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353)閉鎖される「きたみ東急百貨店」の価格の推定

 北海道北見市のJR北見駅の改札駅を出て、左側駅前広場に面して、「きたみ東急百貨店」がある。

 店舗の立地として、「駅の左か、右か」という記事を、鑑定コラム172)に書いた。

 その記事で書いてある経験則で言えば、当該百貨店は、北見市の一等地の商業地に立地していると言うことになる。
 その立地にもかかわらず、「きたみ東急百貨店」は2007年10月1日をもって閉店すると、2007年5月12日付の日本経済新聞は報じる。
 閉鎖は本当かいなと思い、地元北海道の「北海道新聞」をネットで見たところ、やはり北海道新聞にも閉鎖の記事が出ていた。

 この「きたみ東急百貨店」と同じビルに「東急イン」というホテルがある。
 この東急インに幾度か宿泊したこともあり、隣接の百貨店が閉鎖されることを知って、いささか寂しい気が生じる。

 百貨店の閉鎖に伴って、同じビルにある北見の東急インも閉鎖されることになるのであろうか。
 北見の東急インは、女満別空港を利用して、網走、知床、サロマ湖等北海道の東部を旅行する際の拠点のホテルでもある。それを無くすることは、東急グループはまさかしないと私には思われるが、それは分からない。

 「きたみ東急百貨店」が閉鎖にいたる原因となったのは、郊外の大型ショッピングセンターの出現による影響と新聞は報じる。
 地元利用者にとって「きたみ東急百貨店」の閉鎖は、かなりの痛手になるのでは無かろうかと思う。

 それは、安かろうと言って商品を購入する人にとっては、郊外の大型ショッピングセンターで購入すれば良いことである。
 それだけで無い要素のものが、「きたみ東急百貨店」にはあったはずである。
 それは、東急百貨店という東京のデパートであることである。
 北海道の北見にあっても、「きたみ東急百貨店」に行けば、東京の最新のフアッション、商品情報、東京という都会の最新の流行の雰囲気に浸れ、且つ東京の渋谷の東急百貨店本店と同じサービスを受けられたのである。
 それらが、「きたみ東急百貨店」が閉鎖することによって、情報、サービスが一切入って来なく、かつ、無くなる。
 北見市の市民にとって、これは喜ぶべきことであろうか。

 同百貨店の2007年1月の売上高は、約57億円という。

 同百貨店は閉鎖の方針であるが、譲渡する可能性もあると新聞は報じる。
 では、譲渡する場合の「きたみ東急百貨店」の価格はどれ程であろうか。
 価格を推定してみることも面白い。又それも不動産鑑定評価の価格分析の参考になるのでは無かろうかと思い行ってみる。

 新聞報道によって与えられている情報は、売上高約57億円という条件一つのみである。
 この条件一つで、売却価格を推定することは、いささか無謀と思われるかもしれないが、そのお叱りは充分承知して、以下に価格推定してみる。

 経営母体が変わった場合、そっくりそのまま事業を引き継いだとしても、顧客離れが必ず生じ、売上高の減少が発生する。
 新しい企業購入者が、顧客離れを防ごうと営業努力をしたとしても、10%程度の売上高減は生じる。
     57億円×0.9=51.3億円
 売上高は、51.3億円と推測される。

 百貨店の売上高に対する賃料は、8〜10%である。
 北見市にあるという立地を考えると、賃料単価水準は低いと思われ、売上高に対する賃料の割合を8%とする。

 年間賃料は、
     51.3億円×0.08=4.1億円
である。

 必要諸経費を建物が古いことと、百貨店であるという要因も考えて45%とする。
 純賃料は、
     4.1億円×(1−0.45)=2.255億円≒2.3億円
と推定する。

 「きたみ東急百貨店」を購入するとして、購入者は投下資本の回収を何年で行うと考えるであろうか。
 まさか20年で行うというのんびりした企業経営者はいないであろう。
 飲食店舗の投下資本の回収年は、5〜7年である。
 これらの回収年を考え、同百貨店の購入金額の投下資本の回収期間を12年とする。
      1÷12=0.083
 還元利回りは8.3%と求められる。
      2.3億円÷0.083≒27.7億円

 売上高57億円の「きたみ東急百貨店」の売買価格は、27.7億円と推定される。 売上高に対する割合は、
        27.7億円÷57億円=0.485≒0.50
である。
 即ち、売上高の半値が売買価格と言うことになる。

 上記で「きたみ東急百貨店」の譲渡価格を予測してみたが、この価格は私の勝手な独自に推定した価格であり、東急百貨店が、どの様な価格の求め方で売買価格を決定するのか、或いは購入者がどの様な価格決定の判断をするのか分からない。

 上記価格は、あくまでも私の推定価格であることをお断りしておく。

 上記記事の中で引用した「駅の左か、右か」という鑑定コラム172)は、下記をクリックすれば、繋がります。

http://www.tahara-kantei.com/column/column172.html

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