○鑑定コラム



フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ

120)鑑定評価理論は存在するか

 明海大学の前川俊一教授が、『Evaluation』10号(プログレス)の巻頭言で、表題の刺激的な課題で雑誌の最初の頁を飾る。

 その内容を引用紹介すると、
 「不動産鑑定評価基準は理論を示すものではない。鑑定の文献も不動産鑑定評価基準の枠組みを大きく超えるものはない」と喝破する。

 そして不動産鑑定理論を構築するのは、不動産鑑定士ではなく「鑑定評価に関する研究者及び既存の経済理論の拡張的な発展を目指す経済学者だろう」と述べる。

 鑑定評価理論は、それら学者の研究成果を「普遍な理論として再構築して初めて完成する」と説く。

 新鑑定評価基準は2003年1月1日より適用されている。この新基準に従って鑑定評価は現在行われている。

 しかし、賃料に関する部分からみても、今回の鑑定評価基準の改正が優れて適正なものとは思われない。改正された新基準が優れて適正なものでないということは、その新基準のよって立つ鑑定評価理論が優れて適正であるとはいえないことになる。

 新基準は収益還元法を重視することに改正された。それは良いことである。

 しかし、収益還元法とは価格を求める分析手法である。
 価格を生みだすものは何かといえば、それは収益である。
 それは不動産鑑定にあっては不動産に帰属する収益、即ち不動産利益である。
 それは賃料というもので具現化される。

 収益(賃料)が先にあって価格が生ずるのであり、価格が先にあって価格が形成されるのではない。収益(賃料)先にありきである。

 その収益の分析に、改訂新基準はさっぱり目が向けられていない。
 収益(賃料)をもっと重要視すべきである。

 賃料理論の向上をはかることが、鑑定評価基準の改正であっては先であろう。
 今回の鑑定評価基準の改正は、本末転倒である。

 新鑑定基準が改正されたばかりで、すぐ改正に着手せよというと、「何を生意気な、偉そうなことを云う。新基準改正に営々と努力した人々の功績を忘れるな。勝手に気安く云うな」といって、怒られるかもしれない。
 しかし、賃料(不動産利益)に関するしっかりした鑑定評価理論に裏づけられた賃料(不動産利益)の鑑定評価基準の改正に、即刻着手するべきである。
 そうすることによって、今回の収益還元法重視の新鑑定評価基準が生きてくる。

フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ