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2004)公租公課倍率法と判決(公租公課倍率)

 鑑定コラム2003)で、2019年9月13日、東京赤坂見附のホテルニューオータニの小さな会議室で開かれた田原塾9月会(第72回)で話した「公租公課倍率法と判決」のレジュメの前編を記した。今回はその続編の後編を記す。

 前編は、判決に現れた公租公課倍率法の判例の分析説明である。
 後編は、2018年における東京23区住宅地の公租公課倍率についてである。

 後編を下記に記す。

*****


        公租公課倍率法と判決

不動産鑑定士 桐蔭横浜大学法学部客員教授                      田原拓治

*****

後編

7.一般借地権の住宅地の公租公課倍率

 平成5年に、私は主として平成2年、3年の鑑定委員会の付随処分のデータによって「地代と公租公課の関係について」(『東京鑑定会報』第44号、(社)日本不動産鑑定協会東京会)の論文を発表した。(資料2 省略)

 そこにおいて、公租公課と地代の間には、

        Y=339.517+2.115X

Y:地代/月・坪円 X:公租公課/月・坪円

の関係があると分析した。

 その後の地代の変動率、固定資産税の変動率を調査してみた。

 A 地代の変動率

 日税不動産鑑定士会の『継続地代の実態調べ』平成3年版、平成30年版によれば、地代の推移は次の通りである。東京住宅地の地代である。

                    坪当り

平成 3年 713円 〃 30年   970円

 平成3年〜30年までの地代の変動率は、

                     970
                   ───  = 1.360≒1.36                           
                     713
である。

 B 土地固定資産税の変動率

 東京都主税局発表の「東京都税務統計年報」によれば、23区の土地固定資産税は、

             平成 3年           414,739百万円
             〃 29年(30年データとする)    638,285百万円  (注)

である。(注)平成30年の統計は未だ発表されていないので、平成29年発表データを採用する。

 平成3年〜30年までの変動率は、

                   638,285
                   ────  = 1.5390≒1.54                        
                   414,739
である。

 C 平成30年の公租公課倍率

 平成2年の地代倍率式で、坪500円の公租公課の地代は、

                Y=339.517+2.115×500
                  =1397.02円

と求められる。平成2年の公租公課は500円、地代は1,397円ということである。

 その後の地代変動率、公租公課変動率を乗じて30年の地代、公租公課を求める。

                公租公課 500円×1.36=680円
        地代      1397.02×1.54≒2151円

 公租公課倍率とは、

                 地代
                 ────  =公租公課倍率                       
                 公租公課
である。

 平成30年の公租公課680円の地代倍率は、

         2151
                ────   =3.163≒3.16                       
                  680
と求められる。

 同様な求め方で、次表のごとく地代倍率を求める。
  

平成2年公租公課 平成2年地代 平成30年地代 平成30年公租公課 倍率
40 424.12 576.8 61.6 9.36
60 466.42 634.33 92.4 6.87
80 508.72 691.86 123.2 5.62
100 551.02 749.39 154 4.87
120 593.32 806.92 184.8 4.37
140 635.62 864.44 215.6 4.01
160 677.92 921.97 246.4 3.74
180 720.22 979.5 277.2 3.53
200 762.52 1037.03 308 3.37
220 804.82 1094.56 338.8 3.23
240 847.12 1152.08 369.6 3.12
260 889.42 1209.61 400.4 3.02
280 931.72 1267.14 431.2 2.94
300 974.02 1324.67 462 2.87
320 1016.32 1382.2 492.8 2.8
360 1100.92 1497.25 554.4 2.7
380 1143.22 1554.78 585.2 2.66
400 1185.52 1612.31 616 2.62
420 1227.82 1669.84 646.8 2.58
440 1270.12 1727.36 677.6 2.55
460 1312.42 1784.89 708.4 2.52
480 1354.72 1842.42 739.2 2.49
500 1397.02 1899.95 770 2.47
520 1439.32 1957.48 800.8 2.44
540 1481.62 2015 831.6 2.42
560 1523.92 2072.53 862.4 2.4
580 1566.22 2130.06 893.2 2.38
600 1608.52 2187.59 924 2.37
620 1650.82 2245.12 954.8 2.35
640 1693.12 2302.64 985.6 2.34
660 1735.42 2360.17 1016.4 2.32
680 1777.72 2417.7 1047.2 2.31
700 1820.02 2475.23 1078 2.3
720 1862.32 2532.76 1108.8 2.28
740 1904.62 2590.28 1139.6 2.27
760 1946.92 2647.81 1170.4 2.26
780 1989.22 2705.34 1201.2 2.25
800 2031.52 2762.87 1232 2.24
820 2073.82 2820.4 1262.8 2.23
840 2116.12 2877.92 1293.6 2.22
860 2158.42 2935.45 1324.4 2.22
880 2200.72 2992.98 1355.2 2.21
900 2243.02 3050.51 1386 2.2
920 2285.32 3108.04 1416.8 2.19
940 2327.62 3165.56 1447.6 2.19
960 2369.92 3223.09 1478.4 2.18
980 2412.22 3280.62 1509.2 2.17
1000 2454.52 3338.15 1540 2.17
1100 2666.02 3625.79 1694 2.14
1200 2877.52 3913.43 1848 2.12
1300 3089.02 4201.07 2002 2.1
1400 3300.52 4488.71 2156 2.08
1500 3512.02 4776.35 2310 2.07
1600 3723.52 5063.99 2464 2.06
1700 3935.02 5351.63 2618 2.04
1800 4146.52 5639.27 2772 2.03
1900 4358.02 5926.91 2926 2.03
2000 4569.52 6214.55 3080 2.02



D 公租公課倍率と公租公課のグラフ

イ、倍率グラフ

 縦軸に公租公課倍率、横軸に公租公課をとり、数値をプロットすると、下記の曲線のグラフが描かれる。


公課倍率1 title=


ロ、log10グラフと方程式

 縦軸に倍率(log10Y)、横軸に公租公課(log10X)をとって、上記平成30年の公租公課と倍率をグラフに図示すれば、下記である。


公課倍率2


 エクセルの計算による近似算式は、累乗算式

                   Y=2.7454Xの−1.813乗

が、決定係数0.9906と最も近似する。

E 公租公課に対する地代倍率のまとめ

 上記Cで求められた倍率を少し大枠でまとめると次の通りである。

 この倍率表は、地代の妥当性を判断する場合には、一つの指標或いは参考になるのではないかと思われる。但し東京23区の住宅地地代による分析である。

    公租公課                      地代倍率
         月・坪円                        倍率

100〜150円 6.0     151〜200円 4.5 201〜300円 3.8     301〜400円 3.2 401〜500円 3.0 501〜600円 2.8 601〜700円 2.6 701〜800円 2.5 801〜1000円 2.4 1001〜1200円 2.3 1201〜1700円 2.2 1,701〜2,500円 2.1 2,501〜3,000円 2.0

 この表から、例えば公租公課が月額坪300円であった場合、倍率は201円から300円の欄から3.8と求められるから、

       300円×3.8=1140円

地代は月額坪1140円ということになる。

資料1 当該判例 省略
資料2 田原論文「地代と公租公課の関係について」省略
資料3 著書引用 省略

                         以 上


  鑑定コラム2003)「公租公課倍率法と判決(判例の分析)」


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