「てんや」の店名で、天丼を中心にした飲食店120店舗を経営展開しているテンコーポレーションを、ロイヤルホールディングス株式会社が、株式の公開買付を行うと発表した。(2006年5月19日 ロイヤルホールディングス株式会社ホームページ)
33.29%の現在の保有株式を、公開買付で40%(467株)に増やすという。
買付価格は、2006年5月直前1ヶ月の株価終値の平均の約7%アップの金額で、1株550,000円という。
不動産鑑定評価で云えば、買い進み7%と云うことである。この7%がどの様に決まったかは分からないが、下記分析から考えると7%の買い進み価格でも、大判振る舞いの価格と私には思われる。
買い増す株式の割合は、
40%−33.29%=6.71%
である。
買い増す株式の購入価格は、
550,000円×467株=256,850,000円
である。
テンコーポレーションの売上高は、9,584,978,000円(平成18年3月期)であるから、6.71%の持ち株割合に相当する売上高は、
9,584,978,000円×0.0671≒ 643,152,000円
である。
売上高に対する投下資本の割合は、
256,850,000円÷643,152,000円≒0.40
40%である。
投下資本に対する売上高は、
1/0.4=2.5
2.5倍である。
テンコーポレーションの営業利益率は、3.3%(平成18年3月期)である。
営業利益率は甚だ低い。
投下資本256,850,000円に対する営業利益は、
643,152,000円×0.033≒21,224,000円
である。
投下資本利益率は、
21,224,000円÷256,850,000円≒0.083
8.3%である。
投下資本の回収年は、
1/0.083≒12.0
12年である。
飲食店の企業買収の投下資本回収年は、5年とも云われている。
5年はともかくとして、7年の投下資本回収年を標準とすると、12年での投下資本の回収は相当長い。
その年数での投下資本回収では、まず通常は購入者はいないではなかろうか。何か特別な目的を持った場合しか考えられない。
33.29%の株式を持つ大株主であるロイヤルホールディングスという立場が、購入価格に反映しているのでは無かろうかと私には思える。
テンコーポレーションの平成18年3月期の有価証券報告書は、まだ公開されていない。有価証券報告書には、賃借している店舗の賃料等は記載されていることから、平成17年3月期の有価証券報告書で、売上高に対する家賃の割合を分析する。
同有価証券報告書によれば、テンコーポレーションの17年3月期の売上高は9,489,801,000円である。
営業店舗は120店舗である。
てんやは、全店舗賃借店舗と推定出来る。
賃借店舗面積は11,418.71平方メートルである。
その年間支払賃料は、1,267,606,000円である。
月額賃料は、
1,267,606,000円÷12=105,633,833円
である。
平方メートル当り賃料は、
105,633,833円÷11,418.71≒9,250円
である。坪当り30,600円である。
1店舗当りの面積は、
11,418.71÷120≒95.2平方メートル
である。
1店舗当りの月額賃料は、
9,250円×95.2平方メートル≒880,000円
である。
1店舗当りの月額売上高は、
9,489,801,000円÷12ヶ月÷120店舗≒6,590,000円
である。
売上高に占める家賃の割合は、
880,000円÷6,590,000円=0.1335≒0.134
13.4%である。
差入れ保証金は2,995,284,000円である。
月額賃料に対する保証金のヶ月は、
2,995,284,000円÷105,633,833円≒28.4ヶ月
である。
従業員の給与と家賃の割合関係を分析してみる。
従業員の給与は2,648,235,000円(244人) である。
1,267,606,000円÷2,648,235,000円≒0.473
賃料総額は、給与総額の47%の水準である。
飲食店の家賃は、売上高の10%程度が経済経験則の割合である。
良い場所であるために、家賃が高いのは仕方が無いという言い訳があろうと思われるが、良い場所であればそれ故に売上は伸びてしかるべきであろう。
仕入れ原価の引き下げ見直しは当然であるが、売上高の13.4%の家賃を支払っての飲食店の経営は、家賃の引き下げ見直し等を考えないと、相当苦しい状態が続くのでは無かろうかと私には思われる。