2016年4月24日の日本経済新聞は、私にとって、3つの興味を引く記事を載せていた。
一日に3件の興味ある記事が載る場合など、ほとんど無い。
1つは、『私の履歴書』で、三菱地所名誉顧問の福沢武氏の「バブル崩壊」の記事である。これについては、後述する。
2つは、『現代ことば考』で、言語学者の井上史雄氏が書いている「危機言語分析、森林減と一致」の記事である。
地球上には、言語は7000あると云われるが、その1/3が今世紀に消滅するであろうと云う。
その理由は、子供が話さなくなる為と云う。
そして、言語消滅の地域は、「森林減少の地図とみごとに一致した。」と述べる。
言語学者の井上史雄氏の記事を読んで、
「言語の消滅は他人ごとでは無い。」
と私は思った。
日本においても、一つの言語が消滅してしまった。
「アイヌ言語」である。
惜しいことである。
3つ目は、『チンパンジー博士の知の探検(49)』で、京都大学の松沢哲郎特別教授が書いている「地震恐れたチンパンジー」の記事である。
京都大学は、熊本県の宇土半島の先端部に、「チンパンジー58人(ヒト科なのでこう数えていることにしている)とボノボ6人」が暮らす野生動物研究センターを持っていると云う。
宇土半島は、熊本地震を引き起こした布田川断層が走る地域である。
そこに生活するチンパンジー達が、今回の熊本地震の時にどういう行動を取ったかについて述べている。
チンパンジーの研究は、人間の研究である。
記事の内容は、面白いことを知らしてくれる。
話を最初に戻す。
『私の履歴書』の筆者である福沢武氏は、三菱地所の社長をなされた人である。
いわずと知れた福沢諭吉のひ孫の人である。
氏の『私の履歴書』を読むと、大変苦労されて人生を歩まれていたということを知る。
「福沢諭吉のひ孫」という出自など、ありがた迷惑でなかったのかと、私には思われた。
2016年4月の記事は、「バブル崩壊」の記事である。
私は、不動産鑑定で、平成バブル崩壊を経験し、その悲惨な状況を見てきた。また、その後始末にも不動産価格の鑑定評価という立場で携わって来た。
福沢武氏は、平成バブル時に「サブリース事業」の責任者として業績を拡大されていたようだ。
1990年の春、政府の総量規制が始まり、平成バブルは崩壊する。
土地価格は右肩上がりで値上がりするという土地神話が崩壊する。
そして同じごとく、ビル賃料は値下がりしないという神話も崩壊する。
日本の不動産業界で受け継がれてきた定説は、定説でなくなる。
貸ビルの収入減益に戸惑い、収益予測を部下に調べさせたところ、部下の返答に絶句したと述べる。
部下の報告は、
「ウチの情報システムは値上げしか想定しません。値下げのときは計算できません。手作業になります。」
と云うものであったと述べる。
そして、「それまでの常識がバブル崩壊とともに崩れ去った。」と記す。
その後の不動産不況を陣頭指揮され、難局を乗り越えられたようである。
福沢武氏の『私の履歴書』が面白い。
4月24日以降に書かれているニューヨークのロックフェラーセンタービルの売却に伴い、世界の産業、経済、政治、金融を牛耳り、日本の首相など、その人の逆鱗に触れたら一発で吹っ飛ばす力を持つロックフェラー財閥の総帥のデービッド・ロックフェラー氏の登場の記事は、なお面白い。
鑑定コラム1618)「ロックフェラー財閥の総帥のデービッド・ロックフェラー氏が亡くなった」
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