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1634)不動産鑑定評価基準は法律と同等である

 鑑定コラム1633)の見方を変えた続編である。内容が重複するところがあるが、そこは辛抱して読んで欲しい。

 不動産鑑定評価は、不動産鑑定評価基準(以下「鑑定基準」と呼ぶ)に従わなければならない。

 その鑑定基準は、国土交通省土地鑑定委員会が制定し、国土交通省事務次官通達として発表されたものであり、法律ではない。

 事務次官通達であることから、それはあくまでも行政機関内部の命令伝達であり、その通達の解釈については司法の判断を拘束しないと云うのが原則である。

 しかし、鑑定評価基準は、国土交通省の事務次官通達であるが、法律に準じたものと解釈されると私は判断する。それは、以下の理由による。

 不動産鑑定評価を取り締まる法律は、「不動産鑑定評価に関する法律」で、その第40条に不当鑑定についての懲戒処分規定がある。

 引用すれば、下記である。

****


 (不当な鑑定評価等についての懲戒処分)

第四十条  国土交通大臣は、不動産鑑定士が、故意に、不当な不動産の鑑定評価その他鑑定評価等業務に関する不正又は著しく不当な行為(以下「不当な鑑定評価等」という。)を行つたときは、懲戒処分として、一年以内の期間を定めて鑑定評価等業務を行うことを禁止し、又はその不動産鑑定士の登録を消除することができる。不動産鑑定士が、第六条又は第三十三条の規定に違反したときも、同様とする。

2  国土交通大臣は、不動産鑑定士が、相当の注意を怠り、不当な鑑定評価等を行つたときは、懲戒処分として、戒告を与え、又は一年以内の期間を定めて鑑定評価等業務を行うことを禁止することができる。

3  国土交通大臣は、不動産鑑定士が、前二項の規定による禁止の処分に違反したときは、その不動産鑑定士の登録を消除することができる。

****


 一方、国土交通省は、「不当鑑定評価等及び違反行為に係る処分基準」を公表している。

 その公表処分基準によれば、不当な鑑定評価による懲戒処分の基準は、

    @ 価格等調査ガイドライン
    A 不動産鑑定評価基準及び留意事項
    B その他実務に関し遵守すべきと認められる事項

に照らして不当性の程度を判断して、「不動産鑑定評価に関する法律」第40条の規定で懲戒処分するとしている。

 その懲戒処分の判断の中心的存在にあるのは、鑑定基準である。

 鑑定基準違反と認められる場合は、「不動産鑑定評価に関する法律」第40条で罰するということである。

 鑑定基準違反に対して、「不動産鑑定評価に関する法律」第40条が適用されて罰せられると云うことは、鑑定基準は、法律と同等のものということになる。

 つまり鑑定基準違反の行為は、法律違反と同等ということである。

 鑑定コラム1633)で取り上げた期待利回りについて考えて見る。

 鑑定基準は、期待利回りについて、次のごとく述べている。

 「期待利回りとは、賃貸借等に供する不動産を取得するために要した資本に相当する額に対して期待される純収益のその資本相当額に対する割合をいう。」(平成26年改正国交省版P32)

 採用する期待利回りは、賃貸借等に供する不動産を取得するために要した資本に相当する額に対するものである。

 それは、土地の場合と土地建物の場合とはっきりと区別される。

 土地の賃貸借の場合には、取得するのは土地であるから、土地価格に対応する期待利回りと鑑定基準は云っている。

 土地の賃貸借の場合とは、土地を元本とする果実は地代であるから、地代に対応するのは土地価格ということになる。

 土地建物の賃貸借の場合には、取得するのは土地建物であるから、土地建物価格に対応する期待利回りと鑑定基準は云っている。土地建物を元本とする果実は家賃であるから、家賃に対応するのは土地建物の価格ということになる。

 鑑定コラム1633)で、裁判所の任命した鑑定人不動産鑑定士の地代の鑑定の期待利回りについて論じた。

 判決は、鑑定人不動産鑑定士の判断を全面的に支持して、鑑定額と同じ判決を下した。

 その鑑定人の地代の期待利回りの決め方については、同コラムで記したが、再度転載して、下記に記す。

 「財団法人日本不動産研究所が調査している「不動産投資家調査」があるが、価格時点前後3回分のその調査結果では下表のごとく○○地区倉庫の期待利回り(償却率込みの純期待利回り)は6.5%〜6.8%である。但しこれは償却率を含んだ純収益利回りであるのに対し、地代評価上必要となる期待利回りは、償却率を含まない償却後のものであるので、当該償却前純収益利回りから、これに含まれる減価償却費の割合(経験的に1%〜2%程度低くなるものと判定)を控除する必要がある。
 そうすると償却前純収益利回りの一般水準6.5%〜6.8%から償却率1%〜2%を控除した期待利回り(純賃料利回り)は、4.5%〜5.8%程度と導かれることになる。」

 上記理由で、期待利回りを4.5%と決定している。

 判決が支持した上記地代の期待利回りを、鑑定基準の期待利回りの規定に照らして見ると、どうであろうか。

 鑑定人不動産鑑定士が決定し、判決が支持した上記地代の期待利回りは、家賃の期待利回りである。

 つまり、地代は、

         土地価格×土地の期待利回り+公租公課

の算式で求められなけれならないのに、鑑定人不動産鑑定士は、

    土地価格×土地建物の期待利回り+公租公課

の算式で求めている。

 この期待利回りの使用方法は、鑑定基準に明らかに違反している使用方法である。

 鑑定基準違反の不当鑑定は、「不動産鑑定評価に関する法律」の第40条によって懲戒処分されるのである。

 判決は、「不動産鑑定評価に関する法律」の第40条に抵触する地代鑑定を、適正な地代鑑定と判決している。

 とすれば、その判決は、「不動産鑑定評価に関する法律」の第40条違反の判決ということになる。

 その判決に正当性は全く無く、破棄されるべき判決となろう。

 逆に判決が正当であるとするならば、鑑定基準の期待利回りの規定は、どういうことになるのであろうか。

 鑑定基準に不動産鑑定は従わなければならないと冒頭に書いた。何故従わなければならないのか。

 それは、鑑定基準に従わなければ、求められる価格・賃料の秩序が守られないためである。

 法律があるのは、社会秩序を守るためである。

 法律と鑑定基準は、秩序を守るというという点においては同じである。

 控訴審の高裁が一審判決を支持する判決を出した場合は、最高裁への上告になる。

 最高裁への上告は、最高裁の判例違反か、法律違反の判決でかつ結果に著しい影響を与える場合という厳しい上告理由の場合しか、上告が受理されない。

 鑑定基準は、価格・賃料の評価秩序を守るために「不動産鑑定評価に関する法律」第40条と連係していることから、法律に準じたもの若しくは同等のものであり、前記期待利回りの鑑定基準違反の判決は、最高裁への上告は可能であると、私は判断する。


  鑑定コラム1633)
「土地価格に家賃利回りを乗じて地代を求めるな !」


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