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2579) 新規賃料の積算賃料と比準賃料の割合分析論文がEvaluation76号に掲載
不動産鑑定評価の理論雑誌である『Evaluation』76号が、2023年4月10日にプログレス社(東京新宿区 電話03−3341−6573)より発売された。料金は税別で2,000円である。
発売された『Evaluation』76号には、7つの論文が掲載されている。
その一つに私の『新規賃料の積算賃料と比準賃料の賃料額の関係について』(同誌P36)の論文が掲載された。
不動産の価格・賃料は、不動産の持つ特性を反映して、3つの側面から分析して求めることとなっている。
そして、その3つの側面から分析された価格・賃料は、理論上は、同一価格・同一賃料、即ち一致すると云われている。
しかし、資料の不足等で現実には、3つの価格・賃料は一致しない場合が多いと云われている。
私の論文は、新規賃料の3つの賃料のうち、積算賃料と比準賃料の関係を分析し、一致するかどうか、一致しなくてもその合理的乖離巾の限界は存在するのでは無かろうかと考え、裁判訴訟の判決文に顕れた新規賃料の積算賃料と比準賃料をデータとして、両賃料の関係を分析したものである。
収益賃料は、企業収益からの不動産に帰属する部分の把握が難しく、未だ十分研究されていなく、実務において殆ど行われていない。
多くの自然現象、経済現象、社会現象及び人間の行為は、多くのデータ分析によると正規分布に従うと云う。
何故正規分布に従うかと云う事の原因理由は、統計学者にも現在のところ分かっていない。
積算賃料、比準賃料も人間の行為によって求められたものであり、その数値より求められた
比準賃料÷積算賃料
の割合も、正規分布に従うであろうと推測出来ることから、正規分布に従うとする。
日本全国の裁判所で、毎日多くの家賃の訴訟がなされている。多くの賃料訴訟は和解で解決されるものが大半で、判決に至るものは多くない。
その賃料訴訟の判決文は、不動産鑑定士の裁判所鑑定人の賃料鑑定書に基づいて殆どなされる。
判決事例として法律雑誌に紹介された不動産鑑定士の裁判所鑑定人賃料鑑定額を採用した判決文を捜し、その判決の新規賃料の積算賃料と比準賃料の割合を求めた。
あまたの賃料判決が判例専門雑誌に公表されていると思われるかも知れないが、判例専門雑誌に判例として紹介される賃料の判決は、民事・刑事・行政等の公表判例の中にあって甚だ少ない。
その少ない判例専門雑誌に紹介された賃料判例であっても、決定賃料額のみの判決が殆どである。新規賃料を記述している判例は少ない。
そして新規賃料を記述している判決も、文言で積算賃料と比準賃料より求めたと記し、金額は新規賃料額のみである場合が殆どである。
一歩突っ込んで、新規賃料の積算賃料と比準賃料を記述している判決は極めて少ない。
新規賃料を記し、その内訳の積算賃料、比準賃料を記した判決は、平成4年から令和2年までで、私の調べた範囲では、9判決の12事例しか見つけることが出来なかった。
もっとあるかも知れないが、私の調べられる範囲では12事例であった。
データが少ないという叱責があるかも知れないが、そう思う人は、自ら行って見ることである。12事例より増えるかもしれないが、大きくかけ離れたデータ数にはならないのでは無かろうかと私には思われる。調査の時間が相当かかることを計算に入れることも必要である。
統計学上では12データの分析結果でも、確率的論証に不正確であるということにはならない。十分に分析証拠になりうる。
統計学上信頼される分布率範囲は、出現率5%以上である。
出現率5%というのは、左右対称の正規分布グラフの右側半分のグラフで云えば、右側グラフ裾野の部分の2.5%占める面積範囲である。
左右対称の正規分布グラフでは、左右グラフの裾野の各2.5%の面積範囲である。
統計学上信頼される分布率範囲は、上記説明した左右対称の正規分布の裾野部分の合計5.0%の面積範囲に入らない、それ以外の部分に存在する範囲である。
2.5%の面積範囲を占める確率分布率Z値は、1.96である。
確率分布率Z値は、下記の算式で求められる。
X-μ Z =───── σ但し、Xはデータ値、μはデータの平均値、σは標準偏差である。
X−0.958 1.96 =───────── 0.0781.110である。
X=1.96×0.078+0.958 =1.110
0.958−X 1.96 =───────── 0.0780.805である。
X=0.958 − 1.96×0.078 =0.805