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2048)地下街の店舗家賃

 地下街の店舗家賃はどれ程であろうか。

 5年程前の話であるが、北海道札幌の駅前大通りに面している店舗を借りている賃借人の代理人弁護士より、東京の私の所に、大通りに面して借りている店舗の賃料を鑑定して欲しいという依頼があった。

 ビル所有者が、大巾に賃料値上げ要求して来たことへの対抗策として、適正な継続賃料の鑑定評価をして欲しいと云うことであった。

 札幌駅前大通りは、札幌駅より南の大通り公園・すすき野を結ぶ道路であり、それに面しての店舗は店舗地として立地は悪く無い。

 ビルの地上の店舗を借りている依頼者である賃借人に話しを聞くと、その好立地も見た目の好立地の様であった。店舗の売上高は減っていた。

 地上の店舗賃借人は、下記のごとく話していた。

 「駅前大通りの下に、札幌駅〜大通公園まで地下街が出来た。そのため地上の駅前大通りの歩道を利用する人が少なくなり、来店者が大巾に減ってしまった。特に冬はひどい。そうした事も考えず、ビルオーナーは賃料の値上げを要求する。」と。

 ショッピングセンターを経営する企業の団体として、「一般社団法人日本ショッピングセンター協会」(以下「SC協会」とする。)という団体がある。
 
 そのSC協会が、協会員が借りている或いは貸しているショッピングセンターの賃料を集計して、『SC賃料・共益費』という調査報告書を発行している。

 その調査報告書の中に、地下街の賃料が発表されている。

 店舗を物販店舗、飲食店舗、サービス店舗と3つに分類する。

 3分類店舗の各地下街の賃料を、所在する地域を中心地域(大都市・中都市)、周辺地域に地域分類して、それぞれの地下街の店舗賃料を発表している。

 3分類店舗の地下街の賃料は、下記である。単位は坪当りである。時点は2017年時点である。


地域 物販店舗 飲食店舗 サービス店舗
大都市中心地域 39689 36158 34151
中都市中心地域 26224 28434 -
周辺地域 12391 17443 10881


 前掲同書によれば、大都市等の用語について、次のごとく説明する。

 (大都市) 政令指定都市(札幌・仙台・さいたま・千葉・東京区部・川崎・横浜・名古屋・京都・大阪・神戸・広島・北九州・福岡)

 (中都市) 上記都市を除く、人口15万人以上の都市

 (中心地域) 人口15万人以上の都市で、商業機能が集積した中心市街地

 (周辺地域) 上記中心地域以外の全ての地域

 大都市の中心地域の地下街の賃料を見ると、物販店舗賃料を100とすると、飲食、サービスの店舗賃料は、下記である。

               物販店舗賃料   100
        飲食店舗賃料      91  
               サービス店舗       86

 物販店舗賃料は、大都市中心地域では飲食、サービス店舗の賃料よりも上位にあるが、中都市中心地域、周辺地域にあっては、飲食店舗の賃料が一番高い。

 大都市中心地域の地下街の物販店舗の賃料は、坪当り39,689円であるが、地下街以外の物販店舗の賃料と比較するとどの様な水準になるであろうか。

 同調査報告書に、商業ビル、駅ビル、高架下、複合ビルの賃料が記されているのでそれら賃料と比較する。(括弧内は地下街物販店舗賃料を100として場合の評点である。)

     商業ビル物販賃料    坪当り40,611円 (102)
     駅ビル物販賃料     坪当り42,083円 (106)
     地下街物販賃料     坪当り39,689円 (100)
     高架下物販賃料     坪当り24,046円 ( 61)
     複合ビル物販賃料    坪当り23,507円 ( 59)

 地下街物販賃料は、商業ビル物販賃料より少し安い水準にある。この賃料の差は、地階が地下街に面している地下1階店舗を有するビルの階層別効用比に使えるであろう。

 地下街の物販店舗の支払賃料が分からない時は、近くの地上の商業ビルの1階の店舗の支払賃料を査定し、その賃料に0.98(100/102=0.98)を乗ずれば、比準支払賃料が得られる。

 駅ビルと商業ビルの店舗賃料の差は、
         106/102=1.04
4%である。

 駅ビルの1階店舗に隣接する商業ビルの1階店舗の支払賃料は、駅ビルの1階店舗に対して0.96(1/1.04=0.96)の賃料と云える。


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