○鑑定コラム
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不動産の価格形成要因とは、不動産鑑定評価上では、不動産の効用、相対的稀少性、有効需要の3つの要因に影響を与える要因を云う。
そして大別して3つの価格形成要因に分けられる。即ち、一般的要因、地域要因、個別的要因の3つである。
このうち一般的要因は、中分類として、更に次の4つの要因に分けられる。
自然的要因、社会的要因、経済的要因、行政的要因の4つである。
経済的要因以外の要因の説明は省くとして、一般的要因の中の経済的要因を形成するものとして、鑑定評価基準は8つの価格形成要因を例示する。
その8つを列記すると、下記の通りである。
1.貯蓄、消費、投資及び国際収支の状態
2.財政及び金融の状態
3.物価、賃金、雇用及び企業活動の状態
4.税負担の状態
5.企業会計制度の状態
6.技術革新及び産業構造の状態
7.交通体系の状態
8.国際化の状態
8つの要因は全て「**の状態」と「状態」で終わる。
「状態」の用語を附けて居ることは、それなりの理由があろう。それに付いては今回は言及しない。
8つの例示する経済的要因を見ていると、もっとも重要なものが抜けているのでは無いのかと私には思われる。
不動産は経済活動の基盤となるものであり、経済活動には欠かせないものである。日本経済にも不動産の存在は大きなウエイトを占めている。
その日本経済の活動の状況を、数値で具体的に示すものは何か。
それはGDP(国内総生産)、GNP(国民総生産)の数値では無かろうか。
1993年までは、GNPの数値が日本経済の経済活動の数値として発表されていたが、1993年以降は、GDPの数値に変更された。
いずれの数値にしろ、それは日本経済の活動の規模を表す数値である。
不動産の価格は、GDP(国内総生産)、GNP(国民総生産)とは無関係に存在しているのであろうか。
私は、GDP・GNP は不動産価格形成要因には大きな影響をもつものであり、無視するべきものでは無いと思う。
昭和58年頃まで、GNPの数値の推移と財団法人日本不動産研究所の市街地価格指数の数値の推移と対比し、右肩上がりの直線式の相関関係があると論じられてきた。
そして、地価公示価格が発表されると、企業の社長に今後の地価の予測を聞くと、「GNPの伸び程度の上昇」というコメントが寄せられていた。
そしてバブルがはじけて地価が大幅に下落すると、
「GNPの変動と大きくかけ離れており、地価は下がりすぎである。」
という発言が表明されてきた。
これら論評を考えると、土地価格形成にはGDP(国内総生産)、GNP(国民総生産)が大きく影響していること、影響どころか土地価格を、経済全体を考える基本に据えている姿勢が見える。
こうした姿勢を、「相変わらずの土地本位制」と批判する人はいるであろうが、だからといって、土地価格は、GDP(国内総生産)、GNP(国民総生産)とは無関係であると云うことは乱暴な主張であろう。
不動産鑑定評価基準は何度か改正されてきている。
しかし、一度たりとも不動産の価格形成要因の経済的要因として、GDP(国内総生産)、GNP(国民総生産)が明示されていない。
このことは、私には理解しがたいことである。
GDP(国内総生産)、GNP(国民総生産)を、不動産の価格形成要因として明示すべきと私は思う。
下記に平成6年度以降の名目国内総生産を記す。(内閣府2006年6月12日現在発表数値による)
平成6年度 486.9兆円
平成7年度 495.7兆円
平成8年度 506.4兆円
平成9年度 510.4兆円
平成10年度 501.3兆円
平成11年度 496.6兆円
平成12年度 502.7兆円
平成13年度 492.3兆円
平成14年度 488.7兆円
平成15年度 493.5兆円
平成16年度 496.1兆円
平成17年度(18年3月) 508.5兆円(速報値)
鑑定コラム2016)「 国内総生産の最高は、2019年9月直前1年間の554兆円か」
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