332)2007年2月10日号の週刊ダイヤモンド誌を読まれたい
今迄鑑定コラムの記事として、あえて避けてきた分野の1つであるが、見過ごしておくことも出来ず止むを得ず筆を入れる。
不動産鑑定士・補の方々、2007年2月10日号の週刊ダイヤモンド誌の記事を読まれたい。
不動産鑑定士、社団法人日本不動産鑑定協会にとって、大変なダメージを与える記事である。
2007年2月10日号の週刊ダイヤモンド誌の記事は、地価公示価格の全国地域の地価変動率の見込み変動率が記述されているものである。
これは国交省が地価公示価格を発表する前に、それ以外のところから公表されるべきものでは無い。地価公示価格の変動率、地価公示価格の発表等は国交省の専管事項である。
その全国地域の地価変動率の見込み変動率が、地域担当の幹事である不動産鑑定士の誰かから漏れたらしく、2007年2月10日号の週刊ダイヤモンド誌の記事になっているのである。
『不動産鑑定に関する法律』第6条は次のごとく規程する。
「不動産鑑定士は正当な理由が無く、鑑定評価等業務に関して知り得た秘密を他に漏らしてはならない。」
地価公示価格は、「地価公示法」という法律に基づいて行われる土地価格調査である。
その第24条に、次のごとく秘密を守る義務規程がある。そこには、
「第2条1項の規程により標準地の鑑定評価を行った不動産鑑定士は正当な理由がなく、その鑑定評価に際して知ることの出来た秘密を漏らしてはならない。」
と規定する。
第2条1項とは、「一定の基準日における当該標準地の単位面積当りの正常な価格を判定し、これを公示する」行為をいう。
そして罰則規定として第27条があり、それには次のごとく懲役刑という刑事罰が科せられることが規程されている。罰則は厳しい。
「次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役若しくは50万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
1.省略
2.第24条の規程に違反して、標準地の鑑定評価に際して知ることのできる秘密を漏らした者」
2007年2月10日号の週刊ダイヤモンド誌の記事を見て、地価公示価格の業務を、日本不動産鑑定協会に委託している国土交通省は、当然、激怒しているであろう。
地価公示価格の評価の仕事は、俺たち不動産鑑定士の仕事だと思いこんで、それに頼っているのが、大半の不動産鑑定士の考えであろう。
しかし、その考えは通用しなくなるかもしれない。
「そんなことはあり得ない。誰がやるのか。」
とウソぶいている状況では無い。その様な甘い考えを捨て去る必要がある。事態は想像以上に深刻である。
自分達の側からものごとを都合良く見るのでなく、国土交通省の立場から今回の事態を見て考えれば、それがどういうものか分かろう。
不動産鑑定士、日本不動産鑑定協会の対応がまずかったら、地価公示価格の委託の鑑定評価は吹っ飛ぶかもしれない。
加えて、記事にも書いてあるが、去年もダイヤモンド誌は同じ様なデータを入手していたと述べている。
しかし、去年は記事にしなかった。今年は記事にした。
去年記事にしなくて、今年は何故記事にしたのか。どうしてだろう。何か理由・動機があるはずだ。
記事の字面からは読み取れない記事を書いた理由・動機を洞察することは難しいが、その難しいことを洞察するのも無駄ではない。
(追記 2007年2月13日)
上記問題について、本会(社団法人日本不動産鑑定協会)の副会長である平澤春樹氏が、事態の重要性を考え、緊急理事会の開催を開くようにと理事会の開催権を持つ本会の会長に対して要求したことを、氏のブログで公開した。
同ブログによれば、会長に緊急理事会開催要求の文書と同じものを、全国の理事にも送付し、理事に緊急理事会の開催に賛同する文書署名を求めていると伝える。
http://blog.livedoor.jp/tosikk/
(注) ネットスケープの場合、ブログが開かない場合があります。
平澤氏の許可を得て、ブログに公開された本会会長への緊急理事会開催の要請文書を下記に転載する。
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平成19年2月13日
(社)日本不動産鑑定協会 会長 横須賀博 殿
副会長 平澤 春樹
緊急理事会の開催について(要請)
週刊ダイヤモンド誌の地価公示価格データの漏洩事件への対応のいかんは、
今後の地価公示制度や新スキームによる取引価格情報公開制度の進渉に重大
な影響を与えるばかりでなく、鑑定協会の存亡に係る事態に発展しかねない
問題をはらんでいます。
よって、3月20日の理事会を待たず、緊急理事会を招集し、早急に対応して
いただきたく、要請いたします。
以上