改正鑑定評価基準では、積算法の必要諸経費としての減価償却費について、「償却前の純収益に対応する期待利回りを用いる場合には計上しない」(26年改正鑑定評価基準国交省版P33)という文言が付加されたが、これについて考え述べたい。
減価償却費を考えずに賃料の必要諸経費を求めることは、賃料は賃貸不動産の投下資本を、将来に向かって回収するものであり、その将来に向かって投下資本を回収すると云うことを無視することになる。それは賃料の本来の目的を否定することになることから間違っている。
このことについて、具体的数値で、間違いを説明する。
(モデル想定条件と減価償却費)
a, 土地 土地面積 150u 土地単価 2,000,000円/u 土地総額 300,000,000円
b, 建物 建物延べ面積 750u 賃貸面積 525u 建築後 10年 経済的耐用年数 40年 残存経済的耐用年数 30年 再調達原価 250,000円/u 再調達原価総額 187,500,000円 建物価格 140,625,000円
c, 収入 支払賃料 5,000円/u 賃料収入(月額) 2,625,000円 賃料収入(年額) 31,500,000円 共益費(月額) 750円/u 共益費(年額) 4,725,000円 保証金 支払賃料の10ヶ月 保証金運用利率 0.02 保証金運用益 525,000円 収入計 36,750,000円 空室率(5%) 0.95 総収入 36,750,000円×0.95=34,912,500円
d, 必要諸経費 減価償却費 140,625,000円/30= 4,687,500円 公租公課 支払賃料の0.1 31,500,000円×0.1= 3,150,000円 小規模修繕費 再調達原価の0.3% 187,500,000円×0.003= 562,500円 大規模修繕費 再調達原価の1.0% 187,500,000円×0.01= 1,875,000円 維持管理費 支払賃料の8% 31,500,000円×0.08= 2,520,000円 火災保険料 再調達原価の0.1% 187,500,000円×0.001= 187,500円 計 12,982,500円
経費率 12,982,500円÷34,912,500円=0.372
e, 純収益 34,912,500円−12,982,500円=21,930,000円
f, 還元利回り(期待利回り)
21,930,000円 ────────────────= 0.05 300,000,000円+ 140,625,000円
g, 積算賃料
(300,000,000円+ 140,625,000円)×0.05+12,982,500円 =35,013,750円
月額賃料 35,013,750円÷12=2,917,813円 u当り賃料 2,917,813円÷525u=5,558円