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179)ある投資法人の購入ビルの利回り

 Jリートの一つであるジャパンリアルエステート(JRS)という投資法人がある。
 JRSの会社案内によれば、JRSは「良質なオフィスを保有する大型投資法人で、三菱地所、東京海上火災保険、三井物産、第一生命」が運営に関与しているという。格付け会社のS&PではA+、ムーディズではA2であるという。

 そのジャパンリアルエステートが、今年(2004年)に入ってから凄まじい勢いで賃貸ビルの購入を行っている。
 ジャパンリアルエステートのホームページのプレスリリースより、購入物件をピックアップして検討してみる。

 直近の購入は、平成16年(2004年)8月25日、東京新宿区西新宿3丁目にある親和ビルディングという賃貸ビルを78.3億円で購入した。平成元年建築で、年間賃料収入は4.87億円、総賃貸可能面積は6,265uの物件である。

     粗利回り=年間賃料収入÷購入価格
とすると、同物件は、
     4.87億円÷78.3億円=0.062
で、粗利回り6.2%である。

 必要諸経費率を35%とすれば、
     6.2%×(1−0.35)=4.0%
還元利回りは4.0%である。

 賃料は、
     487,000,000円÷12÷6,265u≒6,480円
u当り6,480円である。

 他の賃貸ビルの価格と比較するに便利な、賃貸面積u当り価格は、
     7,830,000,000円÷6,265u≒1,250,000円
125万円である。
 
 以下次の賃貸ビルを購入している。
 ・平成16年7月26日、池袋YSビル(豊島区南池袋1丁目)、平成元年築、購入価格45億円、年間賃料収入4.03億円、総賃貸可能面積5,175u

 ・平成16年6月30日、東五反田1丁目ビル(品川区東五反田1丁目)、平成16年築、購入価格55億円、年間賃料収入3.57億円、総賃貸可能面積5,205u

 ・平成16年4月1日、代々木1丁目ビル(渋谷区代々木1丁目)、平成15年築、購入価格87億円、キャプレート5.7%

 ・平成16年3月22日、NHK広島放送センタービル(広島市中区)、平成6年築、購入価格13.25億円、年間賃料収入1.35億円、総賃貸可能面積5,470u

 ・平成16年3月17日、日本ブランスウイックビル(渋谷区千駄ヶ谷5丁目)、昭和49年築、購入価格66.7億円、年間賃料収入6.74億円、総賃貸可能面積7,347u

 ・平成16年3月12日、恵比寿ネオナート(渋谷区恵比寿4丁目)、平成6年築、購入価格3.6億円、年間賃料収入0.27億円、総賃貸可能面積237u

 ジャパンリアルエステートが、今年(2004年)1月より購入した7つの賃貸ビルを、前記親和ビルで分析したごとく、粗利回り、還元利回り、u当り賃料、賃貸面積u当り価格を分析すると、下記の通りである。

ビル名               粗利回り 還元利回り u賃料円 賃貸u価格円 
親和ビル                0.0622    0.040     6,478     1,250,000 
池袋YSビル            0.0896    0.058     6,490       870,000 
東五反田1丁目ビル       0.0649    0.042     5,926     1,100,000 
代々木1丁目ビル                   0.057    
NHK広島センタービル  0.1023    0.066     2,057       240,000 
日本ヴランズウイック    0.1010    0.066     7,645       910,000 
恵比寿ネオナート        0.0750    0.049     9,494     1,520,000

 データ分析から、粗利回りは6.2%〜10.2%である。
 必要諸経費を35%として還元利回りを求めると、還元利回りは4.0%〜6.6%である。

 還元利回りが6.6%と他の利回りより高い物件は2つある。
 一つは広島のNHK放送センターで、東京以外の広島の物件である。
 他の一つは昭和49年築の建物である。築年数が古い建物は還元利回りが高い。

 上記2件を除いた場合の平均還元利回りは4.9%(標準偏差0.0074)である。
 これから築年の古さによるプレミアムは1.7%となる。
 東京と広島の地域によるプレミアムも1.7%ということになる。

 標準偏差1倍の範囲で考えると、4.1%〜5.7%が、2004年8月現在の東京山の手の貸ビルの還元利回りの水準ということか。

 上記ジャパンリアルエステート投資法人が購入した7つの賃貸ビルは、全て不動産鑑定書が付けられている。不動産鑑定士の誰が鑑定したというのが本来の責任の所在ある報告の仕方であると思うが、それは成されず、不動産鑑定事務所名・鑑定会社名の表示によるのみである。

 評価した人が、まさか昨日今日不動産鑑定士になった人ではなかろうが、一体どんな実力を持った、分析力を持った不動産鑑定士が評価したのかさっぱり分からない。ただ言えることは、私のごとく個人で事務所を開いている不動産鑑定士ではなく、業界では大手(何を持って「大手」と称するか、その基準は知らないが)と言われる不動産鑑定会社の鑑定であるということだけである。

 不動産鑑定士の誰が評価したのかが重要であって、鑑定書を発行している鑑定事務所・会社の名前などあまり重要性を持たないと私は思うが。

 大企業社会中心の世間では、いや評価を行った鑑定事務所・会社の名前こそが必要で、重要であると言う人、思っている人、企業の方は必ずいるであろうと思われる。

 しかし、裁判の鑑定を長く行って、原告・被告それぞれの書類に添付されてくる不動産鑑定書や、裁判所の指定する鑑定人の鑑定書を多く見て、内容を検討し、或いは再評価してくると、その様な考え方は幻にしかすぎないと分かる。

 上記ジャパンリアルエステート投資法人が購入した7つの賃貸ビルの粗利回り、還元利回り、u当り賃料、賃貸面積u当り価格によって、どのビルの価格が高いか、安いか、妥当かを自分で考え、或いは新しい価格分析方法を見つけ出すことも面白いと思われる。時間があったら頭を巡らしてみてください。

 それはさておき、上記の還元利回り等が分かることは、取引事例の情報公開がなされたことによるものである。
 取引事例の情報公開法はどうした事由によるのか成立せず、廃案になってしまったが、今回の投資法人の購入ビルの取引事例の情報公開は、これが個人の秘密の暴露とか基本的人権の侵害に相当する出来事であろうか。


 ジャパンリアルエステート投資法人が2005年に購入したビルの購入価格、利回りに付いての記事は、下記の鑑定コラムにあります。
 鑑定コラム   257) 「危険ゾーンに入った都心一部の貸ビル利回り」

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