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559)南紀白浜町の土地価格

 2009年6月の下旬に、和歌山県南紀の白浜町に不動産鑑定で行って来た。
 折角白浜町まで行って来たのであることから、白浜町の土地価格水準はどの位であるのかについて少し記す。

 後日のいつの日にか読み返せば、何かの参考になるのではなかろうかと思って。

 白浜町について、何にも知らない東京の不動産鑑定士がちょつと来て、偉そうに白浜町の土地価格など論ずるとは何事かと、和歌山県の不動産鑑定士の方に怒られそうであるが、そこは少し我慢して、たまには外部から来た人の考え方にも耳を傾ける度量も見せて、怒らないで頂きたい。

 この5年間白浜町に訪れる観光客の数は殆ど変わらなく横ばいであるが、年間約300万人の観光客が訪れる白浜町の中心は、しらら浜沿である。
 鉄道駅は、JR紀勢本線の「白浜」駅があるが、駅はしらら浜より内陸におよそ4km程度中に入っている。

 東京の郊外の住宅地の価格は、駅に近い程高くなっているが、その価格形成の経済経験則は、白浜町の土地価格には当てはまらないようである。

 土地価格の公的発表の価格では、国土交通省の地価公示価格がある。
 白浜町の白浜駅利用の住宅地として、2画地の土地価格が発表されている。

 平成21年(2009年)1月1日時点の価格は、下記である。

 白浜1 白浜町1088-10       白浜駅4.9km  u当り58,000円
 白浜2 白浜町堅田字坂巻2760-44   白浜駅1.8km  u当り39,600円

 地価公示価格白浜1、2の平均価格を、過去5年調べてみると、下記の通りである。

        平成17年1月1日   u当り 59,750円
        平成18年1月1日   u当り 56,450円
        平成19年1月1日   u当り 53,650円
        平成20年1月1日   u当り 51,200円
        平成21年1月1日   u当り 48,800円

 土地価格はかなり下がっている。傾向では、まだまだ下がり傾向のようである。

 地価公示価格では実際の価格が分からないから、現実の取引価格をという要望があろうかと思われる。

 それは地元不動産業者に聞けば分かる。
 私も地元不動産業者のお店に入り、取引事例の幾つかを教えてもらった。

 それは、個人情報であり、公にする訳には行かない。

 土地価格事例を捜していたら、白浜町、白浜町土地開発公社が、住宅地を分譲していることが分かった。その価格データは、町のホームページで一般に公表されている。

 それを記す。

 白浜町が売り出しているのは、「江津良谷住宅地」である。
 全16画地のうち6画地が分譲中である。
 その中の一画地を例として記す。

 画地番号B-Eは、面積146.46uで、価格総額は6,836,200円(u当り47,000円)である。

 一方、白浜町土地開発公社は、3つの中規模住宅地を分譲している。
 その中の一つの「きよら住宅地」は、全64画地のうち24画地が分譲中である。
 つまり40画地売れたが、24画地は売れ残り、分譲中と云うことである。

 この分譲地の価格は、町役場分譲地の「江津良谷住宅地」の価格より高い。
 それは、「きよら住宅地」の方が、「江津良谷住宅地」よりか地域要因が優れていると云うためであろう。

 しかし24画地が現在売れ残っていることになると、 白浜町土地開発公社も財政的に大変であろう。早く売り切ってしまいたいのではなかろうか。

 「きよら住宅地」の南側道路に面する画地番号(4-5)の土地は、面積が162.94uで、価格総額は10,297,810円(u当り63,200円)である。

 その土地の背中合わせで、北側道路に面する画地番号(4-14)の土地は、面積が167.46uで、価格総額は9,361,010円(u当り55,900円)である。

 接面道路が、南側道路と北側道路で土地価格の単価は異なっている。
 南側道路に面する土地の方が単価は高い。

 南側道路に接面する画地の単価を評点100とすると、北側道路に面する画地の単価評点は、

        55,900円÷63,200円≒0.88
                0.88×100 = 88
88である。

 北側道路の画地の価格単価は、南側道路の画地の価格単価より、▲12%ダウンと云うことである。

 地価公示価格と町役場、町土地開発公社の分譲中の住宅地の価格より、白浜町の土地価格のおおよその価格水準は把握出来るであろう。

 この住宅地の価格水準は、地積160u程度の土地で、住宅環境の良い分譲住宅地での話である。
 そうした土地でも、白浜町土地開発公社の「きよら住宅地」の例で見るごとく、40%近く(24画地÷64画地=0.375≒0.4)が、未だ売れずに残っている。

 それ故、企業の保養所跡地のごとく大規模の土地の場合、購入需要は殆ど無く、土地価格の値崩れは激しい。

 和歌山地方裁判所田辺支部管轄の不動産競売の落札案件として、次のものが公表されている。

     所在  和歌山県西牟婁郡白浜町内ノ川字津越(地番省略)
          土地  宅地  106.46u
          建物  木造セメント瓦葺2階建 延べ床面積  113.94u
                  平成3年1月建築
          最寄駅距離  JR紀勢本線  白浜駅東方約2.3km(直線)
          落札金額   372万円

 このデータより土地価格を推定してみる。
 これは私が勝手に推定するものであり、この算出方法が一般的に行われている方法と言うものでは無いということを、予め断っておく。

 裁判所の不動産競売は、裁判所による債権の法的強制換価の執行方法であり、早く、かつ強制的に、債権回収しなければならないという宿命を持っている。

 このため、通常の一般の不動産売買において成立する価格を正常価格とすれば、その価格よりもかなり安い価格で落札される傾向が強い。

 正常価格に対して、0.5〜0.7程度の落札価格である。

 本件の場合、割合の中央付近の0.6とする。

      3,720,000円÷0.6 = 6,200,000円

 これが正常価格と推定される。

 この金額より建物価格を控除すれば、土地価格が求められる。

 国土交通省が発表している『建設統計月報』2009年4月号によれば、2008年1月〜12月の1年間の和歌山県の木造建物の建設データは、次の通りである。

             棟数        3,471棟
             延べ床面積          451,577u
             工事費予定額        6,806,910万円

 このデータより、

      6,806,910万円÷ 451,577u = 15.07万円 ≒ 15.1万円

u当り151,000円の建築工事費である。

 設計監理費を1.05とする。
 中古要因の修正率を0.8とする。

 当該建物は、平成3年の建築である。平成21年までに18年が経過している。
 全経済的耐用年数を25年とすると、残存経済的耐用年数は7年である。

      15.1万円×1.05×0.8×(7/25) = 3.551万円 ≒ 3.6万円

 建物価格は、u当り3.6万円である。
 建物価格の総額は、

      3.6万円×113.94u ≒ 410万円

である。

 土地建物の総額は620万円であるから、土地価格は、

      620万円−410万円 = 210万円

である。

 土地のu当り価格は、

      2,100,000円÷106.46u ≒ 19,700円

19,700円と求められる。

 地価公示価格、白浜町役場売出し住宅地、白浜町土地開発公社売出し住宅地、そして裁判所の競売物件の土地価格と幾つかのデータで、白浜町の住宅地の土地価格を検討してみた。

 地元不動産業者は、土地価格・リゾートマンションの価格を下げても、現在白浜町の土地、リゾートマンションを買う人は殆どいないと嘆く。

 その口調は、現在の経済状況では仕方がないと、あきらめ口調であった。


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 鑑定コラム555)「和歌山にて」

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