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1560)プリズンアドベンチャーツアー

 京王電鉄の電車に乗っていたら妙な広告を見た。

 「プリズンアドベンチャーツアー」という文字が躍る広告である。

 「プリズンアドベンチャーツアー」何? それ。

 府中刑務所の文化祭の広告の中の文言である。府中刑務所が文化祭の広告を出していた。

 「府中刑務所の文化祭?、それ何?」

と思われる人が殆どであろうが、東京府中市晴見町にある「府中刑務所」が開く、市民と親しめる刑務所を「文化の日」に開くお祭りである。

 府中刑務所の塀の外にある官舎のグランドで、楽団演奏、模擬店、受刑者作成の家具、靴、味噌・醤油等の即売会、そして1年に一回、一般の人が、刑務所の塀壁の中に入り、受刑者が使っているお風呂場等の施設を見る事が出来る。これが所謂「プリズンアドベンチャーツアー」である。

 大変人気があり、ツアー出来ない人も多い。

 今年2016年は、11月3日午前10時〜午後3時まで開かれる。明日である。

 午後3時までであるからとのんびりして行くと、バザーの品物は殆ど売り切れていて、店じまいの模擬店に出会うことになる。

 刑務所の文化祭にわざわざ来る人はいないであろうと思い、来ている人はパラパラ程度と思われるかもしれないが、とんでも無い間違いである。人、人、人である。

 開門10時であるが、7時に来て開門を待って、長い行列が出来る状態である。

 人気の刑務所パンはあっという間に売り切れてしまう。味噌・醤油も売り切れてしまう。

 講堂・武道館では、全国刑務所から出品された家具調度品が即売されている。嫁入り道具一式をここで揃える人もいる。

 家具の中では一品100万円の値のする家具も陳列されるが、それにも売却予約の札がついていることもある。

 見事な祭り御輿も陳列される場合もある。

 京王線府中駅とJR中央線国分寺駅の間を京王バスが,ひっきりなしに運行している。「晴見町」のバス停で降りてバス通りを、府中駅から乗った場合は府中駅方向にバック、国分寺駅から乗った場合は国分寺駅方向にバックすれば、刑務所入り口の看板が目に入る。そこは既に刑務所の敷地である。

 忌み嫌わずに、一度府中刑務所文化祭に訪れることも、いつの間にか知らずに身に付いてしまった諸々の固定観念を打ち破る1つのきっかけになるかもしれない。

 府中刑務所の起源は、作家池波正太郎の鬼平犯科帳でおなじみの火付盗賊改方長官長谷川平蔵が造った石川島の人足寄場である。石川島人足寄場が現在は府中刑務所になっているのである。

 府中刑務所は、府中市の北部中央端部にある。

 地形は、羽子板の地形である。羽子板の握り手の端が刑務所敷地の東側で、国分寺街道に面する。ここが正面入り口である。バス通りである。その国分寺街道の反対側は国立大学の東京農工大のキャンパスである。

 羽子板の頭は西側となり、西側敷地は府中街道に面する。旧鎌倉街道である。府中街道は南北に走り、海の川崎と陸の所沢を結ぶ。その府中街道に沿ってJR武蔵野線が走っている。その向こうは東芝府中工場の大規模画地利用である。

 つまり、府中刑務所は、東側が東京農工大のキャンパス、西側は東芝府中工場という2つの大画地に挟まれているということである。

 刑務所敷地北側は、学園通りと呼ばれる市道が走る。その名前のとおり学校が沿道に多くある。

 至近にあるのが九小という小学校である。刑務所裏の小学校である。児童は毎日刑務所の壁沿を歩いて学校に来る。

 同通りを東に向かって学校を記すと、最初に都立府中高校がある。そして学園通りを挟んで南に国立大学の東京農工大学、北に幼稚園から高校までの明星学園(大学は八王子にある)、そしてやや離れて六小がある。

 六小は、サッカーの澤穂希女史がサッカーを学んだ小学校である。

 府中刑務所の敷地面積は、約26万uである。26万uと云っても広さは実感出来ないかもしれないが、幅260m、長さ1000mの大きさの画地と云えば、おおよその広さが分かろう。1000mは、端から端を歩くと12分かかる長さである。

 私は、地方の町村の町興しとして刑務所誘致を考えてよいでは無いかと思っている。

 刑務所というと人は嫌うかもしれないが、刑務所の産業力・工業力を知れば、工場が来てくれない町村にとっては考え方を変えるのではなかろうかと思う。

 刑務所は隠れた一大工場である。

 府中刑務所で造られている製品を公開されているネットで見ると、下記である。

 木工  3工場  収納家具、小物製品、幼稚園・教会・老人ホーム等の備品

印刷  3工場  各種帳票印刷 月刊誌、季節誌、頁物印刷
洋裁  3工場  子供服、婦人服、布バック
 金属  12工場  金属部品加工・組立、車検整備、板金塗装、洗車
 革工  1工場  革靴、革小物
 その他 12工場 玩具組立、紙袋加工、メラミン食器製作、各種袋入作業
職業訓練 4工場  窯業、情報処理 小型建設機械、自動車整備 板金塗装

 多くの人が知らずに使っているものが、刑務所作成の製品であるかもしれない。

 大学の入学試験の問題用紙は、刑務所で印刷されているという噂がある。但し真偽の程は私は知らない。

 府中刑務所が、工場として使用している面積は、約25,000uである。

 製品出荷額がどれ程か分からないが、上記の業種・作業内容を知れば、中規模工場の5工場程度の規模に相当するのではなかろうか。

 懲役刑収容人員約2800人が働く工場である。

 「工場と云っても地元の人が雇用される訳でもなく、法人税、法人事業税が落ちる訳では無いから刑務所の工場・製品出荷額は意味ない。」

という反論があがるであろう。

 その考え方に陥っていては、先は無い。

 考えるのは、刑務官及びその家族の存在である。

 刑務官一人に服役者4人とすると、刑務官は約700人(2800÷4=700)か。そしてその家族を含めるとおよそ2000人の刑務官関係者数となる。

 敷地内にRC造の中層建物の刑務官宿舎群が建ち並ぶ。一大団地である。

 この人々が毎日消費する食料、生活費は、漠大な量、金額である。

 受刑者の食材も地産地消とすると合意すれば、その金額は地元に確実に落ちる。

 工場の原材料の地元調達の道だって考えればある。

 こうした刑務所の経済力・工業力を知れば、町興しの考えも変わってくるのでは無かろうか。

 但し、現在の府中刑務所立退の要望が地域住民より出ている訳ではない。

 何十年と続いている府中刑務所文化祭が、地域住民との融和橋渡しに見事に成功している。


  鑑定コラム1537)
「1977年に建てた木造住宅が寿命を迎えている」


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