○鑑定コラム
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出版社の編集長から電話が入った。
著書である『賃料<地代・家賃>評価の実際』(プログレス)の在庫が無くなりそうであり、4刷りしたいが、その同意を得る内容の電話だった。
4刷りの増刷に同意した。
前掲書は、
2005年12月 第1刷発行
2007年7月 第2刷
2009年7月 第3刷
して来た。
そして2012年5月(予定)に4刷である。
著書の販売価格は安くない。
3刷の段階で4200円+税である。
4刷の価格はいくらになるのか私には分からないが、3刷と同価格であったとしても、安い書籍価格では無い。
4刷すると云うことは、まだ著書購入者が見込まれると出版社は判断したことである。
著書購入者に感謝する。
4刷される著書はどういう考え方で書かれたものかについては、同書の初版「はしがき」に記されていることから、初版「はしがき」の大部を下記に転載する。
******
『今迄30年近く、裁判関係の鑑定評価を行って来た。その間300件余の地代・家賃・権利価格の鑑定書を書いてきた。
鑑定評価額を判決が採用した場合、判決の持つ法的強制力によって、鑑定評価額が争訟当事者の財産権に大きく影響を与えることを充分認識し、判決文を書く裁判官のための一級資料となるべく心懸けて鑑定書を書いてきた。
鑑定書の評価額の多くが、そのまま判決に採用され、或いは和解に使用されている。判決に採用されたと後でわかった時が、評価の苦労を忘れ、鑑定評価の仕事の喜びを最も感じる時である。
しかし、時として判決文に「田原鑑定は信用出来ない」と断定され、一言の元に切り捨てられて悔しい思いをしたこともある。
他方、代理人弁護士から鑑定書の内容についての尋問として、法廷宣誓後の証人喚問も多く受けてきた。鑑定書の細部にわたる不備な個所、考え方の疑問点を代理人弁護士に鋭く指摘され、説明を求められるが、自分の説明で質問側がなかなか納得せず問答が続くうちに、、血圧が次第にあがってくる。
加えて耳障りな「不当鑑定だ。鑑定基準違反だ」という言葉が耳に入ると、「何を勝手なことをいうのか」と頭の中で反発し、そのうちに頭がカッカしてくる。
挙げ句は、質問する代理人弁護士と論争的口喧嘩になってしまい、「ここは鑑定理論のいい争いの場ではない」と裁判官よりたしなめられることもあった。
一番長い鑑定証人尋問は2日間に及び、6時間の証人尋問であった。証人尋問は心身共に疲れるものであるが、6時間の尋問はさすがに疲れてしまった。
鑑定証人喚問はあまり受けたくないが、代理人弁護士の尋問によって、鑑定評価について教えられる点も多かった。
鑑定評価は不動産鑑定の専門家の意見であり、判断であると云われるけれども、その意見・判断は客観的なデータに基づいて分析され、合理的に説明されなければ一顧だにされないということを、証人尋問によってつくづく実感した。
「鑑定書の中に使われている数値・割合が何を根拠にして求められているのか分からない。鉛筆をなめなめ鑑定書を書いているのではないのか。」という批判もよく耳にした。
鑑定評価は実証科学である。
評価額に到る過程に使用される数値・割合は、出来るだけ実証されるものでなければならない。実証されない数値・割合を使って理論構築すべきではない。・・・・・・・・・・
平成17年11月
田原 拓治 』
(追記) 平成24年5月13日
4刷版は、平成24年5月1日付で発行されました。
鑑定コラム898)「著書『賃料<地代・家賃>評価の実際』4刷発行」
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