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340)日本のトップ銀行グーループの3年後の純利益目標

 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループが、中期目標を発表した。(2007年2月22日 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループHPプレスリリース)

 そのプレスリリースによれば、連結営業純益は、

     平成18年度予想    約16,000億円
     平成21年度目標        約25,000億円
である。

 連結当期純利益は、
          平成18年度予想     8,700億円
          平成21年度目標        約11,000億円
である。

 銀行の連結営業純益、連結当期純利益が一般企業の損益計算書のどの部分に当たるか、どうもよく分からない。

 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループの連結損益計算書を見ると、平成18年4月1日〜平成18年12月31日までの9ヶ月の数値は、次のごとくである。
     経常収益           4,308,950百万円
     経常費用           3,344,970百万円
     経常収益             963,979百万円
          当期純利益           690,550百万円
である。

 銀行の損益計算書の経常収益は、一般企業の売上高で、経常費用は販売管理・営業費用、経常収益が営業利益に相当するのでは無かろうかと推定する。

 銀行の連結営業純益の数値がどの様にして求められているのか、しかと分からないが、どうも、
     資産運用収益−資産調達費用=資産運用純益
のごとく、各部門毎の収益から費用を差し引いた純益の合計では無かろうかと推定する。

 いずれにしろ、平成19年、20年、21年の3年間で、
          連結営業純益は年率16.0%
          連結当期純利益は年率8.1%
の成長である。

 当期純利益が、年率8.1%を目標にしていることは重要である。
 この数値は、銀行等の金融機関の経営財務を分析する際の、1つのメルクマールになる数値になるのでは無かろうか。

 日本のリーディングバンクグループとして、3年後に純利益1兆1千億円を稼ぎだすことは、大変喜ばしいことである。
 振り返ってみれば、平成14年度では1614億円の赤字であったのである。

 三菱UFJフィナンシャル・グループの、平成21年度連結当期純利益1.1兆円の数値目標の前提となるデータ数値として、次のデータ数値をあげている。

                              18年度   19年度   20年度   21年度
 無担保コール(期中平均)   0.2%  0.6%  1.0%  1.0%
 10年国債利回り(期中平均)  1.8%  2.1%  2.5%  2.5%
 ドル円(期末値)         115円   115円    115円    115円
 実質GDP成長率(年率)     2.1%  1.8%  2.3%  1.6%

 日本の産業の中枢を担う企業に血流として資金を提供し、日本経済を支えているトップ銀行グルーブが、グループの盛衰を賭けて予想する上記データの数値である。

 その数値は日本経済の最も信頼出来る予測とも言えよう。

 日本のトップ銀行グルーブである三菱UFJフィナンシャル・グループは、10年国債利回りを、平成20年度には2.5%と予測する。

 とすると貸出金利は今後確実に上がることになる。
 住宅ローンも現在の低金利で無く、4〜5%の水準になるのでは無かろうか。

 対ドルに対する円換算は、
      1ドル=115円
と変わらないと予測する。

 輸出関連企業にとっては、三菱UFJフィナンシャル・グループのこの予測数値は、力強い数値では無かろうか。

 そして4つの指標の最後は、実質GDP成長率を予想している。
 実質GDP成長率はマイナスではない。 1.8%、2.3%、1.6%の成長である。

 日本の金融のリーディングカンパニーが、その企業の近い将来の利益を予想するうえに、GDPを使用している事実は、GDPがいかに大切であるかということを認めている証拠である。

 言い直せば、 GDPなしには将来の利益を的確に予測することが出来ないと言うことを具体的に示していることである。GDPの経済に与える重要性がどれ程か分かろう。

 上記4つのデータを基礎にして、平成14年度には1614億円の赤字の銀行グルーブ企業が、平成21年度には1.1兆円の純利益を稼ぎ出す企業になるのである。
 そこに至るまでには、政府の協力、預金金利の低率による国民のうべかりし利益の犠牲等多くの政策が施されて得たものであるが、とにかく素晴らしいものである。

 平成バブルの大不況が生じ、金融機関、多くの民間企業の倒産を招いた最大の原因は、地価のバブルで踊り、地価の大暴落によって不動産を担保にしていた債権が、不良債権になり、債権の回収が出来なくなったことである。

 不動産を担保にすることは決して悪いことでは無い。それは、貸出債権の最後の回収手段として有効なものである。

 しかし、現行の不動産担保制度は甚だ良くない制度である。
 1つの不動産に3つも4つも、ひどい時には25件もの抵当権がつけられる。
 地価の大幅下落により、担保にしていた不動産の価値は著しく下がったしまった。このことにより第1位の抵当権者にすら貸付債権の回収が出来なくなる現象が生じた。2番抵当権者、3番抵当権者は勿論、25番位の抵当権者などには債権の配当などとても望めなく、競売の申立する権利すら生じなくなってしまった。
 貸付債権の大量の不良債権の発生がこうして生じた。

 戦後の右肩上がりの地価上昇で来たことから、同一土地に25個の抵当権がつけられるという現象が生じ、それでも金融業務は支障をきたさなかった。

 金融の過剰流動性による地価の暴騰、そして地価の暴落による平成の大不況に直面し、企業は倒産し、銀行も倒産した。

 その最大の原因は現行の土地担保制度である。
 1つの土地に複数の抵当権の設定を許す現行の抵当権設定の制度を廃止し、1つの抵当権のみの設定にすることである。そして1つの債権債務は抵当権の実行により、それで終わりという制度に改めるべきである。

 現行の不動産担保制度では、抵当権が設定してある担保不動産が債務返済の方策として競売に付されたとしても、競落額が債権額に満たなければ、不足分の債務額は残る。債務者は不足分債務を支払わなければならない。
 支払金が無いから、担保不動産を競売して支払ったのである。なおかつ不足債務を支払えと言っても、支払う財産・能力は無い。

 他方債権者にとっては、未収の債権は残るが、その債権を担保するものは無く、未収債権の回収する道が無いという状態に陥る。回収する方法も無い債権が多額になれば、それは不良債権となり、それを多額に抱えた銀行・金融機関は倒産ということになる。

 今回の平成の地価大暴落の不況で、金融機関は多額の苦い授業料を支払ったのである。
 この授業料を生かさなければならないであろう。

 高い授業料を支払った現行の不動産担保制度を改変すべきであろう。
 それは銀行自身で行うべきである。

 民法学者を頼りにしても、学者なぞ法律改正などやる気も無く、出来ない。
 監督官庁を頼りにしても、監督官庁は法律改正に協力してくれるが、役所は法律を作る機関では無い。

 法律を作るのは国会議員である。
 国会議員の議員立法によって、現行不動産担保制度の改正を行うべきであろう。
 銀行業界の力を持ってすれば、その位のことは容易いことでは無かろうか。

 のど元過ぎれば熱さ忘れるの諺のごとく、抵当権の改正も行わず、現行抵当権制度をそのまま存続させるのであれば、銀行はいつの日か再び平成のバブル崩壊の大不況と同じ大不況を味わうことになるのではなかろうか。


 (追記 2007年3月23日)
 上記において、1.1兆円の純利益を稼ぎ出せるようになったことは素晴らしいことであると述べたが、そこに至るには「預金金利の低率による国民のうべかりし利益の犠牲」があるとも述べた。

 2007年3月23日の日経は、3月22日開催の参議院の財政金融委員会で、日銀の福井俊彦総裁が次のごとくの発言したことを伝える。
 
 「バブル崩壊後の超低金利により、家計が失った金利収入の累計は331兆円である」と。

 銀行幹部は、銀行自身も多大な犠牲を払ったが、他方、国民の家計が払ったこの犠牲の事実もしっかりと心して、行動、発言しなければならないであろう。

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