2016年(平成28年)2月21日(日曜日)の日本経済新聞の1面トップのヘッドラインは、「不動産融資26年ぶり最高」という文言であった。
このヘッドラインを見た時には、私は驚いた。
日経もようやく不動産業への融資の過剰に気付き、その警鐘かなと。
しかし、記事の内容は、私をがっかりさせるものであった。
記事は、昨年(2015年)の不動産業の新規融資額は、10兆6730億円であり、1989年の10兆4419億円を超えたと伝える。
この事実が、ヘッドラインになっている。
1989年の10兆円の額は、平成バブルと呼ばれるものである。
その平成バブルの状況について、日経は「あらゆる投資家が不動産に資金を回した」と云う。
それに比し、今回は、収益性を見極めて都市部のオフイスビルや商業施設のREIT(リート)への融資が多く、その融資も三大都市圏などにとどまり、「過熱感はない」と云う。
加えて、「日銀が1月にマイナス金利政策を打ち出したことでリート価格が上昇するなど不動産市場は再び活発化しそうだ」と、あたかも不動産価格は上がるであろうと云わんばかりにあおりたてる。
そう言いながら、最後に相矛盾するようなことを言って結ぶ。下記である。
「大規模な金融緩和が長引けば、不動産への資金集中が将来の価格下落リスクを高める懸念がある。」と。
10兆円の不動産業の新規貸出は、リート対象であって過熱感はないと云うが、私はそうは思わない。限られた三大都市圏等の不動産に10兆円の金額が投下されているのである。
そして日銀のマイナス金利政策で、不動産価格は上がるであろうと価格上昇をあおっている。
そうしておいて、不動産に資金集中しているから価格下落リスクが生じると、上げておいて下げる論調である。
平成27年の全産業の新規融資額は、43兆8772億円であり、そのうち不動産業の占める割合は24.3%である。
一産業種に、全産業融資額の24%の融資が集中することは、いびつで異常であろう。
このことを論及して欲しかった。
日経が、日銀の肩を持つのは分かるが、だからといって日銀のマイナス金利政策に依って不動産価格は上昇するであろうと、価格上昇をあおり立てるごとくのことを書くべきでは無かろう。
私は、不動産の価格及び賃料を鑑定評価することを職としているが、不動産の価格がこれ以上上がっても日本経済にはブラスになるとは思わない。もう上がることは止めて欲しいと願っている。
なお、不動産業への新規融資額については、鑑定コラム1455)「衰えぬ年間10兆円の不動産業新規貸出額・平成27年」(2016年2月16日発表)で記している。
このコラム記事では、2015年9月が不動産業融資額が最高で、その後の3ヶ月では融資額が減少しており、国内銀行の不動産業融資にブレーキが掛かり、「不動産価格はこれから下落するぞ」と記している。果たしてこの予想が当たるか否か。
鑑定コラム1455)「衰えぬ年間10兆円の不動産業新規貸出額・平成27年」
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