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1831)アパート収益とIRR値

1.アパートの内部収益率(IRR値)はどれ程か

 アパート建物の投下資本5240万円で、毎年賃料収入が年額310万円あり、その純収益は235万円という下記アパート計画があったとする。このアパートの内部収益率(IRR値)は如何ほどか。


投資額 -52400000
1期 2350000
2期 2350000
3期 2350000
4期 2350000
5期 2350000
6期 2350000
7期 2350000
8期 2350000
9期 2350000
10期 2350000
11期 2350000
12期 2350000
13期 2350000
14期 2350000
15期 2350000
16期 2350000
17期 2350000
18期 2350000
19期 2350000
20期 2350000
21期 2350000
22期 2350000
23期 2350000
24期 2350000
25期 2350000
26期 2350000
27期 2350000
28期 2350000
29期 2350000
30期 2350000
31期 2350000
32期 2350000
33期 2350000
34期 2350000
35期 2350000


2.内部収益率(IRR値)とは

 内部収益率とは、投資額とその投資物件より得られる純収益の現在価値の総和が等しくなる複利計算で求められる利率をいう。

3.算式

 当該投資額をC0とする。
 各年の得られる純収益をCnとする。
 内部収益率IRRをrとする。

 2乗、3乗等の記号表現が、当鑑定コラムでは上手く出来なく、(1+r)の2乗とか(1+r)の3乗の表現に成り、読みにくいですが、そこは辛抱して下さい。

 (1+r)の2乗とは、(1+r)×(1+r)のことです。

 又、√は最後の数値までかかるのですが、その記号表現が出来ていませんので、最後の数値までかかると理解して読んで下さい。

                 C1           C2               C3
        C0+─────  +─────    +  ──────            
                (1+r)      (1+r)の2乗         (1+r)の3乗

                C4                C5
            +──────   +  ─────      + ・・・・・・     
              (1+r)の4乗          (1+r)の5乗

                           Cn
         ・・・・・+ ──────   = 0                         
                      (1+r)のn乗

   * C0は、初期投資であるからマイナスで計上する。

4.具体的計算(2期まで それ以上は筆算では不可能であるため)

 初期投資額は100万円とする。
 1期の純収益は、50万円とする。
 2期の純収益は、60万円とする。

 これ以上の期数は、手計算では困難かつ不可能であるため、2年間の投資物件のIRRの値を求める。

 算式は下記である。

                  50            60             
    −100 +─────  +  ─────    = 0                      
               (1+r)        (1+r)の2乗

 上式の  1+r = X  とおく。

 上式は、

                  50              60
        −100 + ───   +    ────    = 0                   
                  X            Xの2乗

となる。

 両辺にXの2乗を乗じる。上式は下記の数式に変型される。

          -100Xの2乗 + 50X + 60 = 0

 2次方程式となる。

 2次方程式  aXの2乗+bX+c = 0
 
のX値は、次の算式で求められる。


                    -b±√(bの2乗−4ac)
            X= ───────────                             
                         2a

(解答1)


                    -50+√(50の2乗−4×(-100)×60)
            X=  ─────────────────                
                         2×(-100)

112.788 = ─────── -200
= マイナスの解になるから不可

(解答2)


                    -50−√(50の2乗−4×(-100)×60)
            X=  ─────────────────                
                         2×(-100)

−212.788 = ─────── -200
=   1.0639

 X値がプラスであるから、こちらを採用する。

       X = 1.0639

 1+r =Xとしたから、rは、

              1+r= 1.0639
                  r= 1.0639−1
         r= 0.0639≒0.064

である。IRRは6.4%である。

5.3期以上はパソコンのエクセルの計算による

 2期までは上記のごとく手計算で求められるが、3期以上になると手計算では不可能である。パソコンのエクセル内蔵のIRR関数を使って求めることになる。

 例えば、次のごとくの投資があったとする。

 初期投資額は100万円とする。
 各期の純収益は、下記であったとする。

             1期目    30万円
             2期目    12万円
             3期目    15万円
             4期目    20万円
             5期目    35万円

 算式は、

                 30            12              15
       −100+─────  + ─────   + ──────            
                (1+r)       (1+r)の2乗     (1+r)の3乗

                   20              35
            +──────  + ─────      =0                 
              (1+r)の4乗      (1+r)の5乗

である。

 この方程式を解くことになる。手計算では不可能である。

 エクセルのIRR関数を使用して、r を求める。

                A                B
     1        初期値            -100
     2        1期                 30
     3        2期                 12
     4        3期                 15
     5        4期                 20
     6        5期                 35
     7        IRR値

 ABは、エクセルのマス目の横列番号である。
 1、2、3・・・・はエクセルのマス目の縦行番号である。

 B7のマス目に、エクセル関数を次のごとく打ち込む。

             B7=IRR(B1:B6)

 そうすれば、0.037の数値が出る。

 これがIRR値で3.7%ということである。

 データ年数が20年期でも30年期でも、全て同じ手法で求められる。

 初期値は必ずマイナス(−)とすることを忘れ無いように。

6.アパート事業提案の上記1のIRR

 1のアパートの内部収益率は2.7%である。

7.1のアパートの現在価値

 上記2で、内部収益率とは、投資額とその投資物件より得られる純収益の現在価値の総和が等しくなる複利計算で求められる利率をいうと述べた。

 では1の純収益の現在価値を求めてみる。利率2.7%で各年の現在価値を求め、その総和を求める。下記である。


IRR値 0.027    
年目(期) 純収益 複利現価率 現在価値
1 2350000 0.97371 2288219
2 2350000 0.948111 2228061
3 2350000 0.923185 2169485
4 2350000 0.898914 2112448
5 2350000 0.875282 2056913
6 2350000 0.85227 2002835
7 2350000 0.829864 1950180
8 2350000 0.808047 1898910
9 2350000 0.786803 1848987
10 2350000 0.766118 1800377
11 2350000 0.745976 1753044
12 2350000 0.726365 1706958
13 2350000 0.707268 1662080
14 2350000 0.688674 1618384
15 2350000 0.670569 1575837
16 2350000 0.652939 1534407
17 2350000 0.635774 1494069
18 2350000 0.619059 1454789
19 2350000 0.602784 1416542
20 2350000 0.586937 1379302
21 2350000 0.571506 1343039
22 2350000 0.556481 1307730
23 2350000 0.541851 1273350
24 2350000 0.527606 1239874
25 2350000 0.513735 1207277
26 2350000 0.500229 1175538
27 2350000 0.487077 1144631
28 2350000 0.474272 1114539
29 2350000 0.461803 1085237
30 2350000 0.449663 1056708
31 2350000 0.437841 1028926
32 2350000 0.42633 1001876
33 2350000 0.415122 975537
34 2350000 0.404208 949889
35 2350000 0.393581 924915
合計 82250000   52780892


 1のアパートの現在価値は、52,780,892円である。投下資本は52,400,000円であった。

 金額に38万円程の開差が生じたが、これは私が複利現価率の数値を小数6位までとしたために生じたものと思われる。小数6位と制限を掛けなければ現在価値は、投下資本と同額の52,400,000円の金額になると思われる。

 上記の計算実例から、内部収益率とは、投資額とその投資物件より得られる純収益の現在価値の総和が等しくなる複利計算で求められる利率ということが、具体的に理解出来たと思う。

8.1のアパートモデルの実現妥当性

 例に挙げた1のアパートの実現妥当性はあるであろうか。

 35年間賃料が同じということは有り得るのか。

 これから人口が減っていく。

 そうした中で賃料が下がらずにいることは出来るであろうか。

 アパートの収入計算は満室状態を考えている。空室が全く発生しないという想定に現実性があるだろうか。

 サブリースであれば、空室でも賃料の保証があるという反論があろうが、その家賃保証の論理は、最高裁のサブリース判例で打ち破られている。アパートのサブリース事業は、最高裁のこの判例を逆利用しているようである。

 上記純収益は、建物だけで得られるものではない。建物が建つ土地が必要であり、土地の収益も含まれていることから、投下資本としては、土地価格も考えられ無ければならない。上記1のアパート例は土地価格が全く無視されている。

 土地価格は0円と言う訳には行かない。

 土地価格を考えると、果たしてアパート建設して投資することが妥当かどうか。

 建物を建てるには資金が必要である。

 その資金は、銀行からの長期アパートローン借入によるが、借入金を返済するに苦渋する事態に直面することもあり得る。

 その時、最悪の場合、債務不履行による抵当権の実行により競売に付され、所有の土地建物全てを失い、なおかつ、債務が残り、他の所有不動産を売却して残り債務を返済しなければならないという局面に遭遇することになりかねない。

 これらを考えると、安易に、サブリースアパート経営で相続税対策にと言う話に乗って火傷しないように。

 (2018年9月18日ホテルニュオータニの小さい部屋で開かれた田原塾第66回の講話レジュメに加筆して)


  鑑定コラム131)
「サブリースの賃料減額請求を認めた最高裁」

  鑑定コラム1700)「田原塾60回 3人の幹事に感謝」


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