○鑑定コラム



フレーム表示されていない場合はこちらへ
トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ

125)161の工場閉鎖

 2002年度の上場企業の工場閉鎖は161工場になったと、日本経済新聞社が独自調査で発表した。(2003年5月11日)

 2001年度は146工場であった。
 閉鎖工場の増加は10.3%である。
 日本産業の将来に不安を持たざるを得ない現象である。

 工場閉鎖の目的は、企業利益が得られなくなったことが当然の原因であろう。
 工場再編とか世界最適生産とかいう言葉で、企業経営者は工場閉鎖の理由を語るが、本当の原因は、企業採算が合わなくなったために工場を閉鎖することであろう。
 工場企業の利益が充分得られていれば、何も工場閉鎖などする必要性はない。

 日本の生産工場を閉鎖し、中国や、東南アジア等への工場移転は、既に前より「土地の輸出」という言葉で語られている。今後もますます増えることになれば、憂慮すべきことである。

 他方、一旦進出した中国や東南アジア等の工場を閉鎖して、日本に逆もどりし、工場を新設している企業も多くはないがあると聞く。

 海外に進出した企業の工場長の話を聞くと、全部ではないが、一部では従業員の道徳観念が薄く、治安が悪く、工場の工具、部品、製品を盗みだす従業員が多いため、仕事終了時の工具、部品、製品の点検は必ず行わなければならないと語る。

 また工場を警備する為に警備員を雇っているが、その警備員を警備する為の警備員を雇わねばならなかったと笑えない話を話す。

 製品のメッキでは硬水の為、メッキが出来ず、一度、軟水にしてメッキにしなければならないという。人件費が安いからどうにか採算があうけれども、軟水化の費用も馬鹿にすることが出来ず、果たして、海外への工場移転が正解であったかどうかとこぼしていた。

 日本の企業が中国等の海外に生産工場を持つことは、それはそれでよい。
 不動産鑑定でこの行為を考えると、次の問題点が生じてくる。

 企業が財務諸表に記載している工場の土地、建物、機械装置の価格を100%、そのまま投資家は信用してよいのであろうか。

 これをアメリカの考え方で立つと、アメリカ企業が海外に工場等の建設投資した場合、アメリカの投資家は、アメリカの会計基準に従って、企業財務の洗い直しを企業に要求する。その為に米企業は、アメリカの不動産鑑定会社に対して、アメリカ企業が海外に所有もしくは購入した工場の土地、建物、機械装置の時価評価を依頼する。アメリカの不動産鑑定会社は、米企業の海外工場の土地、建物等の時価評価を行い、米企業に報告する。

 この様にして、アメリカの不動産鑑定会社は、米企業の海外進出に伴い、鑑定評価の仕事を海外に増やしてきている。

 日本の企業の中国進出に伴い、日本の不動産鑑定会社が中国に進出し、あるいは中国の工場評価を行っているという話を聞いたことがない。

 アメリカ企業、アメリカ不動産鑑定会社が行えることが、何故、日本の企業、日本の不動産鑑定会社は行おうとしないのだろうか。
 日本とアメリカとは違うよと云ってしまえばそれまでだが。

 しかし、時価会計制度がすぐそばまできている。その時にも「日本とアメリカとは違うから」という論理が通用するか否か。

 もっとも、私に中国に進出している日本企業の工場の土地建物の評価が出来るのかと云われても、言葉の壁で行うことは出来ないが。

フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ


<