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@ 借地権が付着しない土地、即ち更地に対する土地の利回りを「土地期待利回り」と呼ぶ。
借地権が付着している状態の土地の期待利回りを「地代期待利回り」と呼ぶ。
A 土地期待利回りは、土地残余法で求められた土地残余収益を更地価格で除せば求められる。
土地残余収益
──────── = 土地期待利回り
更地価格
但し、この土地残余収益には、建物の減価償却費要因のものが入らない純収益である。つまり、償却前純収益では無く、償却後純収益である。
B 何故と云えば、この純収益に減価償却費要因のものが入っていた場合、その純収益から求められた土地期待利回りを使用して純地代を求めると、純地代には減価償却費要因が含まれた純地代になる。
純地代に公租公課を加算して地代は求められることから、求められた地代には減価償却費要因のものが含まれた地代となる。
土地残余収益(含減価償却費要因)
───────────────── = 土地期待利回り(含減価償却費要因)
更地価格
更地価格×土地期待利回り(含減価償却費要因)=純地代(含減価償却費要因)
純地代(含減価償却費要因) +公租公課 =地代(含減価償却費要因)
C 純地代に減価償却費要因が含まれていれば、求められる地代にも減価償却費要因が含まれることになる。
この地代は適正ではない。
何故かと云えば、借地上の上の建物は借地人が建てるものである。土地所有者が建物を建てない。
建物の投下資本の提供者は、借地人である。
建物に投下した資本の回収は、減価償却費として建物資本投下者が手にするものである。
地代に減価償却費要因が含まれることになると、土地所有者は建物投下の資本を一銭も出さずに、建物建設資本投下者が得るべきものを手にすることになる。
建物建設資本投下者は、投下資本の回収が全く出来ないということになる。
このことは、おかしいことではなかろうか。
このことから、純地代を求める土地期待利回りは、減価償却後の純収益で無ければならない。土地期待利回りは、減価償却後利回りでなければならない。
つまり、積算法で使用する土地期待利回りは、減価償却後の利回りでなければならない。
D 償却前純収益による価格評価を念頭にして、鑑定評価基準は必要諸経費を考えなくてもよいとしている。今回の鑑定評価基準改定では、利回りにもその考えを導入して来た。
土地建物が同一人に属している場合には、その考えでも支障は生じ無いが、土地建物の所有者が異なる場合に、その考え方を推し進めると、上記のごとく減価償却費を地代に含めるというとんでも無いことが生じてしまう。
更地の場合の土地残余法の求め方を、地代を求める場合に同じごとく導入してはいけないのである。
地代を求める場合の土地残余法は、必要諸経費に減価償却費を入れ、求められる純収益は、減価償却後純収益(純収益に減価償却費が含まれない純収益)でなければならない。
土地期待利回り、地代期待利回りは、地代評価にあっては減価償却後の期待利回りでなければならない。
E 具体的に土地期待利回りを求める。
例えば、土地残余法によって土地の償却後純収益が、12,600,000円であったとする。
更地価格を、420,000,000円とする。
土地期待利回りは、
12,600,000円
──────── = 0.030
420,000,000円
である。
F 地代期待利回り
借地権価格相当割合を50%とすれば、地代利回りは、
0.030×(1−0.5)=0.015
である。
つまり、地代期待利回りは、土地期待利回りに借地権価格割合を減じた割合を乗ずれば求められる。下記の算式である。
土地期待利回り×(1−借地権価格割合相当)=地代期待利回り
この求められた地代期待利回りが、積算地代(積算法で求められる地代)を求めるのに使用する期待利回りである。
地代期待利回りは、実質的には、土地残余法により算出するのであることから、それは賃貸事業分析法を途中まで行っていることになる。
積算法と賃貸事業分析法とは、期待利回りの所で密接に繋がっていることになる。
(2016年9月9日、東京赤坂のホテルニューオータニの小さな会議室で開かれた田原塾平成28年9月会の講話レジュメに加筆して)
鑑定コラム1548)「新規賃料と経済価値に即応した適正な賃料」
鑑定コラム1552)「賃貸事業分析法の具体的な求め方」
鑑定コラム1633)「土地価格に家賃利回りを乗じて地代を求めるな
!」
鑑定コラム1890)「近親者の関係が無くなった場合の地代の東京高裁判決文(平成12年7月18日)」
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