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216)継続賃料の講演

 2005年5月19日東京のお茶の水の中央大学駿河台記念会館で、プログレス社主催の賃料の求め方の第2回の実務セミナー、『継続賃料』についての講演の講師を無事終えることが出来た。

 『新規賃料』の講演に続くセミナー講演である。
 『新規賃料』の講演の時と同じく、参加者は北は北海道の札幌、南は沖縄から来て下さった。
 参加者は圧倒的に不動産鑑定士が多かったが、弁護士の先生も参加して下さった。

 継続賃料とは何だと思われる方が多いと思われるが、建物の賃貸借契約が継続している場合の賃料を「継続賃料(継続家賃)」という。
 その賃料が、賃貸借した新規賃料と違うのかという疑問があろうと思われるが、新規賃料とは違うのである。

 新規契約した賃料のまま、家賃の改定がなく賃貸借契約が続いておれば、それが一番である。しかし、賃貸借契約が長く続いていると、周辺の賃料の値上がり或いは値下がり、又、土地価格の高騰や下落、公租公課の上昇、その他経済事情の変動が生じ、借りている賃料と均衡がとれない状態になってくる。

 こうした状態になると、建物の所有者の大家さんが賃料の値上げ要求を賃借人にしてくる。或いは建物を借りている賃借人が賃料の値下げ要求を賃貸人にするようになる。

 それは個人の借りている貸家・アパート・マンションの家賃のみで生じる現象ではない。
 企業が借りている事務所、倉庫、工場、店舗等の家賃でも生じる。

 貸主が大手不動産会社や借りている企業が大企業の場合には、賃料のそうした紛争は生じないであろうと思われがちであるが、その様な事は無い。

 貸主が日本を代表すると思われる不動産会社であっても、又、借主がこれまた日本を代表すると思われる大企業であっても、建物の賃貸借契約がある場合には、賃料の増減額の紛争はあるのである。

 「たかが家賃」と思われるかもしれないが、その「たかが」が無視出来ない存在になってくる。
 企業が利益が出ている間は、家賃の負担は費用支出の中で問題視されないが、利益が出ない状態になってくると、賃料の支払いの負担がじわりと効いて来て「たかが」と言って無視出来ない存在になってくるのである。

 企業の経営者である社長が、総務或いは経理の人に「なんとかせい。」と言いだし始める。
 それまでは、支払っている家賃など他人事と思っていた企業の総務或いは経理の人は、改めて家賃の支出額の大きな存在に気づくことになる。

 最近は、不動産証券化に伴いビルの賃料を支払源とするリートや私募債フアンドが出てきた。フアンド会社は、ビルを高く売り払ってもうけようとする。その手段の一つとして賃料を高くして利回りを良くする事を考える。その為既存入居者の継続賃料を高くしょうと画策し、賃料の値上げを賃借人にぶっつけてくる。借地借家法があるというのに、そんな法律など無頓着に賃料の値上げを要求してくる。
 賃借人にとってはたまったものでは無い。

 継続賃料の求め方には、差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法等の手法がある。

 講演ではそれぞれの手法の求め方の説明は勿論するが、私が失敗した苦い経験や、私の今迄の経験で見知った多くの不動産鑑定士の間違える個所を、例を挙げながら説明した。
 また、手法そのものの誤りも指摘した。

 現在の『不動産鑑定評価基準』の賃料基準の部分は決して完全なものではない。ある部分では『不動産鑑定評価基準』の通りに求めると、現実から遊離した誤った賃料を求めかねない場合が生じる。
 それを知らずに『不動産鑑定評価基準』の通りに評価しているから、自分の家賃の鑑定は適正だと主張する不動産鑑定士があとをたたない。

 これを放置していると、一般社会からの信頼を失いかねない。
 賃料評価の基本教育が、家賃評価を行う不動産鑑定士に必要では無かろうかと思いたくなる。
 賃料評価書に「不当鑑定」というレッテルが貼られ、挙げ句に不当鑑定という懲戒処分が出される前に。

 前回の新規家賃のセミナーの際には、90名近い参加者があり、参加者に座席で窮屈さを感じさせた事を反省し、セミナー主催者は、今回の継続賃料の講演では座席にゆったりした余裕をとらせ、セミナーを2回に分けて行う事にした。
 2005年6月2日にも、同じ会場で、同じ内容の講演をすることになった。
 しかし、4時間の講演はきつい。体力は勿論だが、話す内容にごまかしが効かない。講演の内容の4〜5倍の専門知識と内容の理解を持っていないと出来ないものだとつくづく感じた。

 

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