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1481)600億円のホテル売買

 2016年4月26日と27日の両日で、鑑定コラム218)に500件程度のアクセスが殺到した。

 私はびっくりした。そんな事は滅多に無い。

 どうしてそんなに多くのアクセスが殺到するのか、さっぱり分からなかった。

 アクセス殺到する鑑定コラム218)のコラム名を見てみた。

 「330億円のホテル売買」という名のコラムであった。

 京浜急行電鉄(以下「京急」と呼ぶ)が、330億円で「ホテル グランパシフィック メリデイアン」を買収すると云う内容で、2005年6月5日に発表した記事である。11年前の記事である。

 売上高は120億円であるから、143億円程度が適性価格であろうという記事内容である。

 アクセス言語を知って、何故鑑定コラム218)にアクセスが殺到したかが分かった。

 2016年4月26日の日本経済新聞の朝刊が、一つのホテルの買収記事を載せた。 「ヒューリック ホテル買収 東京台場で600億円」という見出しの記事である。

 ヒューリックという旧富士銀行系の不動産会社が、お台場にある「グランパシフィック LE DAIBA」(以下「グラパシ台場」と呼ぶ) というホテルを、600億円超で京急から買収するという記事である。

 新聞記事と云うものは、人が犬を叩いても、犬が人にかぶりついても記事にはならない。人が犬にかぶりついた場合に記事になる。

 つまり特異な現象の場合にしか記事にしない。

 ホテルの売買は多くある。
 それら売買を新聞はいちいち報道しない。

 では、今回のグラパシ台場のホテル売買を、何故日経は報道したのか。

 それは、そのホテル売買が、一般的の範囲のものでなく、特異な現象と認知したために、新聞記事にしたのである。

 では、何が特異な現象なのか。

 特異現象の一つに売買価格が入る。

 グラパシ台場の売買価格が、甚だ高いという特異性があると思われるために、記事になったのでは無かろうかと私は判断する。

 日経の発表記事を見て、日経新聞の読者は、「グランパシフィック 売買」の用語で、グーグル或いはヤフーで検索すると、鑑定コラム218)が、トップで検索される。

 それをクリックして、私の鑑定コラム218)に、アクセスが殺到したと判断される。

 買収価格は600億円超と、日経は記すが、「超」は面倒であるから、600億円の表示として、以下考える。

 600億円のホテル売買価格は適正か、否か。以下で検討する。

 グラパシ台場の料金は、同ホテルのホームページによれば、一人当りの料金は、以下となっている。

       A   9,500円
              B    14,300円
              C    16,800円
              D    17,300円
              E    18,850円
              F    19,800円
              G    21,450円

 部屋の程度とかサービス内容によって料金が異なっているのであろう。

 一人当りの料金を、18,000円とする。

 ホテルは一室2人使用である。一室料金は、

      18,000円×2=36,000円

である。

 満室状態の場合の年間収入は、

            36,000円×884室×365日=11,615,760,000円

である。

 客室稼働率を90%とする。

      11,615,760,000円×0.9≒10,454,000,000円

 客室収入は、104.54億円である。

 宴会等の収入を客室収入の50%とする。

 総収入(売上高)は、

     104.54×1.5≒157億円

157億円である。

 ホテルの賃料は、売上高の13%が標準である。

          157億円×0.13=20.46億円

 ホテルの賃料は、20.46億円となる。

 賃料の経費率を28%とすると、賃料の純賃料は、

      20.46億円×(1-0.28)≒14.7億円

14.7億円である。

 買収価格は、600億円であるから、

                  14.7億円
               ─────  = 0.0245≒0.025                        
                  600億円

2.5%の還元利回りである。

 2.5%の還元利回りは、丸の内の丸ビルの還元利回りクラス(鑑定コラム1390)「丸ビルの還元利回り」)である。

 グラパシ台場は、丸の内の立地に相当する場所にあるのか。

 「否」であろう。

 ということは、グラパシ台場の600億円の買収価格は、甚だ高い価格ということになる。

 2.5%の還元利回りとは、600億円の投下資本を回収するのに40年かかるということである。

       1/0.025 = 40

 不動産とは云え、投下資本を回収するのに40年もかかる様な、悠長なビル経営をしていては、競争に負けてしまう。

 不動産の投下資本は、15年で回収しなければならない。

 15年で投下資本を回収し終え、それ以降の純収益の金額は、全額利益として手許に残すのが、不動産業の経営ではなかろうか。京急は、11年で取得物件を売却することによって、結果的に投下資本を回収し、多額の利益を獲得している。

 1室の客室単価が高ければ、売上高が増え、それに伴い賃料収入が増えるという反論があろうと思われる。

 本件の価格計算では、1室の宿泊料金は、平均38,000円と設定している。
 安くない料金である。

 日本のホテルで、トップの帝国ホテルの1室料金はいくらか知っているであろうか。

 平成27年3月期で、1室料金は、30,658円(鑑定コラム1363「帝国ホテルの1室料金(平成27年3月)」)である。

 本件グラパシ台場は、帝国ホテルの料金よりもはるかに高い38,000円で価格計算しているのである。

 600億円の売買価格は、甚だ高い金額である。

 では、妥当な価格はどの辺りなのか。

 還元利回りを4.5%とすると、

     14.7億円÷0.045≒327億円

327億円である。

 ホテルの価格は、売上あっての価格である。

 都心の高級一流ホテルの場合の投下資本に対する売上高倍率は0.5倍前後である。

 この算式は、

                    ホテル売上高
                  ──────────  = 0.5                     
          都心一流ホテル価格

である。

 この算式を使って、グラパシ台場の価格を求める。

 投下資本即ちホテル価格をX億円とする。

                      157億円
                  ──────────  = 0.5                     
             X

      X =157億円÷0.5=314億円

314億円である。

 上記2つの求められた価格から、320億円程度が、妥当な価格と云うことになろうか。

 京急は330億円という当時でも馬鹿高い価格で、グラパシ台場を購入した。

 それを10年余使用し、倍近くの600億円で売り抜ければ、大もうけということになる。

 上記の検討数値及び結論は、私の勝手な判断、推論によるものであり、実際の数値とは異っている場合があることを了承していただきたい。


  鑑定コラム218)
「330億円のホテル売買」

  鑑定コラム1390)「丸ビルの還元利回り」

  鑑定コラム18)「店舗売上高と家賃割合」

  鑑定コラム1363)「帝国ホテルの1室料金(平成27年3月)」

  鑑定コラム1513)「帝国ホテルの1室料金は34,357円(平成28年3月)」
 
  鑑定コラム1666)「鑑定コラム1213にアクセスが殺到」


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