○鑑定コラム
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日本の国の借金834兆円に続き、日本の国際収支、外貨準備高についての記事は、あまり堅苦しい話が続くのもどうかと思い、少し時間を空けて述べようかと思った。
だが、2007年7月9日の日本経済新聞が、「YEN漂流」の特集連載記事の3で、「異形の介入大国 売るに売れない外貨の山」という記事を載せていた。
日経の記者の一人も私と同じことを考えていたのかということを知り、では私もという気になり、国際収支、外貨準備高について述べることにした。
それが不動産に関係あるのかと思われるかもしれないが、これは大いに不動産価格と関係があり、これらこそが、「不動産学」の基礎を形成するものである。
大げさに言えば、地価公示価格の評価とか取引事例比較法とかDCF法などは、「不動産学」の中のミクロの枝葉末節の部分にしか過ぎない。(かなり言い過ぎか。)
国際収支とは何かと言うと、1年間の国際取引の収入と支出の勘定取引を言う。
大きく分けて次の2つに分けられる。
1 経常収支
2 資本収支
経常収支は、自動車・電気機器等の物の輸出入を集計した貿易収支、日本企業が海外で投資した収益と外国企業が日本で得た収益の差である所得収支、海外旅行・特許の収支であるサービス収支、国際援助・資金拠出の経常移転収支の4つを言う。
資本収支は、海外で日本企業が工場を建設するとかの収支である。
良い国際収支とは、
経常収支=資本収支
であることである。
即ち、貿易で稼いだお金(黒字)で、海外に工場を建て(赤字)て、経常収支と貿易収支とのバランスをとることである。
黒字をためすぎると、日本バッシングが行われる。
では、現在の日本の国際収支はどうなっているのだと言うことになる。
日本銀行による2006年の速報値は、次の通りである。
経常収支 198,390億円
資本収支 △122,958億円
差引 75,432億円
7.5兆円の黒字であるが、このうち「誤差脱漏」という、私にはさっぱり分からない操作項目の金額として、△38,236億円があり、
75,432億円−38,236億円=37,196億円
3.7兆円が、2006年の日本の国際収支の黒字である。即ち2006年の1年間の外貨準備高である。
黒字が増加すると、それは国際通貨の交換レートに必ず影響を与える。
日本の黒字が増え続ければ、日本円が強いと言うことになり、対ドルに対して円の切り上げ現象が生ずる。
1ドルに対する日本円の交換レートは、1985年のプラザ合意以前は、
1ドル=240円
であったが、プラザ合意以後、自由変動相場制になった。
為替レートが自由変動相場制になると、急激な為替変動は日本企業の倒産を引き起こし、損失を大きくしかねないことが充分予測された。そのため、行き過ぎた為替変動の時には、日本政府はドルを購入し、為替変動の振れを小さくすることに努めた。
これが、日本政府による「為替介入」と呼ばれる行為である。
ドル買に必要な資金である日本円は、政府短期証券を発行して調達する。
ここで、国際収支で黒字になった円のいくばくかが間接的に吸い上げられる。
一方、購入したドルは、アメリカ国債を購入して運用する。
それは、アメリカ国債は日本より金利が高いからである。
この様にして、日本がため込んだ外貨準備高は、財務省の発表によれば、平成19年(2007年)5月末で、911,137百万ドル、即ち9111億ドルになった。
プラザ合意の1ドル240円から、一時的には1ドル70円台になった時もあったが、120円台まで下がった。つまり円高になった。
その間、日本政府は部分的にはドルを売却したであろうが、圧倒的にドルを買う方に回った。そしてたまり溜まって、9111億ドルの外貨準備高になったのである。
1ドル=122円として換算すると、
122円×9111億ドル=111兆1542億円
の外貨準備高である。
この中のアメリカ国債の利子収入が、平成19年度の予算の歳入部門に勘定されている。
かっての一時期には、多くの外貨準備高があるから、国債による借金の予算編成は大丈夫であるという、赤字国債発行容認論が罷り通っていた。
今でもその論理を主張する人はいるかもしれない。
日本政府のドル購入の為に発行する政府短期証券の金利は安い。
安い金利で円を取得して、その円でドルを買い、そのドルで金利の高いアメリカ国債を購入する行為は、最近判明した外国投資会社が行って非難を浴びている手口である「円キャリィ」そのものでは無いのか。
そのことはともかくとして、財務省はため込んだ111兆円の外貨を一体どうするつもりであろうか。
最近は日本以上に外貨をため込みすぎと批判されている中国政府が、所有するアメリカ国債を売ったという噂で、上海株式が暴落し、上海ショックとして、それは全世界の株式暴落を招いた。
日本政府が大量にアメリカ国債を売ったと分かれば、アメリカニューヨークの株式市場の大暴落の引き金になりかねない。それは、すぐ東京株式市場の大暴落を引き起こし、日本経済に大きく響いて来る。
そして土地価格も大暴落する。
このことを考えると、財務省はため込んだアメリカ国債を売るに売れない。
とすると、このままじっと抱え込んでおくのであろうか。
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