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1832)新規実質賃料の積算賃料と比準賃料に開差が40%強ある鑑定書

 地裁の鑑定人不動産鑑定士の賃料鑑定書で、新規実質賃料の積算賃料と比準賃料との間に40%強もの開差がある鑑定書を見て、私はびっくり、かつあきれてしまった。

 その賃料鑑定書は、同一建物の新規実質賃料が、

        積算賃料    3,100円/u
        比準賃料       5,300円/u

である。

 積算賃料が比準賃料の

                    3,100円
                    ────  = 0.58                               
                    5,300円

である。

              1−0.58=0.42

 40%強の賃料開差である。

 求める手法が違うから、開差が生じるのは当然であると主張するであろうが、その主張には正当性は無い。

 手法が異なるとはいえ、同一建物の同一価格時点の新規実質賃料の積算賃料と比準賃料の間に、40%強もの開差は生じない。

 生じるのが当り前のごとくの主張など通じない。
 
 両賃料は、同じ賃料が求められることはないが、かといって40%強のごとくの大きな開差は生じない。開差は小さい。

 3つの価格・賃料は、理論上は一致すると云われている。3つの価格・賃料とは積算価格(積算賃料)、比準価格(比準賃料)、収益価格(収益賃料)を言う。

 そのことについて、門脇惇氏が著書『不動産鑑定評価要説』P120(税務経理協会、昭和46年)で次のごとく述べられている。

  「3試算価格は、それぞれ、効用に見合う面、造る費用を償う面、一般に認められてその価格で取引される面、すなわち価格の三面性に照応するものであり、市場で揉まれ、淘汰されて、一つの正常価格に帰一するものであると解すべきこと。」

 3試算価格は、3試算賃料と読み替えられる。

 また武田公夫氏は、著書『不動産評価の知識』P133(日本経済新聞社、1993年)で、次のごとく述べられている。

  「各方式の適用によって求められた試算価格または試算賃料は、理論的には一致するはず」

と3価格の理論的一致を認める。

 実際には一致しないが、それは「資料不足など」によるのが原因でありと述べられる。

 本来一致すべき賃料が、40%強もの開差が生じることは、プロの不動産鑑定士の賃料鑑定なのかという疑問が生じてくるほどの開差である。

 両賃料は同額で求められることは無いが、開差はあっても少しである。

 それ故40%強の開差が生じることは、いずれかの求め方が根本的に間違っているか、或いは両方の求め方が共に間違っているという疑問が生じる。

 不動産鑑定士の判断事項の範囲内のことであるといって処理されるものであると済まされる開差ではない。

 40%強もの開差が何故生じたのか。計算間違いがあるのではないのか。考え方の間違いがあるのではないのかと両手法を再検討して、開差の原因を探らなければならない。

 原因は必ずある。そうでなければ、前記の先輩の二人の大先生が3価格・賃料は理論的に一致するはずといわれることは無い。門脇淳氏は、「市場で揉まれ、淘汰されて」と言い、武田公夫氏は「資料不足など」と言う。

 その鑑定書には、開差の検討をした形跡など全く見えない。

 40%強もの賃料開差があるのが当然のごとく鑑定書を書いてもらっては、賃料の増減額を争っている裁判当事者は大変迷惑する。

 「裁判官は、その辺りは充分考えて判断するから迷惑になどならない。」という主張が返ってくることが予測されるが、その主張もとんでもない反論である。

 裁判官は鑑定評価のプロでは無い。極端なことを言えばド素人で、何にも知らないというに等しい。

 裁判所任命の鑑定人不動産鑑定士は、知識豊富なその道のプロであり、偽証罪の罪に問われる鑑定証人の宣誓した上での鑑定であるから、その鑑定は絶対的に適正であると信じ、かつその認識で鑑定人の鑑定書を扱う。

 刑事事件で言えば、捜査のプロの警察が調査し、検察庁の検事が審査して書いた起訴状等の書類は、プロが判断し、作成した物であるから絶対的に適正であると信じ込んで刑事事件の裁判が行われる。それ故に有罪率99%を越える判決がなされることになる。

 民事事件の不動産事件においても、鑑定人不動産鑑定士の作成した書類は、検事が作成した書類と同様であるがごとく裁判官は考えている。

 積算賃料と比準賃料との間に40%強の開差があっても、それがおかしいとは裁判官は疑わない。それは鑑定人宣誓した不動産鑑定士は間違った鑑定をしないという上記考え方がある為である。

 鑑定人不動産鑑定士の鑑定書は正しいと頭から認識しているから、裁判結果は、その金額を採用して判決文が書かれる。

 法治国家である。判決には従わなければならない。

 それ故に、裁判所鑑定人不動産鑑定士は、しっかりした鑑定知識を身につけて、価格鑑定、賃料鑑定をしてもらわなければならないのである。

 裁判所選任の鑑定人不動産鑑定士ょ、賃料の勉強をしているのか。

 どんな教科書を読んで賃料評価の知識を身につけたのか。

 その教科書に40%強もの開差が生じても良いと書いてあったのか。

 賃料の評価について教えを受けた先輩不動産鑑定士は、40%強もの開差の賃料評価をしてもよいと教えたのか。

 不動産鑑定士の大きな役目は、適正な価格、適正な賃料を評価し表示することによって、人々の財産権を守るという役目がある。

 40%強の開差の賃料評価は、財産権を守っているのであろうか。その行為は、逆に財産権の侵害を引き起こしているのではなかろうか。

 同一建物の同一価格時点で、新規賃料において積算賃料と比準賃料との間に、40%強もの開差の賃料鑑定書を発行されて、甚だ迷惑している。

 賃料についてもっと勉強してくれないか。

 そして、不動産鑑定士の大きな役目とは何かを、もう一度しっかりと考えてくれないであろうか。
 



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