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2804) RC造建物の解体工事費は、全国平均でRC造建物の新築工事費の3.6%


1.建付減価とは

 築50年程度経過のRC造建物は、用途利用は最適使用であるかも知れないが、経年による建物全体の劣化、設備の機能性の劣化等により、建物賃料は新築建物に比してかなり安く、築20年程度の建物の賃料に比しても安い。

 即ち、土地利用を最有効に発揮した賃料を得ていない。土地利用が最有効使用利用されていないと云うことになる。

 こうした状態では、土地に建付減価が発生していると判断される。

 土地の最高の効用を得るには、取り壊して、新しい建物を建てることである。更地化する事が必要である。

 こうした土地の建付減価を、更地価格の10%とする不動産鑑定書を時々見かける。

 不動産鑑定書には、10%の根拠の説明はなされていない。

 建付減価を更地価格の10%としている判断根拠は何かと問うても返事はない。

 土地の利益が最高になる収益を得るには、現存する建物を取壊し、最有効使用の賃貸建物に建て替える事になる。

 即ち、更地化して最有効使用の建物を建てることである。

 更地化すれば、最有効使用の建物が建てられることから、建付減価は消滅する。

 と言うことは、建付減価の上限は、建物解体費相当と云うことになる。土地価格の10%ではない。

2.2024年のRC造建物の解体工事費

 解体工事専門会社の大東建設が、ホームページに、各県ごとのRC造の解体費の坪当り単価を発表している。

 例えば、東京都のRC造建物の解体工事費は、「坪当り40,000〜60,000円」である。(https://www.dai-tou.com/marketprice)

 平均工事費は、

                        40,000円+60,000円
                      ────────── = 50,000円/坪           
                               2
である。

 u当り金額に換算すると、
        50,000円÷3.30578=15,125円
15,125円である。

 各県のRC造建物の解体費は、後記一覧に記す。

3.2024年のRC造工事費

 国土交通省の建築着工統計調査の2024年の建築着工統計調査は未発表であるため、2023年のデータ値を2024年の建築工事費として採用する。

 2023年の国土交通省の建築着工統計調査によれば、例えば、東京都の2023年1月〜12月のRC造の着工建設統計は、下記である。
       棟数      2,989棟
       延床面積    5,079,701u
       工事費予定額    198,089,393万円
 u当り工事費は、
 
                          198,089,393万円
                      ───────── = 38.996万円≒39.0万円   
                            5,079,701u
390,000円である。

 上記工事費には、設計監理費が含まれていない。

 設計監理費を5%とすると、
        390,000円×1.05=409,500円
である。

 東京都のRC造の建築工事費は、
        u当り409,500円
である。

 同様に求めた各県のRC造の建築工事費は、後記一覧に記す。

 尚、各県の2023年1月〜12月のRC造建築費の設計監理費5%を含まない建築工事費は、鑑定コラム2709)「2023年RC造建築費は東京u当り39.00万円 全国u当り31.44万円」に記してある。

4. 新築工事費に対する解体工事費の割合

 東京都のRC造建物の新築工事費は、u当り409,500円である。

 RC造建物の解体工事費は、u当り15,125円である。

 RC造新築工事費に対する解体工事費の割合は、
                        15,125円
                     ─────   =0.0369 ≒0.037                 
                       409,500円
3.7%である。

5.各県のRC造新築工事費に対する解体工事費の割合

 上記の求め方で各県のRC造新築工事費に対する解体工事費の割合を求めると、後記一覧である。

 全国平均解体工事費割合は、3.6%である。

 高い解体費割合の県は、下記である。

     
     1位  兵庫   5.3%
     2位  滋賀   5.2%
     3位  茨城   5.1%
         栃木   5.1%
     5位  鳥取   5.0%

 低い解体費割合の県は、下記である。

     1位  北海道  2.0%
         鹿児島  2.0%
         沖縄   2.0%
     4位   福井   2.2%
         秋田   2.2%

6.土地価格の10%の建付減価と云う考え方は適正か

 前記したごとく、古いビルが建っている土地の建付減価を、その土地の更地価格の10%が建付減価として土地価格修正している不動産鑑定書を見る。その考え方は妥当か否か。

 地価公示地価格とその土地上に想定されている建物の延べ床面積より検討する。

 @ 令和6年地価公示東京千代田4

  イ、所在地等
      東京都千代田区富士見町1-4-12(住居教示)
      6年1月1日公示価格   1u当り 1,740,000円
      飯田橋駅から360m 8m道路 142u
      1住居地域 容積率400%、建蔽率60%
      A鑑定想定建物 RC造5階建 共同住宅 延べ床面積 430.89u

  ロ、解体費
 上記公示地に築50年程度のRC造5階建て、共同住宅、延べ床面積430.89uの建物が建っているとする。

 この建物の新築工事費は、
      409,500円×430.89u≒176,400,000円
である。

 築50年程度の建物の解体費は、
      176,400,000円×0.037=6,526,800円
である。

  ハ、土地価格に対する解体費の割合
 この建物の建つ土地価格は、
      1,740,000円×142u=247,080,000円
である。

 土地価格に対する建物解体費の割合は、
                   6,526,800円
              ────────= 0.026                              
                247,080,000円
2.6%である。

 建付減価修正率は2.6%であり、10%では無い。

 A 令和6年地価公示東京中央5-1

  イ、所在地等
      東京都中央区銀座2-16-2(住居教示)
      6年1月1日公示価格   1u当り 3,380,000円 
      東銀座駅から230m 15m道路 340u
      商業地域 容積率600%、建蔽率80%
      A鑑定想定建物 S造9階建 店舗併用事務所ビル 延べ床面積 2,187.00u

  ロ、解体費
 上記公示地に築50年程度のRC造9階建、店舗併用事務所ビル 延べ床面積2,187.00uの建物が建っているとする。

 この建物の新築工事費は、
      409,500円×2,187u≒895,600,000円
である。

 築50年程度の建物の解体費は、
      895,600,000円×0.037=33,137,200円
である。

  ハ、土地価格に対する解体費の割合
 この建物の建つ土地価格は、
      3,380,000円×340u=1,149,200,000円
である。

 土地価格に対する建物解体費の割合は、
                  33,137,200円
              ────────= 0.0288 ≒ 0.029                    
               1,149,200,000円
2.9%である。

 建付減価修正率は2.9%であり、10%では無い。

 B 令和6年地価公示東京八王子5-2

  イ、所在地等
      東京都八王子市中町3-14(住居教示)
      6年1月1日公示価格   1u当り 583,000円
      八王子駅から360m 15m道路 346u
      商業地域 容積率600%、建蔽率80%
      A鑑定想定建物 RC造14階建 店舗併用共同住宅ビル 延べ床面積 2,034.00u

  ロ、解体費
 上記公示地に築50年程度のRC造14階建、店舗併用共同住宅ビル 延べ床面積2,034.00uの建物が建っているとする。

 この建物の新築工事費は、
      409,500円×2,034u≒832,900,000円
である。

 築50年程度の建物の解体費は、
      832,900,000円×0.037=30,817,300円
である。

  ハ、土地価格に対する解体費の割合
 この建物の建つ土地価格は、
      583,000円×346u=201,718,000円
である。

 土地価格に対する建物解体費の割合は、
                  30,817,300円
              ────────= 0.1527 ≒ 0.153                    
               201,718,000円
15.3%である。

 建付減価修正率は15.3%であり、10%では無い。

  ニ、まとめ
 上記3つの土地価格に対する建物解体費の割合は、下記である。
      @の事例   2.6%
      Aの事例   2.9%
      Bの事例   15.3%
 3つの事例の割合は、10%の割合とは関係が認められなく、無関係である。

 建付減価割合10%の割合数値に合理的根拠は無い。

 建付減価の修正率は、更地化するための上の建つ建物解体費相当の金額の減価割合で考えるべきと私は判断する。

7.各県のRC造建物の解体工事費割合

 各県のRC造建物の解体工事費割合は、下記一覧表である。


    下限価格 円/坪 上限価格 円/坪 (下限+上限)/2 u当り円換算 円/u a 2023年RC造 円/u b 設計監理費加算 円/u c 割合 a/c
1 北海道 20000 25000 22500 6806 318500 334425 0.020
2 青森 55000 55000 55000 16638 478800 502740 0.033
3 岩手 35000 50000 42500 12856 322800 338940 0.038
4 宮城 30000 45000 37500 11344 300900 315945 0.036
5 秋田 35000 45000 40000 12100 515700 541485 0.022
6 山形 35000 50000 42500 12856 355300 373065 0.034
7 福島 30000 48000 39000 11798 368600 387030 0.030
8 茨城 30000 50000 40000 12100 227600 238980 0.051
9 栃木 30000 48000 39000 11798 220600 231630 0.051
10 群馬 33000 47000 40000 12100 321400 337470 0.036
11 埼玉 35000 50000 42500 12856 307200 322560 0.040
12 千葉 35000 50000 42500 12856 266400 279720 0.046
13 東京 40000 60000 50000 15125 390000 409500 0.037
14 神奈川 40000 60000 50000 15125 308200 323610 0.047
15 新潟 40000 50000 45000 13613 378000 396900 0.034
16 富山 40000 40000 40000 12100 403300 423465 0.029
17 石川 25000 35000 30000 9075 399300 419265 0.022
18 福井 33000 45000 39000 11798 513700 539385 0.022
19 山梨 30000 45000 37500 11344 442200 464310 0.024
20 長野 40000 58000 49000 14823 362300 380415 0.039
21 岐阜 30000 50000 40000 12100 321100 337155 0.036
22 静岡 30000 55000 42500 12856 306000 321300 0.040
23 愛知 30000 55000 42500 12856 267700 281085 0.046
24 三重 30000 45000 37500 11344 296500 311325 0.036
25 滋賀 30000 40000 35000 10588 192200 201810 0.052
26 京都 30000 40000 35000 10588 332500 349125 0.030
27 大阪 30000 50000 40000 12100 285000 299250 0.040
28 兵庫 35000 55000 45000 13613 244400 256620 0.053
29 奈良 35000 50000 42500 12856 328600 345030 0.037
30 和歌山 35000 50000 42500 12856 379400 398370 0.032
31 鳥取 40000 55000 47500 14369 272700 286335 0.050
32 島根 32000 48000 40000 12100 316100 331905 0.036
33 岡山 38000 50000 44000 13310 329800 346290 0.038
34 広島 38000 50000 44000 13310 304500 319725 0.042
35 山口 38000 50000 44000 13310 322400 338520 0.039
36 徳島 33000 40000 36500 11041 291800 306390 0.036
37 香川 35000 46000 40500 12251 434800 456540 0.027
38 愛媛 28000 48000 38000 11495 304300 319515 0.036
39 高知 38000 45000 41500 12554 373800 392490 0.032
40 福岡 25000 40000 32500 9831 272800 286440 0.034
41 佐賀 30000 40000 35000 10588 394700 414435 0.026
42 長崎 40000 60000 50000 15125 320600 336630 0.045
43 熊本 28000 45000 36500 11041 256700 269535 0.041
44 大分 30000 50000 40000 12100 322600 338730 0.036
45 宮崎 30000 45000 37500 11344 345000 362250 0.031
46 鹿児島 28000 45000 36500 11041 521200 547260 0.020
47 沖縄 20000 20000 20000 6050 291800 306390 0.020
  平均             0.036


  鑑定コラム2709)
「2023年RC造建築費は東京u当り39.00万円 全国u当り31.44万円」


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