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2684) 階段通路に接面する宅地価格修正率

1.はじめに

 先の鑑定コラム1683)「道路傾斜度と土地価格修正率」は、車輌の通行できる坂道に間口が接面する宅地の価格修正率であった。

 その車輌の通行出来る坂道に間口で接面する土地の側面から、階段通路で上に登るという階段通路で接している土地(宅地)の価格の修正率はいかほどかという疑問が湧く。

 この状態の土地価格の修正率については、坂が多く、斜面の宅地利用の多い長崎市の斜面の土地価格について、長崎県不動産鑑鑑定士協会が、事例分析した研究論文を発表している。下記に論文の概略を記す。

2.「斜面地の現状と階段道路の土地価格逓減率」の論文

 @ 研究論文執筆者

 平成23年(2011)年10月14日に、一般社団法人 九州・沖縄不動産鑑定士協会連合会が主宰する公開討論会『第7回 不動産鑑定フォーラム』が、熊本の「ホテル日航熊本」で開かれた。

 そのフォーラムで発表された研究論文を、九州・沖縄不動産鑑定士協会連合会がホームページで公表している。

 フォーラムで、社団法人長崎県不動産鑑定士協会の6人の不動産鑑定士の研究による、「斜面地の現状と階段道路の土地価格逓減率」の研究論文が発表された。

 発表者及び研究者は、下記の方々である。

     研究者・発表者   不動産鑑定士 小宮幸弘
     研究者       不動産鑑定士 児島雅彦
     研究者       不動産鑑定士 森永啓次
     研究者       不動産鑑定士 織田雅雄
     研究者       不動産鑑定士 渡辺浩一
     研究者       不動産鑑定士 井崎嘉幸

 A 研究論文内容の概略

 研究論文は、2章に分かれる。

  イ、第1章 「斜面地の現状と行政の取組」

 第1章は「斜面地の現状と行政の取組」で次のごとく述べる。

 「長崎は住宅建設の経済的に限界といわれる傾斜が15度以上のところまで家が建ち並んでいます。」と、長崎市の住宅状況を記す。

 それは、「人口の増加に伴って、平地が少ない長崎では市民の住まいは斜面地へ」行かざるを得なかった。

 車社会となり、「車が家に横付けできる場所」、「暮らしやすさ」を求めて、階段の上り下りの大変さを嫌い、市の平坦な中心地のマンションに移る人が多くなった。

 それに伴い、「人口については、長崎市全体で過去10年間に−4.8%減少していますが、中心斜面地については-16.4%」減少していると記す。

 斜面地住宅地への行政の対応については、傾斜角31度の斜行エレベーターの設置(1施設)、勾配24%〜30%の斜面移送器システム(3施設)の設置を紹介する。

  ロ、第2章 「階段道路沿の土地価格と車道からの距離の関係」

 第2章は、「階段道路沿の土地価格と車道からの距離の関係」で次のごとく論じる。

 「階段道路沿いの土地は、日常生活での上り下りが大変なことに加え、救急等の緊急の場合には車道まで搬送する必要があり、また駐車場の確保の観点からも、車道までの距離というものは土地価格形成上、重要な要素の一つと考えられます。」

と述べ、車道沿いの宅地価格と階段利用の宅地価格の関係を分析するには、両土地の距離という要因が関係すると判断し、その関係を階段宅地等の事例価格から分析している。

 具体的には、
              階段利用の宅地の事例価格
  Y= ─────────────────────   =価格割合%    
            階段利用しない車道に面する宅地の価格

  X= 車道からの階段利用の宅地までの距離m

として、XYの関係を多くの土地取引事例から分析したのである。

 XYの関係式として3つの関係式(近似式)を求めている。

 その一つに下記式がある。

      Y=89.239掛けるXの−0.2436乗
                 Rの2乗(決定係数)=0.2412

 べき乗の表示が、当ホームページの言語では出来ないので、上記の表現になってしまった。

 発表論文のアドレスは下記である。

https://kyukanren.net/wp-content/uploads/2015/04/H23.10.14-3.pdf

 (アドレスをドラッグコピーして、自分宛のメールにアドレスをコピー貼り付けして、自分宛にメールを送信して、自分宛に来たメールの中の青字等カラー文字のアドレスをクリックすれば、繋がります。)

3.階段通路に接面する宅地価格修正率

 決定係数が0.2412と、小さいが、階段通路の宅地価格は、その階段が始まる車道に接面する宅地価格に対して、
                Y=89.239掛けるXの−0.2436乗
の関係にある事が、長崎県不動産鑑定士協会の6人の不動産鑑定士の研究によって分かった。

 具体的に、上記算式から、車道に接面する宅地価格を100%とした場合、階段通路に面する宅地価格の割合は、具体的にどういう割合になるか計算すれば、下記である。距離は60mまでとする。

                Xm                    Y 価格割合%
                20                    43.0
                30                    38.9
                40                    36.3
                50                    34.4
                60                    32.9

 車道に面する宅地価格を100%とすれば、車道より階段通路20メートル上った宅地の価格は43.0%、50メートル上った宅地は34.4%の価格割合ということである。

 求められたXYの数値を見ると、距離20〜60メートルと土地価格割合の間には線形代数の関係が認められる。

 XYの関係式を求めれば、
      Y=46.98-0.247X
である。但し、X値は20〜60mの範囲である。

 上記算式から、階段通路の宅地価格は、階段通路距離1メートルにつき0.25%安くなるということが分かる。

 上記方程式のグラフは、下図である。



車道からの距離と階段通路宅地の価格修正率



  鑑定コラム2683)「道路傾斜度と土地価格修正率」


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