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2859) 更地評価の取引事例は


 前記鑑定コラム2858)「鑑定基準に基準の定義が無いというXのつぶやき」で、不動産鑑定評価基準(以下「鑑定基準」とする。)には、この鑑定基準とはどういうものなのか、鑑定基準の目的を書けと、次のごとく記した。

 「次回の鑑定基準の改正においては、まず先に、不動産鑑定評価とはどういうものかの定義付けして、その後に「不動産鑑定評価基準とは、不動産鑑定評価の拠り所となる統一的基準であり、不動産の鑑定評価に関する法律第40条の不当な鑑定評価の判断根拠となるものである。」という目的と、鑑定基準は法律とリンクしている基準である事を鑑定基準の最初に記して欲しい。」と。

 思えば、旧鑑定基準の更地評価の取引事例の採用規定に対する私の主張を想い出す。

 旧鑑定基準が更地の鑑定評価の手法について、「更地の鑑定評価額は、更地並びに自用の建物及びその敷地の取引事例に基づく比準価格並びに土地残余法による収益価格を関連づけて決定するものとする。」と規定し、この規定は、、昭和39年の鑑定基準制定時から、あたかも金科玉条、不変の求め方であるがごとく考えられ、変更されずに来た。

 その理由は、私が思うに、更地価格は不動産鑑定評価の基本の基本であり、鑑定基準制定する時にも、更地価格の求め方の鑑定評価手法は十分に討論されて制定された規定であり、それを容易く変える事は出来ないという考え方があったのでは無かろうかと推測する。

 こうした鑑定基準の更地評価の規定に対して、私は、「鑑定基準は間違っている。自用の建物及びその敷地の取引事例に基づく比準価格のみで無く、貸家及びその敷地の取引事例も入れるべきである」と主張し、評価の実務においては行って来た。

 一部の不動産鑑定士が私の考え方を批判した。「田原鑑定は、鑑定基準違反の土地価格の求め方で土地価格を求めている」と。

 裁判においても証人喚問され、法廷の証人席で、弁護士から、「田原鑑定は鑑定基準違反の鑑定である」と、厳しく批判・非難された。

 然し、平成26年鑑定基準改正において、何があったのか、突然「自用の建物及びその敷地の取引事例」の個所は、「配分法が適用できる場合における建物及びその敷地の取引事例」に改正された。

 この事がそんなに重要であるのかと思われるかも知れないが、大変重要なことである。

 その事に付いて、著書『改訂増補 賃料<地代・家賃>評価の実際』P3(プログレス 2017年2月10日改訂増補版発行)の「序章 平成26年改正「鑑定基準」の重要点」の「第1節 更地価格の求め方が変わった」で、次のごとく記している。

 「旧基準では、複合不動産は「自用の建物及びその敷地」の取引事例しか、事例採用出来ず、「貸家及びその敷地」の取引事例は、更地の事例として採用することは出来なかったのである。
 銀座で更地の取引事例などまず無い。自社ビルがあっても、子会社の名義にして、賃貸している形を取っているのがほとんどである。
 それ故、自用の建物及びその敷地の取引事例も無い。
 あるのは貸家及びその敷地の取引事例ばかりである。
 その取引事例が、旧基準では事例として使えないということになる。
 私が、銀座の家賃の評価で、貸ビルの取引事例を使用して、土地価格の鑑定書を発行したところ、東京地裁の裁判の法廷で証人喚問され、代理人弁護士から「田原鑑定は基準が認めていない貸ビルの取引事例を使用して土地価格を求めており、明白な鑑定評価基準違反をしている。信用性は全く無い」とやられた。
 法廷で、鑑定評価基準違反であるという叱責を浴びせられるという大変苦い証人喚問を味わった。」

 このことについては、私のホームページの鑑定コラムに、鑑定コラム20)「ある法廷にて」(2002年4月20日発表)として述べている。そのコラムを一読していただければ幸いである。

 鑑定基準の更地価格の求める取引事例が、「自用の建物及びその敷地の取引事例」から「配分法が適用できる場合における建物及びその敷地の取引事例」に改正されたことは、鑑定基準改正委員会の方々は、一切改正理由を云わないが、私の鑑定コラム20)「ある法廷にて」が大きく影響を与えたと私は思っている。そう私が思う事はいけないことでは無かろう。

 鑑定基準に、鑑定基準の目的、不動産鑑定評価とはの定義も、いずれ、付加として書き入れられるのでは無かろうかと私は思っている。

 そうしないと、鑑定基準は何なのかということが、いつまでも問われ続けることになる。


  鑑定コラム20)
「ある法廷にて」

  鑑定コラム2858)「鑑定基準に基準の定義が無いというXのつぶやき」


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