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21)セル生産方式

 日本の産業の空洞化は凄まじいスピードで進んでいる。平成13年1年間で上場企業の国内工場閉鎖は120以上を超え、人員削減は電機・情報大手だけで10万人を越すという。

 1980年代には売上高営業利益率12%以上を誇り、経営の神様と称されていた松下電器ですら1万人の人員削減を行い、2002年3月期には上場以来初めて赤字となった。営業損益は半端な金額ではない。2100億円という巨額な赤字である。今や 松下 に昔日の面影はない。

 「世界で勝ち組といえる日本企業は、トヨタ自動車、ホンダ、シャープ、武田薬品、キャノンぐらい」と堺屋太一はいう。

 これらの経済動向は末端の小さな当鑑定の仕事にも影響を与え、廃棄した工場地、倒産企業のたたき売りに近い土地を鑑定評価していても、仕事としてはちっとも面白くない。気分的に元気が出てこない。

 日本産業なんとか立ち直ってくれと願っているが、その処方箋の一つを山田日登志氏(PFC産業教育センター所長、日経2001.12.20)が述べている。
 その考えの大要を紹介する。

 日本産業復活の道は「トヨタ生産方式」の採用で、それをベースにし、より進化させた「セル生産方式」であるという。「一人屋台生産」とも呼ばれ、一人が製品を最初から最後まで組み立てるやり方という。脱ベルトコンベアの考えである。
 ソニー、キャノン、NECの工場も採用しているという。

 ヘンリー・フオードが導入したベルトコンベアによる大量生産方式は、前工程押し出し方式であり、これが工業製品の生産方式の主流となった。
 このやり方とは全く反対の製造理論をうち立てたのがトヨタ自動車で、それは「カンバン方式」と呼ばれている。

 今から30年程前、トヨタの「カンバン方式」という方法がさっぱりわからず、政府系金融機関に勤めていた大学時代の友人にどういう方式なんだと聞いた。
 そしたら、「名前からわかるハズがない。わからないようにワザと妙ちくりんな名前をつけているのだ」といい、おおよそのやり方を説明してくれた。今それは「ジャスト・イン・タイム」と呼ばれ行き渡っている。  走行トラックを倉庫代わりに使っているとか、交通渋滞の原因だと非難された。

 山田氏は言及していないが、「ジャスト・イン・タイム」は製造工場のみに使用されているのではない。「雇用」の業界にも採用され、人材派遣会社がこのシステムを積極的に取り入れている。大企業の中には正社員をある派遣会社の社員に転籍させ、そこから自社に派遣させて業務をさせようとしている。
 こう考えると、「SPC」という特定目的会社を設立し、そこに自社ビルを売り払い、不動産証券化し、もと自社ビルだったビルを賃借入居するリースバックも、なにやら「ジャスト・イン・タイム」ではないのか。

 「セル生産方式」のほかにも優れたやり方があるかもしれないが、何はともあれ一人勝ちのトヨタのやり方を採用し、日本企業は立ち直って欲しい。
 この先、失業者がドンドン増え、土地価格の下落が今後10年も続いたらたまらない。

 30年前、(社)日本不動産鑑定協会東京会(現在の(社)東京都不動産鑑定士協会)主催のニッサン追浜(「おっぱま」と読む)工場を見学し、導入したばかりのコンピュータ制御による自働(自動ではない。自「働」である。)溶接ロボット工程を見て度肝を抜かされた。そして、日本企業の将来性を確認した。
 どこかの地域会の不動産鑑定士協会で「セル生産方式」の工場見学を企画してくれないだろうか。私は仕事をほっぽりだして参加する。協会の妙ちくりんな「単位」など必要ない。

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