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165)企業買収ファンドという新しいビジネス

 民事再生法(平成11年12月22日、法律225号)という法律が出来て間もない頃、ある弁護士と大論争をした。

 その弁護士は企業の破産事件を多く手がけ、破産に詳しい弁護士であった。

 企業が経営に行き詰まった時、行き詰まった企業に資金を提供してくれる金融機関或いは企業があるかという点について、破産専門の弁護士と私の考えとは真っ向からぶっかった。

 破産に詳しい弁護士は、
 「倒産企業に金を出す銀行などどこも無い。
 民事再生法を適用しても、金を出す銀行など無いから、企業は破産するしかない。」
という。

 私は、
 「そうでは無い。民事再生法を申請すれば、債務カットされ、その企業の技術力等で存続価値があれば、その企業に対して資金提供する会社は必ずある。」
と主張した。

 それに対して、弁護士は、
 「資金提供されれば、銀行は債務の返済として、その金をとりあげてしまうから、企業再建の金にはならない」
と主張する。そして、
 「倒産企業は事業に失敗したのであるから、その事業に将来性は無い。
 その様な企業に銀行は、新たに金を出さないし、その企業が金を集めてきたら、必ずその金を取り上げてしまう。
 金を銀行に取り上げられてしまうから、経営を続ける事は出来なく、企業再生は出来ない。破産しか無い。」
と強く主張する。

 私は、
 「それは違う。それは今迄の日本の破産会社に対する古い考え方だ。
 これからは、経営に行き詰まった破産状態の企業にも、債務カットの方法がとられれば、必ず資金提供する企業が現れる。
 日本の企業にいなくても、外資が行う可能性がある。」
と反論した。

 しかし、その弁護士は、
 「外資など、なおさら事業に失敗した企業などには資金提供しない。」
と繰り返し主張する。

 弁護士にとって、自分の専門である破産処理の考えに対して、門外漢の者から、考えが間違っていると真っ向から否定されることは、弁護士のメンツにかけて引き下がれない話である。

 法律相談のごとく、自分の法律知識を、法律知識の無い人に話す状態とは全く異なる。
 自分の方が専門家で詳しいと思っているのに、そのプライドを傷つけられるごとく、古い考え方で間違っている、これからはそんな考え方は通用しないと言われては面白かろうハズが無い。

 結局、その破産を専門とする弁護士とは、意見の一致は当然ならず、論争は真反対のまま、平行線で終わった。

 それからほぼ4年、「企業買収ファンド拡大」という見出しで、日本経済新聞(2004年5月10日夕刊)は、日本企業による投資ファンドの活躍を伝える。

 その記事によれば、経営不振企業に投資する国内の買収ファンドの規模は、主な10社で、2004年度は4000億円という。
 2003年度は1400億円であったから、その金額の増加は著しい。

 企業ファンドの運営会社は、独立系、銀行系、証券系などあるが、フェニックス・キャピタル、MKSパートナーズ、アドバンテージパートナーズ等は、既に多くの買収の実績を残している。

 フェニックス・キャピタルについては、本ホームページの『鑑定コラム』106) 「グループ企業再建に忙殺される東急電鉄」 の記事の中で、東急電鉄の子会社の食品製造、加工会社のゴールドパックの購入者として、その名前が出てくる。

 4年前に、破産に詳しい弁護士と大論争をしたが、日本にも、破産企業でも技術力、製品商品、販売力等に魅力あるものを持っている企業に対しては、再建のための資金を提供する投資ファンドが、やはり出現してきた。

 大学を卒業して大会社に入り、係長、課長、次長、部長、取締役と約35年かけて出世の階段を昇るという従来型の方法もあるが、若くして企業ファンドで金を集め、買収した会社の経営権を握り、会社を立ち直らせて、次々と企業を買収して、経営者の道を歩んで行く方法もある。

 経営手腕を問われることから、全部の挑戦者が全て成功するとは限らないが、企業買収ファンドビジネスの会社が、アッという間に大企業になってしまう可能性が充分ある。

 コンピュータのソフト会社が、既存大会社に対抗出来る存在になったごとく、企業買収ファンドビジネスにも、その可能性が秘められているのではないかと私は思う。

 企業買収ファンドビジネスの中から、「実業界の寵児」と言われて、騒がれる人が出てくるのではなかろうか。

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