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304)3億円でのはるやま商事の紳士服チェーン店買収

 紳士服店のM&Aが激しい。
 業界2位の「青木」が、「ふたた」の買収を狙って、TOBをかけたら、「ふたた」と業務提携している業界4位「コナカ」が、待ったを掛け、「青木」と「コナカ」による「ふたた」分捕り合戦が新聞紙上を賑わした。

 その騒ぎの裏で、紳士服業界の別の企業買収がひつそりと行われた。

 はるやま商事による株式会社マツヤ(本社 高崎市)の企業買収である。
 マツヤは北関東を中心にして、17店舗の紳士服店チェーンを展開している企業である。大きめサイズの紳士服「フォーエル」の店名で名が知られている。

 マツヤは、2006年6月に経営が行き詰まり、民事再生法の適用申請を行った。

 岡山に本社を置くはるやま商事は、関東進出の機会を狙っていた。
 北関東地区に事業展開するマツヤを手に入れることによって、一気に関東地区に営業基盤を築くことが出来る。

 はるやま商事のホームページのプレスリリース(2006年8月10日)によれば、株式会社マツヤ の譲渡取得価格は、3億円という。

 譲り受ける潟}ツヤの売上高は、
     平成16年7月    12.8億円
     平成17年7月    13.2億円
である。

 はるやま商事の買収価格を、甚だ少ない情報の中で、以下に推定を試みる。

 男子服の売上高に占める家賃の割合は、8.9%(『賃料(地代・家賃)評価の実際』p277 田原 プログレス 電話03-3341-6573)である。

 13.2億円の売上高の場合、家賃は、
     13.2億円×0.089=1.17億円
     1.17億円÷12ヶ月=975万円(月額)

 保証金を月額支払賃料の20ヶ月とする。
     975万円×20ヶ月=19,500万円

  潟}ツヤの17店舗は全て所有権ではなく、賃借店舗であろうと推測する。
 その店舗を引き続き賃借して営業するからには、保証金は購入金額に含めざるを得ない。

 次に棚卸資産を考える。
 男子紳士服小売店の商品回転率は、従業員21人以上の場合、5.2回転程度である。データ分析数値は、やや古いが、同友館の「中小企業の経営指標・原価指標」平成14年発行の数値による。以下同じである。
     13.2億円÷5.2≒2.5億円

 売上高対総利益率は35.6%程度である。即ち原価は、
     1−0.356=0.644
である。

 棚卸資産は、
     2.5億円×0.644=1.61億円
と推定出来る。

 倒産による棚卸資産の劣化を見込む必要があり、この修正を0.5とする。
     1.61億円×0.5=0.8億円
 棚卸資産の価値を0.8億円と求める。

 営業権の価格について考える。
 とらえどころの無い営業権の価格であるが、広告宣伝することによって営業権の価値は消滅せず存在しているものと考える。

 広告費を売上高の2.4%程度とする。
     13.2億円×0.024=0.3億円
 営業権の価格を0.3億円とする。

 以上をまとめると、

     保証金     1.95億円
     棚卸資産        0.8億円
     営業権     0.3億円
     合計      3.05億円
3.05億円である。

 はるやま商事の買収金額3億円に、当たらず遠からずである。
 民事再生法の申請企業という要因と売上高13.2億円という情報だけで、3億円という企業買収価格を推定分析するとは、いささか無謀に近い行為と思われるかもしれないが、一応、上記のごとくの考えで行えば、3億円の金額は論理的に推定出来る。

 はるやま商事が、どういう考えで3億円の買収金額をはじき出したかは、私は知る由も無い。上記金額の求め方は全く私の勝手な推測によるものであることを、ご承知しておいていただきたい。

 買収価格の売上高に対する割合は、
     3億円÷13.2億円=0.227
である。
 この割合は、何だか、工場の売上高に対する工場の土地建物の価格割合に似ている割合である。


  鑑定コラム1007)「岡山県瀬戸内市の住宅賃料の下落が大きい(24年10月)」


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