○鑑定コラム
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地代の基礎価格は、底地価格ではない。
地代の基礎価格は、更地価格であり、期待利回りは借地権価格が附着している状態の利回りである。
例えば、更地価格の期待利回りが4%であった場合,借地権割合相当が60%であれば、借地権価格が附着している地代の期待利回りは、
4.0%×(1-0.6)=1.6%
である。
裁判所鑑定人の地代の鑑定書が提出された。
基礎価格を底地価格とし、底地価格に期待利回りを乗じて地代を求めていた。
底地価格は、相続税路線価の借地権割合を、更地価格割合を100%とした割合から控除して求めていた。
この求め方は鑑定基準違反で間違っていると、私は間違いを指摘した。
鑑定基準の底地価格の求め方は、底地の取引事例からの比準価格と、地代からの収益価格の2つから求めるものと規定されている。
更地価格割合を100%とした割合から借地権割合を控除して底地割合を求め、その割合を、更地価格に乗じて底地価格を求めてよいと、鑑定基準の何処にも書いてない。
鑑定人不動産鑑定士の底地価格の求め方は鑑定基準違反で、底地価格の信頼性は無いと私は指摘した。
その時、地代の基礎価格は更地価格であることについて、鑑定基準が平成26年改正で取り入れた地代の新しい求め方である賃貸事業分析法は、更地の上に新築建物を建てることを想定して地代を求める手法であることから、更地価格が基礎価格であると記した。底地の上に新築建物を建てる事を想定していない。
私のこの指摘に対して、裁判所鑑定人不動産鑑定士が、次の如くの回答を裁判所に提出して来た。
「ところで、平成26年の不動産鑑定基準等の改定を踏まえて、公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会が策定・改定した実務指針のうち、「不動産鑑定評価基準に関する実務指針−平成26年不動産鑑定評価基準改正部分について−」が規定された。実務指針は、下記のとおり土地建物帰属純収益は、借地権者に帰属する純収益と借地権設定者に帰属する純収益に配分されるものであり、「更地を求める際の土地帰属収益と比較して低くなる」と解説されているとおりである。
以上より底地価格は基礎価格にならないとする意見書の指摘は当たらない。」
と反論する。
加えて引用として、次の文章を記述する。
実務指針は、「不動産鑑定士が当該業務を行う際に準拠するものとし、準拠できない場合又は他の方法に拠る場合は、その合理的根拠を明示しなければならないもの(第3条(3))とし、第6条で「遵守義務」を規定している。なお会員に同規程に違反する行為が認められた場合は、「懲戒規定」(第4条(3))により「懲戒事由」の一つとなる。」
つまり、裁判所鑑定人不動産鑑定士は、底地価格が地代の基礎価格であるのに、田原鑑定は更地価格が基礎価格であると主張している。加えて底地価格を採用しない事由を記していないことから、それは実務指針違反であり、田原鑑定は懲戒されるという主張である。
おお怖い。これは「脅し」である。
この様な「脅し」文言を付け加える必要性は全く無い。
自分の底地価格の求め方は鑑定基準に違反しているか、いないかを、鑑定基準の記述個所を記載して回答するだけでよい。
回答するにおいて、鑑定協会の懲戒規定など引用する必要性は全く無い。
裁判所鑑定人不動産鑑定士は、賃貸事業分析法の純収益は、「更地を求める際の土地帰属収益と比較して低くなる」ことをもって、地代の基礎価格は底地価格である如く反論している。
このことは全く違う。
更地を求める際の土地帰属純収益と比較して純収益が低くなることは、それは次の理由による。
更地価格を求める土地残余法は、償却前純収益で価格を求める。
つまり、減価償却費を必要諸経費に計上していない。必要諸経費に計上しないので、その分は純収益の中に入っていることになる。この場合、土地・建物が同一所有者であるから、減価償却費の帰属については問題が生じない。
一方、平成26年改正鑑定基準で導入された賃貸事業分析法の使用する土地残余法は、減価償却費を必要諸経費に計上する。
そのため純収益には必要諸経費は含まれない。償却後純収益である。
何故、減価償却費が純収益に含まれないかというと、それは、建物の所有権者は借地権者であり、減価償却費は借地人の取り分であり、地主が取得するものでないことから、純収益に入れないのである。
もし純収益に減価償却を入れると、純収益は地代を形成することから、減価償却費が地代に含まれることになり、借地人が地代として減価償却費を支払うことになるためである。
賃貸事業分析法の純収益が低くなるということは、償却前純収益から減価償却費が控除された償却後純収益になるためである。
減価償却費相当分が低くなるのである。
この純収益を使用して更地価格が求められる。
減価償却費分低くなった純収益の場合、即ち償却後純収益の場合、その更地価格は低くなるのかと云うと、低くならない。求められる更地価格は、償却前純収益によって求められる更地価格と同じ価格である。
それは何故かと云えば、償却前純収益に対しては償却前還元利回りを使用して更地価格を求め、償却後純収益に対しては償却後還元利回りを使用して更地価格を求めるためである。更地価格は同額で求められる。
上記説明で分かったと思われるが、地代を求める賃貸事業分析法は更地価格に対応する純収益を使用して、地代を求める手法である。
このことから地代の基礎価格は、更地価格であることになる。
減価償却費分が低くなった純収益は、底地価格に対応する純収益では無い。
裁判所鑑定人不動産鑑定士の回答は、償却前純収益、償却後純収益の知識に疎い人を騙くらかして、減価償却費分が低くなった純収益は底地価格に対応するものであるから、地代の基礎価格は底地価格であるが如く、読む人を誤誘導させようとしている。
この行為はかなり悪質である。
底地価格は基礎価格にならないと指摘する不動産鑑定士田原拓治の意見は、実務指針違反であるから懲戒規定に抵触すると、裁判所鑑定人不動産鑑定士は田原を脅す。
底地価格が地代の基礎価格であると主張し、かつ、その底地価格を底地割合で求める裁判所鑑定人不動産鑑定士の方が間違っているのでは無かろうか。
自分の間違いを糊塗し、間違いであると指摘した人を懲戒規定に違反し懲戒処分されると脅すとは、随分と傲慢であり、とんでもないことではなかろうか。
警察への脅迫への告発は取り敢えず留保しておくが、地代増減額請求事件訴訟担当の代理人弁護士には、事件担当の裁判官に対して、裁判所が任命した裁判所鑑定人不動産鑑定士は脅しをかける様なことをするものでは無いと厳重に抗議しておいて欲しいと頼んでおいた。
鑑定コラム1320)「底地割合による底地価格は鑑定評価基準違反である」
鑑定コラム1319)「地代の基礎価格は、更地価格である」
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