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日本のJリートの代表銘柄の一つであるジャパンリアルエステート投資法人が、2005年1年間で9つの賃貸ビルを購入した。
ジャパンリアルエステート投資法人のホームページのプレスリリースより、9件の購入ビルの利回りを分析してみる。
購入賃貸ビルは次の9件である。
bP 2005年1月 山王グランドビル(千代田区永田町2丁目) 1966年築
購入価格 102億円
年間賃料収入 926百万円
総賃貸可能面積 21,332平方メートル
2 2005年1月 定禅寺ビル(仙台市青葉区) 1993年築
購入価格 10億円
年間賃料収入 135百万円
総賃貸可能面積 5,044平方メートル
3 2005年2月 ハーモニータワー(中野区本町1丁目) 1997年築
購入価格 85億円
年間賃料収入 738百万円
総賃貸可能面積 10,930平方メートル
4 2005年3月 銀座三和ビル(中央区銀座4丁目) 1982年築
購入価格 168.3億円
年間賃料収入 747百万円
総賃貸可能面積 4329平方メートル
5 2005年3月 菱進イーストミラービル(中央区銀座3丁目) 1998年築
購入価格 53.535億円
年間賃料収入 274百万円
総賃貸可能面積 2875平方メートル
6 2005年3月 八王子第一生命ビル(八王子市明神町3丁目) 1996年築
購入価格 33億円
年間賃料収入 356百万円
総賃貸可能面積 6336平方メートル
7 2005年4月 二番町ガーデン(千代田区二番町) 2004年築
購入価格 147億円
年間賃料収入 936百万円
総賃貸可能面積 9316平方メートル
8 2005年8月 九段北プロジェクト(千代田区九段北1丁目) 2006年予定
購入価格 815.555億円
年間賃料収入 3100百万円
総賃貸可能面積 25637平方メートル
9 2005年9月 東京オペラシティビル(新宿区西新宿3丁目) 1996年築
購入価格 93.5億円
年間賃料収入 901百万円
総賃貸可能面積 9244平方メートル
3.6.7.9は共有持分の購入である。
年間賃料収入÷取得価格=粗利回り(グロス利回り)
として、粗利回り(グロス利回り)を求める。
必要諸経費(減価償却費を含めない)の割合を、35%として、
粗利回り×(1 − 0.35) = 還元利回り
とする。
(年間賃料収入÷総賃貸可能面積)÷12=賃料単価
取得価格÷総賃貸可能面積=賃貸面積平方メートル当り価格
として各数値を求めると、下記の通りである。
a@ 賃料単価 賃貸面積価格 粗利回り 還元利回り
1 3,617 478,000 0.091 0.059
2 2,230 198,000 0.135 0.088
3 5,627 778,000 0.087 0.057
4 14,380 3,888,000 0.044 0.029
5 7,942 1,862,000 0.051 0.033
6 4,682 521,000 0.108 0.070
7 8,373 1,578,000 0.064 0.042
8 10,077 3,181,000 0.038 0.025
9 8,122 1,011,000 0.096 0.062
平均 0.079 0.052
標準偏差 0.0305 0.0198
上記貸ビルのうち、1は1966年築の建物で築後39年経過していることから利回り分析より除外する。
2は仙台市、6は八王子市にあり、東京23区外にあることから利回り分析から除外する。
残った6件の還元利回りは次のごとくである。
3 0.057
4 0.029
5 0.033
7 0.042
8 0.025
9 0.062
平均 0.041(標準偏差0.0139)
2006年1月の都心の貸ビルの還元利回りの平均は、4.1%であり、標準偏差1倍の範囲で考えると、
0.027 〜 0.055
の還元利回りである。
標準偏差1倍の還元利回りの下限が、3%を切って2%台に突入している。
前記購入の貸ビルデータの4、8を見ても、2.9%、2.5%の還元利回りである。
およそ1年半前の2004年8月に、同じジャパンリアルエステート投資法人購入の2004年の貸ビル7件の分析を行った。
その分析記事は、本鑑定コラム179)「ある投資法人の購入ビルの利回り」として記事にしている。
その記事において、山の手の貸ビルの還元利回りの平均は4.9%であり、標準偏差の1倍の範囲の利回りは、
4.1%〜5.7%
と分析した。
その時の購入ビルの最低の還元利回りは4.0%であった。3%台のものは無かった。
約1年半後の2006年1月の分析では、平均は4.1%となり、標準偏差1倍の下限は2.7%になった。
2.7%の利回りは、減価償却費込みの利回りである。減価償却費を経費計上した場合の利回りは、その分純収益が少なくなることから更に低くなる。
購入価格は、不動産鑑定評価のDCF法に基づいて決められているようである。
このDCF法が、当該建物の賃料収入の純収益の70%までという無理のない返済可能な借入金返済額から逆算した借入金を考えて求められているかどうか分からないが、もし借入金を考えずに価格が求められていたとしたら、借入金の金利が費用加算されることになり、利回りは更に低下することになる。
減価償却費、借入金利が費用計上されることになったら、還元利回りは一体どういう数値になることやら。
まさに、「利回りは危険ゾーンに入った」と判断せざるを得ないであろう。
何もこの現象はジャパンリアルエステート投資法人の購入貸ビルのみに生じている現象では無かろう。
他の投資法人の購入貸ビルでも生じている現象であろうと推定出来る。
何故かならば、それだけの高い価格、逆を云えば低い利回りで無いと、都心貸ビルが激しい競争によって購入出来ない故に生じた結果現象であるから。
標準偏差1倍の範囲の下限利回りは、約1年半で、
4.1% − 2.7% = 1.4%
の還元利回りの下落が生じた。
たかが1.4%の利回りというが、還元利回り1.4%の下落は何を意味しているのかを別の見方から判断すると、とんでもない土地価格現象を引き起こしていることがわかる。
賃料、建物価格等他の要因変動が無いものとすると、1.4%の利回りの下落は、
4.1% ÷ (4.1% - 1.4%)= 1.518 ≒ 1.52
土地価格が1.52倍になったことを意味する。
即ち、ここ1年半の間に都心の一部貸ビルの商業地の土地価格は、52%の上昇していることになるのである。
ここ2、3年で都心の地価は下げ止まったと云われており、平成2年以降下落し続けていた地価は、やっと下げ止まったと思っていたら、逆に大幅な値上りが一部の土地で、知らない間に急速に進行していたのである。
地価の2〜3%程度の上昇ならば、経済発展と許容されるであろうが、年間20%も30%もの地価の急激な上昇は国民感情は許さないであろう。
いつか来た道を再度味わうことは勘弁願いたい。
いずれ、原因は何だと騒がれることになり、その矛先はどこに行くのであろうか。
上記で引用した鑑定コラムについては、下記にあります。
鑑定コラム179「ある投資法人の購入ビルの利回り」
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