減多に売買されることのない鉄道の売買が行われる。
売買される鉄道は、千葉ニュータウンにある小室駅〜印旛日本医大駅の12.5kmである。
同線に関わる鉄道施設のすべてで、土地、路盤、高架橋、線路等と車両40両という。
買主は京成電鉄である。(2004年2月27日京成電鉄プレスリリース)
売買金額(予定)は193億円という。
鉄路1km当りの価格は、
193億円÷12.5キロ=15.44億円≒15.5億円
である。
売主は都市基盤整備公団(名前がしょっ中変わり甚だ面倒な公団である。正式名称を表示しないとわざわざ文句や訂正を指摘してくる人もいる。間違えるこちらの方が悪いのであるから仕方がないが。)である。
都市基盤整備公団は、平成16年(2004年)7月1日に独立行政法人「都市再生機構」(またまた名前が変わる)に移行するために、移行を機会に同鉄道を手放そうとするようである。
鉄道は、鉄道を所有している人が運行事業を行っていると思っていたら、なんだか複雑な事業形態のようである。
鉄道を所有しているのみで、その鉄道を第3者に貸して運行させる事業を第3種鉄道事業というらしい。つまり鉄道の賃貸が認められている。
賃貸を前提とする鉄道事業を第3種鉄道事業というのである。
では、その他人の所有の鉄道を借りて、鉄道事業をを行う鉄道事業をなんというのかというと、それを第2種鉄道事業という。
ならば、自らの所有鉄道で、自らが鉄道事業を行うのを何んというのかというと、それは第1種鉄道事業というのである。
鉄道事業に、経営の近代的な考え方である「所有と経営の分離」が、導入されていたのである。
売買される鉄道は、京成電鉄の子会社である北総開発鉄道が、所有者より借りて鉄道事業を行っているのであるから、第3種鉄道事業の売買ということになる。
第3種鉄道事業は、そもそも賃貸収入が入る事業であるから、その賃料収入を前提にして、今はやりの不動産の証券化を行おうとすれば出来ることになる。
SPCを立ち上げ、そのSPCに鉄道施設を売却して、投下資本の193億円を回収し、その金を使って、より増収・増益の経営を計ることが出来る。資金を寝かす事無く、回転出来る。
SPCは、鉄道施設の賃貸収入を前提にして、リートを発行し、第3者に証券を売却し資金を回収する。下記に述べる8.6%の利回りのある本件物件では、充分不動産の証券化は可能である。
投資先に困っている地方銀行は、国債の利回りの3倍以上の配当がある不動産証券を購入するであろう。現に4〜5%の配当利回りのJリートの購入者の25%が、地方銀行であるという現実がそれを物語っている。
銀行、投資銀行、証券会社等のファンドビジネスの人々は、このビジネスチャンスを放っておかないと思う。何と言っても有料道路をファンド化してしまうビジネス界である(鑑定コラム30
「熱海ビーチラインの証券化」)。
北総開発鉄道は、昭和47年に設立された鉄道会社である。
当時の日本住宅公団が開発する千葉ニュータウンの鉄道の足として、京成電鉄が設立した会社である。
北総開発鉄道の売上高は、同社のホームページによれば、平成15年3月期で、
売上高 125億円
営業費 82億円
である。
営業利益は43億円である。
営業利益率は、
43÷125=0.344≒0.35
である。
利益率が35%であるとは立派な会社である。(と云いたいが、現実には繰越損失が420億円ある)
鉄道の経費率は、
1−0.35=0.65
ということになる。
この数値は、何かの時に利用出来るのではないかと思う。
北総開発鉄道の営業キロ数は、今回売買する小室〜印旛日本医大間の12.5kmのほかに、都内の京成高砂〜小室間の19.8kmがあり、合計32.3kmである。
小室〜印旛日本医大間分の営業利益はわからないから、営業キロ数で按分するとすれば、営業利益は、
43億円×(12.5÷32.3)≒16.6億円
である。
小室〜印旛日本医大間の鉄道事業の予定売買価格は193億円である。
この売買価格と営業利益から、利回りは、
16.6億円÷193億円=0.086
である。
8.6%の利回りである。
鉄道事業の売買として、この8.6%利回りは妥当な水準にあるのか否かはともかくとして、1つの実証データの利回りの数字になる。
193億円の金額がどの様にして、決められたのか私の知る由はないが、まさか、取得原価である土地取得費、鉄道工事費を積みあげて得られる積算価格で決められているのではないだろう。
鑑定コラム1150) 「鉄道高架工事費1km当り139億円」
鑑定コラム1426)「仙台地下鉄工事費1km当り165億円」