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1980) 東京地裁の競売市場修正率は0.8となる

 東京地方裁判所民事第21部判事の塚原聡氏が、『金融法務事情』2111(2019年4月10日号)の38頁に、「東京地裁民事執行センターにおける平成30年の事件概況等」の論文を発表されている。

 東京地裁民事21部は、不動産競売の専門部であり、論文の内容は、平成30年の不動産競売状況のまとめ報告である。

 不動産執行事件は2つに分かれる。

 1つは、不動産等担保権実行事件(事件符号(ケ))である。もう1つは、不動産等強制競売事件(事件符号(ヌ))である。

 両事件を併せた新受件数は、前掲論文によれば、下記である。

            平成21年   3,864件
            平成22年   2,887
            平成23年   2,870
            平成24年   2,692
            平成25年   2,282
            平成26年   1,800
            平成27年   1,575
            平成28年   1,488
            平成29年   1,346
            平成30年   1,476

 平成21年より不動産執行事件は減り続け、平成29年には1,346件となり、平成21年の35%(1,346÷3,864=0.348≒0.35)にまで減少した。

 平成30年は、件数の減少は止まり、平成29年よりも130件増加した。

 件数が増加したということは、企業倒産、個人倒産が増えだしたということである。

 競売による売却率については、下記のごとくと同論文は述べる。

            平成21年   87.82%
            平成22年   95.86
            平成23年   96.66
            平成24年   96.84
            平成25年   97.99
            平成26年   98.97
            平成27年   98.15
            平成28年   99.16
            平成29年   99.18
            平成30年   98.80
 平成22年以降は、ほぼ全件売却処理されていると云える。

 応募入札数については、平成25年以降の1件当りの入札数は、平均で13枚以上であると云い、平成30年は約12枚であると云う。

 1供給競売物件に対して、購入需要者が12人いると云うことは、自由市場である一般的不動産市場の姿と同じか、それ以上の購入需要者数である。

 買増率については、平成30年の買増率は、平均152%と云う。

 買増率とは、公表された競売査定価格に対する落札価格の倍率である。

 即ち競売評価人が評価した入札最低売却価格よりも、応札した落札価格の価格割合が、上記の平均152%と云うことは、平均1.52倍の価格で落札されたということである。

 これら実績を考量して平成29年3月1日より、 東京地裁は、競売市場修正率の見直しを行い、競売市場修正率を0.8にしたと云う。

 競売市場修正率とは、入札の最低価格を決めるに際して、競売市場という 特殊な不動産市場での不動産売却であり、その売却価格の修正率を云う。

 競売市場は、一般の不動産市場では有り得ない「強制売却」という要因が存在するために、その要因を考えて、特別に設けられている価格修正率である。

 従前は0.7であった。案件によっては0.6の競売市場修正率もあった。

 東京地裁は、平成29年3月1日からの0.8の競売市場修正率導入に際して、次の2つの条件を付けている。

 @ 物件の種類による区別は行わない。
 A 東京23区内の物件に限る。


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