東京から熱海へ車で行こうとすると何回も通行料金を支払わされる。
川崎インターから入ると東名高速道路料金、厚木で下りて小田原厚木自動車道路に入ると同じ道路でありながら2回も料金ゲートがある。
それを過ぎると西湘バイパスそして真鶴道路、ついで熱海ビーチラインと何度ポケットの小銭を探すことか。
都内からはこのほかに首都高速道路の料金もかかる。
真鶴道路から熱海ビーチラインと崖下沿いの道を左手に海ばかり見て走っていると、突然熱海のホテル群が目に飛び込んでくる。
それが熱海ビーチラインの終点で、「お宮の松」の前に出る。
「お宮の松」を見るためには随分と通行料を支払って来ることになる。
行きっぱなしではないから、帰りにも同じようにいくつかの料金ゲートを通り通行料を支払うことになる。
何度も料金を取られ、それも重なると小馬鹿に出来ない金額となる。
税金を支払っているのに、どうしてこうも通行料を取られるのかと腹立たしくなってくる。
その有料道路の一つの熱海ビーチラインがSPCを設立し、通行料収益を担保にして証券化されるという。(日経2002.4.23)
大分前に造られた道路であるから、道路工事費の35年償還期間が来て無料化されてもよいではないかと思っていたが、民間企業の所有道路であるため無料化とは無関係であるらしい。
熱海ビーチラインの所有者は三井観光開発という会社である。鴨川シーワールドを経営している会社である。
熱海ビーチラインは年間354万台(2001年)の車両が通行する。
通行料は普通乗用車が250円、大型自動車は960円である。
1台250円とすると年間通行料収入は、
250円×3,540,000台 = 885,000,000円
である。
証券化は130億円の調達という。
有料道路事業の標準的経費率がどの位か、あいにくと私は知らない。
粗利回りで考えるとし、調達額が資産価値と見なすと、
8.85億円÷130億円=0.068
6.8%の粗利回りである。
首都高速道路公団の平成12年度決算は、
道路収入等 262,640百万円
道路・一般管理費 77,544百万円
である。但し、借入金利を考えない。
道路事業の収支率は
77,544百万円÷262,640百万円=0.295
である。
この割合を熱海ビーチラインに当てはめると、
6.8%×(1−0.295)= 4.794 ≒ 4.8%
熱海ビーチラインの還元利回りは4.8%ということになる。
証券化の配当率は当然これ以下ということになる。
利率1%以下の銀行の定期預金の時代である。4.8%以下でも充分証券化は可能である。
そこに目を付けた人の感覚は鋭い。
そしてそれを机上の空理空論で無く、実行しようとする行動力も称賛に値する。
賃貸ビルの証券化、ショッピングセンターの証券化がなされ、リートの時代がいよいよ日本にも来たのかと思っていたら、それらを遙かに越えて
道路通行料を証券化
する時代に突入する事になってきた。
熱海ビーチラインを造るためにどれほどの用地費、工事費がかかっていたとしても、それは全く関係なく、道路の通行料のみによる利益で有料道路の交換価値が把握されるのである。
積算価格は一体どこに行ってしまったのだろうか。
いつまでも原価法の積算価格云々といっている時代ではないということの一つの証左か。
SPCはスペシャル パーパス カンパニーの英語の頭文字をとった略字であるが、この日本語訳がややこしくも2つある。
「特定目的会社」と「特別目的会社」の2つの日本語訳である。
2つの会社の違いはどうもよくわからないが、特定目的会社は「資産流動化法」に基づいて設立された会社をいい、特別目的会社というのはそれ以外の会社の場合を云うらしい。
いずれも英語ではSPCという。
熱海ビーチラインのSPCは特別目的会社のSPCのようである。
なお、SPCに関する記事の鑑定コラムとして、次のものがあります。
鑑定コラム199)
「ナイガイの2つの倉庫の売却」
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