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2891) 築35年の中高層ビルの必要諸経費率はどれ程か


1.はじめに

 建物の必要諸経費率は、建物が古くなるに従い高くなる。

 それは、建物の築年数が増えるに従い、設備の更新費用が嵩むためである。

 新築建物の必要諸経費率に比し、築35年の中高層ビルの建物の必要諸経費率はどれ程になるか分析してみる。

2.採用データ

 データは、データの恣意性を避け、公平を期するために、地価公示地の価格分析に利用されている地価公示価格の鑑定書に使用されている収益還元法のデータを採用する。

 横浜市中区の商業地の令和7年地価公示で、想定賃貸ビルが、1階賃貸店舗で上階は賃貸住宅の地価公示価格の収益還元法使用のデータを採用する。

 地価公示価格は2人の不動産鑑定士が評価している。

 公開されている地価公示価格の鑑定書の先に開示される鑑定書をA鑑定と呼ばれるが、そのA鑑定を採用する。

 下記の地価公示地とする。

 横浜中5-5   横浜市中区野毛町2-59-3
 横浜中5-10   横浜市中区大和町2-50-2
 横浜中5-15   横浜市中区若葉町2-30
 横浜中5-22   横浜市中区石川町2-61-1
 横浜中5-24   横浜市中区富士見町1-2
 横浜中5-25   横浜市中区伊勢佐木町6-146-5外

3.新築〜築20年の賃貸建物の必要諸経費率と修繕費率

 例えば、令和7年横浜中5-5の地価公示価格のA鑑定書の収益還元法では、総収入は8,603,244円で、必要諸経費(減価償却費は含まれない。以下同じ)の総支出は1,922,682円である。

 必要諸経費率は、

                   1,922,682円
                ───────  = 0.223(22.3%)                    
                   8,603,244円
22.3%である。

 必要諸経費のうち修繕費は、501,600円である。

 必要諸経費に占める修繕費の割合は、
                    501,600円
                ──────  ≒ 0.261                             
                  1,922,682円
0.261である。

 修繕費の賃料総収入に占める割合は、
      必要諸経費率×修繕費率=0.223×0.261≒0.0582
5.82%と求められる。

 同様にして求められた上記記載の他の地価公示価格の必要諸経費と修繕費一覧は、下記である。


公示地番号 必要諸経費率 % 総費用 円 修繕費 円 割合1 修繕費割合 %
  a b c c/b=d a×d
横浜中5-5 22.3 1922682 501600 0.261 5.82
横浜中5-10 21.1 1597591 424200 0.266 5.61
横浜中5-15 22.7 3620948 1038000 0.287 6.51
横浜中5-22 24.2 5435829 1960000 0.361 8.74
横浜中5-24 23.2 17071022 4620000 0.271 6.29
横浜中5-25 22.6 3192672 900000 0.282 6.37
平均 22.7       6.56


 必要諸経費率の平均割合は22.7%、それに占める修繕費の平均割合は6.56%である。

 上記割合は、新築建物で求められたものであるが、新築〜築20年の建物の場合の割合とする。

4.築35年の賃貸建物の必要諸経費率

 建物が古くなると必要諸経費率が高くなる。それは修繕費の内の設備等の大規模更新が発生する為である。

 一級建築士の上野俊秀氏著『建築プロジェクトの企画設計・事業収支計画と投資採算評価の実務』P263(プログレス)によれば、マンションの修繕費と更新費は、次のごとくである。

   (修繕費)
    新築〜築20年平均修繕費工事費割合     0.91%
    新築〜築40年平均修繕費工事費割合     0.80%

   (更新費)
         年     新設総工事費割合          累計
         15年       2.21%
                20年              4.64%              6.85%
                25年       1.89%
                30年             39.22%
                35年         3.52%
                40年       11.40%            62.88%

    新築〜築20年平均更新費工事費割合  6.85%÷20年=0.34%
    新築〜築40年平均更新費工事費割合  62.88%÷40年=1.57%

   (修繕費+更新費の平均割合)
     20年平均   0.91%+0.34%=1.25%
     40年平均   0.80%+1.57%=2.37%

 (修繕費+更新費)の20年平均に比し、(修繕費+更新費)の40年平均は、
        2.37%÷1.25%=1.896≒1.9
1.9倍の費用がかかる。

 築20年〜築40年までの建物の必要諸経費率は、
        22.7%−6.56%+6.56%×1.9=28.604%≒29%
29%と判断される。

 築35年の1階店舗、上階マンションの賃貸建物の必要諸経費率は、29%程度と判断してもよかろうでは無かろうかと思う。


  鑑定コラム2890)
「中高層ビル1階にある店舗の共益費・管理費は如何ほどであろうか 」


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