部屋の程度とかサービス内容によって料金が異なっているのであろう。
一人当りの料金を、18,000円とする。
ホテルは一室2人使用である。一室料金は、
18,000円×2=36,000円
である。
満室状態の場合の年間収入は、
36,000円×884室×365日=11,615,760,000円
である。
客室稼働率を90%とする。
11,615,760,000円×0.9≒10,454,000,000円
客室収入は、104.54億円である。
宴会等の収入を客室収入の50%とする。
総収入(売上高)は、
104.54×1.5≒157億円
157億円である。
ホテルの賃料は、売上高の13%が標準である。
157億円×0.13=20.46億円
ホテルの賃料は、20.46億円となる。
賃料の経費率を28%とすると、賃料の純賃料は、
20.46億円×(1-0.28)≒14.7億円
14.7億円である。
買収価格は、600億円であるから、
14.7億円
───── = 0.0245≒0.025
600億円
2.5%の還元利回りである。
2.5%の還元利回りは、丸の内の丸ビルの還元利回りクラス(鑑定コラム1390)「丸ビルの還元利回り」)である。
グラパシ台場は、丸の内の立地に相当する場所にあるのか。
「否」であろう。
ということは、グラパシ台場の600億円の買収価格は、甚だ高い価格ということになる。
2.5%の還元利回りとは、600億円の投下資本を回収するのに40年かかるということである。
1/0.025 = 40
不動産とは云え、投下資本を回収するのに40年もかかる様な、悠長なビル経営をしていては、競争に負けてしまう。
不動産の投下資本は、15年で回収しなければならない。
15年で投下資本を回収し終え、それ以降の純収益の金額は、全額利益として手許に残すのが、不動産業の経営ではなかろうか。京急は、11年で取得物件を売却することによって、結果的に投下資本を回収し、多額の利益を獲得している。
1室の客室単価が高ければ、売上高が増え、それに伴い賃料収入が増えるという反論があろうと思われる。
本件の価格計算では、1室の宿泊料金は、平均38,000円と設定している。
安くない料金である。
日本のホテルで、トップの帝国ホテルの1室料金はいくらか知っているであろうか。
平成27年3月期で、1室料金は、30,658円(鑑定コラム1363「帝国ホテルの1室料金(平成27年3月)」)である。
本件グラパシ台場は、帝国ホテルの料金よりもはるかに高い38,000円で価格計算しているのである。
600億円の売買価格は、甚だ高い金額である。
では、妥当な価格はどの辺りなのか。
還元利回りを4.5%とすると、
14.7億円÷0.045≒327億円
327億円である。
ホテルの価格は、売上あっての価格である。
都心の高級一流ホテルの場合の投下資本に対する売上高倍率は0.5倍前後である。
この算式は、
ホテル売上高
────────── = 0.5
都心一流ホテル価格
である。
この算式を使って、グラパシ台場の価格を求める。
投下資本即ちホテル価格をX億円とする。
157億円
────────── = 0.5
X
X =157億円÷0.5=314億円
314億円である。
上記2つの求められた価格から、320億円程度が、妥当な価格と云うことになろうか。
京急は330億円という当時でも馬鹿高い価格で、グラパシ台場を購入した。
それを10年余使用し、倍近くの600億円で売り抜ければ、大もうけということになる。
上記の検討数値及び結論は、私の勝手な判断、推論によるものであり、実際の数値とは異っている場合があることを了承していただきたい。
鑑定コラム218)