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116)書店の売買価格

 ファッション専門店のパルコは、書店も経営していた。「リブロ」という書店で、パルコの店舗11店の中に店を開いているほか、全国に57店の書店を持っている。

 そのリブロの株式の90%を、書籍取次店の大手取引店である日本出版販売に売却した。株式の10%は、パルコ店舗内に店舗存続させるために、パルコが保有するという。
 売却価格は7億2千万円という。(読売2003.7.10)

 リブロの売上高は237億円(2003年2月期)である。
 この90%の売上高は、
         237億円×0.9≒213億円
である。
 投下資本に対する売上高倍率は、
         213億円÷7.2億円≒29.6倍
である。
 売上高に対する購入価格の割合は、
         1/29.6=0.033
3.3%である。

 書店は商品である書籍が売れなければ、出版元に返却できるという特殊な店舗経営業種である。商品の仕入原価というものが全くない。見方を変えれば、全く楽な店舗経営業種であり、リスクの少ない、むしろリスクを取ろうとしない小売業である。

 ある店舗経営指導の解説書では、15坪程度の規模の書店を新規開業する場合の月間売上高は375万円、賃料は20万円を標準と設定している。(山崎謙『少ない資本で始める開店・開業ガイド』p128、西東社、2003年1月)

 これによれば、売上高に占める賃料の割合は、
         20万円÷375万円=0.053
5.3%である。

 上記賃料割合は、小規模店舗であることを考え、中規模の書店への修正率を0.8とすると、
         0.053×0.8=0.0424
である。
 一方、中小企業の経営指標のデータより分析した、書籍雑誌小売業の売上高に対する家賃割合は4.2%である。(『Evaluation』創刊号p48、田原拓治、清文社)

 これから、書店の賃料は売上高の4.2%程度と思われる。

 貸店舗の場合には、敷金もしくは保証金が授受される。地域や立地により差があろうが、月額支払賃料の10ヶ月とする。
         4.2%÷12ヶ月×10=3.5%
 年間売上高の3.5%が保証金ということになる。

 リブロの売上高に、この保証金の割合を当てはめれば、
         213億円×0.035=7.455億円
                   ≒7.5億円
である。

 リブロの企業売買は、土地建物の所有権の店舗の売買でなく、賃借している店舗の営業権譲渡と思われる。
 貸店舗による返品自由な書籍店経営であろうから、営業権譲渡価格は、保証金の金額程度の価格になると考えるのが妥当ではないだろうか。

 推定計算では、リブロの賃借店舗の保証金は7.5億円と求められた。
 リブロの売買価格は7.2億円である。売買価格はほぼ推定計算の保証金の額に近い。
 リブロの企業売買価格は、保証金の金額程度と言うことが出来ようか。

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