カナダのアルミ会社のアルキャンが、フランスのアルミ会社ペシネーを約40億ユーロ(約5300億円)で買収するという。(日経2003年9月13日)
アルキャンはペシネーを株式公開買付によってでも買収しようとし、これに対しペシネーは、
「敵対的買収だ」
と反発したが、アルキャンの買収を受け入れたという。
ペシネーの2002年の売上高は119億ユーロである。
売上高に対する買収価格は、
40÷119=0.336
である。買収価格に対する売上高倍率は、
119÷40=2.975≒3.0
3倍である。
株式公開買付によってでも取得しようとするのであるから、買い進み要因が含まれていると思われる。それを考えれば売上高に対して、その1/3の買収金額は、それなりに納得出来る。
日本のみでなく、米欧の企業買収にあっても、買収価格は、売上高よりかなり下まわって取引されるということになる。
ペシネーの買収により、アルキャンの売上高は260億米ドル(約3兆円)となり、アメリカのアルコア(202億ドル)を抜いて世界一のアルミ企業になるという。
上記企業買収例より、日米欧ともに企業買収価格は売上高よりかなり下回まわるものと考えていたら、全くそれを否定する事例があらわれた。
アメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)は、英国の医療製薬会社であるアマシャムを買収する。(日経2003年10月11日)
その買収金額は95億ドル(約1兆400億円)という。
その買収されるアマシャムの2002年売上高は24億3千万ドルという。
買収金額は売上高の、
95÷24.3 = 3.9
3.9倍である。売上高をはるかに超えて、その3.9倍の価格で企業買収するのである。
この記事を見た時、買収金額の位が一つ違うのではないかと思った。
何故かならば、前記企業買収価格形成の考え方を全く否定する企業買収行為であるからである。
アルキャンのペシネーの買収価格と売上高の割合関係は理解出来たが、GEのアマシャム買収価格には私はさっぱりわからない。
製薬会社の企業買収価格決定には、特別な要因・取引経済則というものがあるのであろうか。
アマシャムにすばらしい高利益を生みだす超特別な新特許でもあるのであろうか。
私の理解を超えた、違う価格形成理論が存在すると認識せざるを得ない。
日本と米欧の外国では、企業買収の価格形成は違うといってしまえば、それまでであるが。
しかし、同じ北米のアルキャンとGEの巨大企業の企業買収に対する考え方が違いすぎる。正反対である。
そして買収金額も半端なものではない。
売上高のみで買収価格は決定されるものではないことは充分承知している。といって、その要因は無視出来るものではないであろう。
日本と米欧で企業経営の根本的な考え方、「収益あっての価格」というものは変わらないと私は思うが。
数年後には、企業会計の数字によって結果が示されるであろうが、GEが損するような企業売買をするはずがないと私は思っている。
わかることなら、GEのアマシャム買収価格決定の過程を、後日でもよいから知りたいものである。
鑑定評価の価格研究分析の立場として知りたい。