不動産の価格の原則として11の原則がある。
それは需要と供給の原則、変動の原則、最有効使用の原則等の不動産価格を形成する諸原則である。
その11原則の中に、予測の原則というものがある。
予測の原則というのは、将来の予測の収益を反映して不動産価格は決まるという原則である。
将来の予測収益が大きければ、不動産の価格は高い価格となり、逆の場合は安い価格ということである。
この場合の予測収益は、合理的で客観的な要素を含んだ予測であって、ただ単なる予想とか願望の収益ではない。
この予測の原則が不動産鑑定評価にもっとも影響を与えているのが、DCF法という手法である。
DCF法は「予測の原則」が無ければ成立しない手法である。
ではDCF法とはどういうもので、DCF法を使って不動産の価格をどの様にして求めるものなのか。
以下に極めて簡単に説明する。
DCF法はDiscounted Cash Flowの頭文字をとって呼ばれている手法である。
現金収支を割り引いて求める手法とでも言うのであろうか。
不動産鑑定では、賃貸建物の賃料より求めるのが一般的であるが、企業収益より企業の生産工場の価格を求める場合にも、DCF法は使われる。
企業収益からのDCF法による不動産価格の求め方は、別の機会に譲って、今回は賃貸建物の賃料からのDCF法の求め方の基礎を説明する。
各年の賃料収入より必要諸経費を控除して純収益を求める。
その各年の純収益を現在価値に割り戻した値の総和が、当該賃貸建物不動産の価格と言うことになる。
この際、現金の収入、支出で純収益を考えるため、現金の収支を伴わない「減価償却費」は、必要諸経費には含まれない。
このことからDCF法で得られた純収益は、減価償却前の純収益ということになる。
つまり減価償却費相当が、利益に含まれていることである。
学生入居向きの木造2階建の4戸のアパートを想定する。
この不動産価格をDCF法で求めることにする。
条件は次のごとくとする。
1戸の月額家賃は5万円とする。共益費月額1戸3000円とする。
敷金2ヶ月、礼金1ヶ月、契約期間2年とする。更新料の授受なし。
家賃は3年後から2%減額になるとする。
空室率は10%とする。
公租公課、管理費、修繕費等の必要諸経費を賃料収入の40%とする。
計算期間は4年間として、5年目の期首に売却するという条件とする。10年間程度の期間計算が望ましいが、基本の説明であり、4年間で考える。
期間10年或いは20年でも、考え方は期間4年の場合と同じである。
こうして求められた各年の純収益が、下記の金額であったとする。
1年目 188万円 2年目 134万円 3年目 129万円 4年目 129万円
1年目 188万円×0.9523≒179万円 2年目 134万円×0.9070≒122万円 3年目 129万円×0.8638≒111万円 4年目 129万円×0.8227≒106万円である。合計は518万円である。