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541)伊勢丹吉祥寺店の家賃割合は6.3%

 武蔵野市は、東京の西の郊外にある高級住宅地である。

 駅は、JR中央線の吉祥寺駅と、京王井の頭線のターミナル駅である吉祥寺駅を持つ。両駅は隣接している。

 その吉祥寺駅を中心とする商業地は、大きな顧客を持つ商業地であり、商圏の売上高はおよそ2000億円と云われている。

 吉祥寺商業地の核店舗は、伊勢丹吉祥寺店と東急百貨店吉祥寺店であるが、その一方の雄である伊勢丹吉祥寺店が、来年2010年3月を以て閉店すると、三越伊勢丹ホールディングスがホームページにプレスリリースした。(2009年5月12日)

 閉店の理由として、同ホームページのプレスリリースによれば、以下の点を挙げる。

 @ 当該エリア内に、伊勢丹吉祥寺店(以下「同店」と呼ぶ)を凌ぐ大型競合他店が進出してきた。
 A 新宿・渋谷のエリア間との競争が激しくなった。
 B 同店の売上高規模では、三越伊勢丹グループの利益の貢献にならない。
 C 経費削減に取り組んで来たが、収益性確保には難しい状況である。
 D 昨年来の消費全体の大幅な冷え込みで、同店の投資回収の見込みが立たなくなった。

 閉店理由として上記の要因を列記するが、2009年3月期の同店の決算財務数値が17億円の赤字となったことが、大きな閉店理由では無かろうかと私は推測する。もし黒字決算が続いているのであれば、閉店には踏み切らないであろう。

 プレスリリースで、伊勢丹吉祥寺店の売上高、店舗面積が発表されて居る。
 2009年3月期の同店舗の売上高、店舗面積は、下記の通りである。

    売上高   174.32億円
        店舗面積  20,758平方メートル

 このデータより、坪当りの年間売上高は、
      174.32億円÷20,758×3.30578≒2,776,000円
278万円である。

 月間坪当り売上高は、
    278万円÷12≒23万円
23万円である。

 日本経済新聞の2009年5月13日の紙面も、伊勢丹吉祥寺店の閉店の記事を載せているが、その記事の中で大変重要な事が記載されている。

 同店舗は、賃貸借の店舗であり、貸主は武蔵野市開発公社であり、年間賃料は約11億円と記す。

 興味の無い人は、読み過ごす記事内容・数値であるが、私にとっては非常に重要な記事内容である。

 即ち、伊勢丹吉祥寺店の建物賃料約11億円という数値が、私にとって大変重要な情報と云うことである。

 月額家賃は、
    11億円÷12=9,167万円
である。

 u当り賃料は、
    9,167万円÷20,758=4,416円
u当り4,416円である。

 坪当り賃料に換算すれば、
    4,416円×3.30578≒14,600円
である。
 
 家賃が分かることによって、店舗売上高に対する家賃割合が分かる。

 伊勢丹吉祥寺店の売上高に占める家賃の割合、即ち家賃割合(賃料割合)は、

    11億円÷174.32億円=0.063

6.3%である。

 百貨店の家賃割合が、6.3%というデータが得られたのである。

 百貨店の売上高に対する家賃割合がいか程であるのかは、まず分からない。

 売上高すら発表されなく、まして家賃がいかほどなど聞きに行っても教えてもらえない。
 それ程入手が困難なデータが、日経記事の中に書かれているのである。
 日経の記者はよくぞ家賃まで取材した。さすが日経の記者だ。取材して記事にしてくれたことに私は感謝する。

 私は、鑑定コラム273)「百貨店の家賃割合は10.6%か」の記事の中で、百貨店の家賃を売上高の8.7%〜12.6%と求め、平均10.6%と分析した。

 この家賃割合は、必要諸経費より推定したもので、その家賃割合で賃貸借契約されていると言うものでは無い。もし賃貸借すれば、それくらいの家賃割合であろうと推定しているのである。

 そもそも、データに採用した三越・伊勢丹・高島屋等の百貨店の店舗全てが賃貸借されて居るものでは無く、自用の所有建物が多いのである。自用の所有建物で家賃を推定することは、理論的には可能であるが、賃貸事例ではないことから説得性の面ではやや劣る。

 今回、東京の西の郊外の中小都市の百貨店とはいえ、大百貨店の一つである伊勢丹の吉祥寺店の家賃割合が分かったことは、百貨店の家賃の鑑定評価に大いに参考になるのでは無かろうかと私は思う。


 鑑定コラム273)「百貨店の家賃割合は10.6%か」
 鑑定コラム274)「新宿の百貨店の賃料」

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