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346)2つの中央官庁本省課長・講師の話

 もう2年近く前になろうか。
 郵政国会の終わり近く、小泉政権による衆議院の郵政解散総選挙の噂の嵐が吹き荒れていた2005年5月頃、永田町の自民党会館の会議室で行われた勉強会に参加した。

 自民党会館とは、現在の政権与党の自民党本部のある建物で、テレビニュースで自民党幹部が自動車から降りて、自民党本部の建物に入る映像がよく流れるが、その建物である。
 一般人である私などの入館の検査は厳しかった。良く考えればそれは当然であろう。

 会議室は、地方出身議員ブロック別に分かれて、地方ブロックの議員が使用する部屋の一つであった。

 勉強会の参加者は20名程度であったが、その中に不動産鑑定士が4〜5名いた。
 勉強会の講師は経済産業省の本省の課長であった。
 話の内容は、経済産業省として中小企業への融資の道を開く為に、動産を担保にした融資制度を創設するものであった。
 ABL制度のことである。

 不動産担保に偏りがちな融資を、動産を担保にすることによって、中小企業に金を回し、中小企業を活性化させようとするものである。

 しかし、動産を担保にするについて、その動産の適正な価値を把握するシステムが、現在の日本には無い。
 それをつくる必要性もあるという内容の話であった。
 つまり動産の価値を適正に評価する制度を作ろうと言うのである。

 もう一つの勉強会は、昨年の暮れ(2006年12月)に法務省の本省の課長を講師にした勉強会であった。

 参加者は前記と同じ人数程度で、不動産鑑定士も同じくらいの人数の人々が参加していた。

 その時の勉強会は、現在はサービサーの扱う債権回収の範囲は、銀行の不良債権となった不動産担保の債権回収に限られているものを、一般企業の売掛債権にまで取り扱い範囲を広げようとするものであった。

 銀行の不動産担保による不良債権処理も峠が見えてきて、その先のサービサーの仕事の減少することを見込んで、サービサーが一般企業の売掛債権の回収を行おうとするものである。

 焦げ付き債権の回収を一般企業の売掛債権にまで範囲を広げると、サービサーの仕事は莫大なものとなる。

 それは商品の売掛債権、設備装置の売掛債権の回収となる。
 設備装置の売掛債権を回収するには、その設備装置の適正な価格評価が必要となる。
 商品は動産が大半であるから、動産の債権回収を行うことになる。
 そうすると動産の価値評価が必要ということになる。

 この様に考えると、法務省の課長の言うサービサーの売掛債権の回収の制度と、経済産業省の課長の言う動産を担保にした融資制度とは、動産及び設備装置の適正な評価制度が必要と言うところで交差する。

 サービサーの一般企業の売掛債権の回収範囲の拡大は、当然法律の改正が必要であるが、それは既に行われつつあるのである。
 そうでなければ、忙しい本省の課長が、時間を割いて具体的に話しなどする為に、わざわざ講師として来てくれない。勉強会の参加者にはサービサー協会の幹部達、弁護士そして議員立法の法案の骨子を作るブレーンの学者が出席しているのである。

 動産の担保評価、それによる融資は既に行われている。
 ドンキホーテという会社が「動産鑑定士」という名称を商標登録して、動き出している。
 また、地方銀行も金融庁のリレーションバンク構想の脱不動産担保の方針に従い、動産を担保にした融資を実行している。

 その1例として、岐阜県の大垣共立銀行がみりんの在庫を担保にして、白扇酒造(岐阜県川辺町)に1億円を融資したと、2006年12月23日の日本経済新聞は報じる。
 この担保価値を評価したのは、ゴードン・ブラザーズ・ジャパンという会社と報じる。

 時代は確実に動き、不動産を取り巻く状況も変化しょうとしている。
 さあ、不動産鑑定士はどう動く。
 

 サービサーに関する記事は、下記鑑定コラムにもあります。
  鑑定コラム319)とてつもない売上高の伸びを持つ新産業の出現

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