.06

 不動産業株価が500円になると、空室率は10%になるようだ。
 しかし2003年4月の不動産業株価は434.58円であったが、空室率は8.4%にとどまっている。
 それ故、指数式から得られた数値は、必ずしも100%信頼出来るものではない。
 決定係数0.7981の表示は、そうした誤解を避けるために記されている。

 不動産業株価が4,000円になる事は無いであろうから、空室率の限界は2.0%と云うことである。


  鑑定コラム922)「都心5区空室率9.4%と過去10年で最高」

  鑑定コラム5)「空室率4%」

  鑑定コラム193)「ある大手不動産会社の賃料と空室率」

  鑑定コラム247)「空室率が急激に下がっている」


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