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2683) 道路傾斜度と土地価格修正率

1.はじめに

 宅地間口が平坦道路に面する土地価格と宅地間口が傾斜する道路(坂道)に面する場合では、坂道に面する宅地の価格単価は、平坦道路に接面する宅地の価格単価よりも安くなるのではなかろうか。

 事実、坂道に面する宅地単価が安い事例に遭遇する場合がある。

 では、どれ程安くなるであろうか。

 道路傾斜度と土地(宅地)価格修正率の関係について、分析する。

2.国税庁の「傾斜地の宅地造成費」

 @ 東京都・神奈川県・千葉県・山梨県の傾斜地の宅地造成費

 国税庁が、相続税評価のために「傾斜地の宅地造成費」を発表している。

 令和5年度の東京都・神奈川県・千葉県・山梨県の傾斜地の宅地造成費は下記である。

                  傾斜度                 宅地造成費
           3度超 5度以下      20,300円/u
                5度超 10度以下           24,700円/u
               10度超 15度以下           37,600円/u
               15度超 20度以下           52,700円/u
               20度超 25度以下           58,400円/u
               25度超 30度以下           64,300円/u

 A 傾斜度0度超1度以下の宅地造成費

 上記宅地造成費から傾斜度0度超1度以下の造成費を求める。

 上記傾斜度と宅地造成費一覧表より、傾斜度3度の宅地造成費を20,300円/uとする。傾斜度10度の宅地造成費を24,700円/uとする。

 傾斜度1度当りの宅地造成費は、3度超10度以下では、
                    24,700円−20,300円=4,400円
                     4,400円÷7度=628円≒630円/u
である。

 この宅地造成費を使用して、以下の傾斜度の宅造費を推定する。

        (2度超 3度以下)
                 20,300円−630円=19,670円/u

(1度超 2度以下) 19,670円−630円=19,040円/u
(0度超 1度以下) 19,040円−630円=18,410円/u

 B 推定傾斜度と宅地造成費

 上記をまとめると以下である。

                   傾斜度              宅地造成費
               0度超 1度以下         18,410円/u
               1度超 2度以下         19,040円/u
               2度超 3度以下         19,670円/u
               3度超 5度以下         20,300円/u
               5度超 10度以下        24,700円/u
               10度超 15度以下        37,600円/u
               15度超 20度以下        52,700円/u
               20度超 25度以下        58,400円/u
               25度超 30度以下        64,300円/u

3.道路傾斜度と土地価格修正率

 @ 造成費のかかる土地の価格は、その分安くなる

 造成費がかかる土地の価格は、その分安くなることは市場経済原則である。

 傾斜度0度超〜1度以下の宅地造成費を1として、1度超2度以下の宅地造成費の割合は、

                          19,040円
                       ─────  = 1.034                         
                          18,410円
1.034である。

 宅地造成費のかかる土地価格は、その費用分安くなると考えれば、安くなる割合は、
                       1
                     ───  = 0.967 ≒ 0.97                       
                     1.034
ということになる。

 同様にして考えて、その割合を一覧にすれば下記である。

傾斜度 宅造費金額 円/u 金額倍率 地価割合
0度超 1度以下 18410 1.000 1.00
1度超 2度以下 19040 1.034 0.97
2度超 3度以下 19670 1.068 0.94
3度超 5度以下 20300 1.103 0.91
5度超 10度以下 24700 1.342 0.75
10度超 15度以下 37600 2.042 0.49
15度超 20度以下 52700 2.863 0.35
20度超 25度以下 58400 3.172 0.32
25度超 30度以下 64300 3.493 0.29


 B 道路傾斜度と土地価格修正率

 「傾斜度5度超 10度以下」の土地の宅地造成費は、「傾斜度0超 1度以下」の土地宅地造成費の1.342倍の金額がかかる。

 造成費がかかった分だけ土地価格は安くなるのが市場経済原則であることから、土地価格は平坦土地に比して0.75の価格となる。

 このことは、傾斜度約10度の坂道に接する土地価格要因の修正率ということにもなる。

 即ち、上記計算一覧の地価割合が、道路傾斜度の土地価格修正率となる。

 まとめれば、下記である。

                道路傾斜度         土地価格修正率
               0度超 1度以下         1.0
               1度超 2度以下         0.97
               2度超 3度以下         0.94
               3度超 5度以下         0.91
               5度超 10度以下        0.75
               10度超 15度以下        0.49
               15度超 20度以下        0.35
               20度超 25度以下        0.32
               25度超 30度以下        0.29

 但し、上記土地価格修正率は、国税想定の良好な宅地造成程度の工事費を前提に求められた修正率である。

 全ての土地所有者が、国税想定の良好な宅地造成の工事を行うということでも無い。その様な場合、造成工事の品等程度も低いと判断される。

 造成工事の品等程度が低い場合は、どうするかと云うことになる。

 例えば、道路傾斜度が、5度超 10度以下で、造成工事の品等程度が低く、0.8程度の修正が必要であったとする。

 その場合の、土地価格修正率は、下記である。
                 (1−0.75)× 0.8=0.2
−0.2の修正を妥当とする。
                            1−0.2=0.8
 傾斜度約10度の坂道に接面する土地価格修正率は、0.8となる。

4.終わりに
 
 上記にて、坂道に接面間口を持つ土地(宅地)の価格の修正率について分析した。

 国税の傾斜地の宅地造成工事費は、各県毎にネット発表されている。

 各県の発表宅地造成工事費から、上記のごとく分析すれば、それぞれの県内の傾斜道路に接面する土地価格修正率が求められる。

 但し、上記分析修正率は、私が考え出した一つの分析方法であり、違った分析方法もあろうと思われる。


  鑑定コラム2684)
「階段通路に接面する宅地価格修正率」


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