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319)とてつもない売上高の伸びを持つ新産業の出現

 年間5兆円の売上高増を持つ、とてつもない新しい産業が出現した。

 その産業は平成11年突如出現した。
 その産業の売上高の累計推移を見ると、下記のごとくである。

  平成11年12月末    1,390億円
  平成12年12月末    8,100億円
  平成13年12月末   2兆1,270億円
  平成14年12月末   3兆9,040億円
  平成15年12月末   6兆7,740億円
  平成16年12月末   9兆9,031億円
  平成17年06月末  11兆7,887億円
  平成18年06月末  16兆7,647億円

 7年間で売上高の累計は、0円から16.7兆円に拡大してきた。
 平成17年(2005年)6月〜18年(2006年)6月までの1年間の、この産業の売上高は、
       16兆7,647億円−11兆7,887億円≒5兆円
である。

 年間5兆円の産業と言えば、どの位の産業なのか。
 各産業の売上高(主として2004年)を記すと、下記の通りである。

    
    自動車産業        45.8兆円
    コンビニエンスストア       8.0兆円
        医薬品産業         7.4兆円 
      情報通信機器産業      7.1兆円
        半導体産業         4.2兆円
        繊維産業          5.0兆円
    新聞業           2.4兆円
である。

 5兆円産業と言うのは2.4兆円の新聞業よりも大きく、従業員40.8万人を抱える繊維産業に匹敵する。

 この様な巨大な新産業が、不動産鑑定業のすぐ傍に存在するのである。
 不動産鑑定業界全体の年間売上高はいか程か。
 業を営んでいる、或いは業に従事している不動産鑑定士の方々はご存じだろうか。

 上記新産業の売上高と比較したら、とても恥ずかしくて数値などいえる額では無い。

 年間5兆円の売上高拡大している新産業は、一体どういう産業であろうか。

 その産業は、「サービサー」と言う産業である。

 「サービサー・・・・?。そんな産業など知らない。どんな産業なのか。」
といぶかる人々が大半であろう。
 業として隣接にいる不動産鑑定士の中でも、その業種を知らない人は多く、かつサービサーの業種が、年間5兆円もの売上高の拡大をしているとは全く知らないであろう。

 「サービサー」とは債権管理回収を行う産業である。
 平成10年10月12日「債権管理回収業に関する特別措置法」(サービサー法と呼ぶ)が、議員立法により成立し、同年10月16日公布、平成11年2月1日施行された法律によって作られた新しい産業である。

 法律が出来上がってしまえば、産業の存在はあたかも当然のごとく見えるかもしれないが、「無」の状態から議員立法によって作られるまで、数多くの困難な壁があり、それら難事業と思われる壁を乗り越えて作られた法律によって得られた5兆円の売上高の産業である。

 5兆円の売上高の産業にまで成長したのであるからには、サービサーの団体は、サービサーの法律成立の為に苦労し、心身の努力を惜しまずに働いてくれた人々に対して、終身年金を支払っても良いのではなかろうかと私は思う。
 自分達のサービサーの現在の職業と生活の場を作ってくれたのであるから。

 弁護士法72条という弁護士の生命線であるべき牙城から代理権を獲得し、特別法を作り、新しい産業への扉を開き、そして大産業に育てたますらお達に、私は男のロマンを感じる。

 不良債権処理に悩む金融機関の不良債権処理の有効な処理策の一つとして、日本に「サービサー」という職業・産業を作ったのである。

 債権回収は弁護士の独占業務であった。
 しかし弁護士が全ての債権回収が出来るものではない。
 債権回収は弁護士の職務の領域とはいえ、それは名目のみであり弁護士が出来ない分野もある。加えて警察の民事不介入と言うことを見越してか、債権回収と言う仕事は、また裏社会の生業の一つでもあった。
 
 弁護士法の特別法としてサービサー法が作られた。
 その法律による債権管理回収会社の設立条件は大変厳しい。
 資本金は最低5億円以上、暴力団員等の関与が無いこと、常務に従事する取締役の1名以上に弁護士がいることとされ、主務官庁は法務大臣である。

 法務大臣に認められている債権管理回収会社は、出資会社である親会社の合併などにより数は少し減り、現在で96社ある。
 その中には、政府が作った株式会社整理回収機構(通称RCC)もあるが、RCCは別格として、96社で5兆円の売上高である。

       5兆円÷96≒0.052兆円
 一社当り520億円の売上高である。再度不動産鑑定士に問う。不動産鑑定業界の業界全体の売上高はいかほどであろうか。

 銀行の不良債権処理が終われば、サービサーの仕事もなくなるであろうと多くの人は思うかもしれないが、どっこい、そうはならない。

 これだけ大きくなった産業がたやすく無くなるハズが無い。
 弁護士法72条の代理権を特別法で取得したサービサーが、その権利をたやすく放棄などするハズが無い。

 自己増殖とはいわないが、サービサーは次のより大きな債権回収の職域の拡大を狙っている。
 それは何か。
 そのことについては、いつか機会があったら話したい。

 私は実業家の能力は無いから、サービサー業をするつもりは無いが、不動産鑑定士の中にも先見の明を持つ人がおり、或いは機を見るに敏な人か、はたまた実業家向きの人か、サービサー業経営に関与している人が不動産鑑定士で一人いると聞く。
 その不動産鑑定士に私はエールを送りたい。


サービサーに関する記事は、下記鑑定コラムにもあります。
  鑑定コラム346)「2つの中央官庁本省課長・講師の話」

  鑑定コラム690)「サービサーの東京債権回収が倒産した」

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