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1215)訴訟額範囲を飛び超えた裁判所鑑定人の評価額

 裁判の権利価格の争いで、当事者の原告が1000万円、被告が4000万円で争っている。
 
 両者の争いの巾がありすぎ、裁判所もどちらの言い分が正当なのか分からない為に、裁判所選定の不動産鑑定士に依頼し、適正な価格の鑑定をしてもらうことにした。
 
 裁判所の裁判鑑定である。

 選定された裁判所の鑑定人不動産鑑定士は、適正な権利価格は、5000万円という鑑定書を提出した。

 訴訟で争っている金額の範囲は、1000万円〜4000万円の間である。それ以外の金額では争っていない。

 裁判所は、訴訟当事者が、紛争しているのは1000万円〜4000万円の範囲での紛争解決であり、その範囲外での紛争解決を考えていない。
 そうした状況であるにもかかわらず、第三者の専門家が、訴訟額範囲を飛び超えた金額が適正とする鑑定書が提出されてきた。

 裁判官は、1000万円〜4000万円の範囲での和解を考えていたが、5000万円の裁判鑑定では、和解が難しくなってしまった。

 判決文は書きたくない。
 どの様にして争いを決着させたらよいのか。
 何のための不動産鑑定か全く分からなくなってしまった。

 当事者が権利価格、賃料額で争っている場合に、裁判所は事件の解決の手段として、外部の不動産鑑定士に不動産鑑定評価を頼む場合が多い。

 その場合、求められる不動産鑑定評価額は、余程の理由が無い限り、当事者が争っている額の範囲内の鑑定金額が提示される。

 当事者の争っている金額の範囲を飛び越えて、鑑定評価することは、余程のことが無い限り許されない行為である。

 一応「余程の理由・余程のこと」という例外文言を記したが、これが発動される事はまず無いと私は思っている。

 範囲を飛び越えた金額が鑑定提示されては、紛争解決どころか、紛争解決を益々困難にすることになる。

 訴訟額範囲内で争訟を解決するのが裁判の目的であり、紛争解決を目的として行う裁判鑑定は、その目的に当然従うべきものであろう。

 それを無視するごとく訴訟額範囲外の鑑定評価額の提示を行う不動産鑑定は、裁判所選任の裁判鑑定としては失当であろう。

 適正な価格であれば、訴訟額範囲外の金額でもよいという考えがあるであろうが、それは裁判鑑定では余程のことでないと使用してはいけない考え方である。

 訴訟額範囲を飛び超えた金額が鑑定評価額として求められた場合、本当にそれが適正な金額なのか、再々度見直して、考えの間違い、数値の取り方の誤り等が無いか厳密に振り返って他の側面から検討して見る必要がある。

 まず必ずどこかに間違いがある。

 鑑定書が提出された後、わんさかと間違いが他人から指摘されることが、何よりの証拠である。

 建物価格1つとっても、その再調達原価、減価修正の方法が適正か否かで裁判鑑定は躓く。

 権利価格1000万円〜4000万円で争っていた事件に提出された当該裁判鑑定は、適正な鑑定とはほど遠い、間違いの多い不適切な鑑定評価額であった。

 鑑定書の間違い部分を訂正していけば、1000万円〜4000万円の間の金額に落ち着く内容の鑑定書であった。

 当事者の間違いの指摘に対して、鑑定人不動産鑑定士は、自分の鑑定書は適正であると主張し、間違いを認めようとしない。鑑定額の修正に応じない。

 間違いは間違いである。
 プライドにこだわっているのか知らないが、間違いにプライドなど関係無いであろう。

 鑑定人の未熟な判断、誤った判断のために、裁判関係者は多大な迷惑をうけるのである。

 鑑定人として裁判所の鑑定を行う不動産鑑定士は、もう少し考えてくれないだろうか。


  鑑定コラム12)
「ある邂逅」



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