松下電工株式会社が、アメリカのULTホールディングという会社を買収することにした。(2007年10月26日 松下電工ホームページプレスリリース)
ULTホールディングは持株会社で、その子会社にユニバーサル ライティング テクノロジーという会社(以下「ULT社」と呼ぶ)を持っている。
ULT社は、同ホームページによれば、蛍光灯・高輝度放電灯用の放電灯安定器の開発・製造・販売を行っているという。
2006年12月期の売上高は約300百万ドルである。
為替レートを1ドル115円とすれば、
3億ドル×115=345億円
である。
松下電工は、この会社を約80億円で全株式取得して子会社化するという。
ULT社の営業利益が如何ほどか分からず、売上高のみしか分からない。
赤字会社で無く、標準的に利益を稼ぎ出しているものとして、公表されている売上高のみで価格分析してみる。
売上高に対する企業買収価格の割合は、
80億円÷345億円=0.231
即ち、売上高の23.1%の金額での売買取得価格である。
『民事再生法と資産評価』(田原ほか共著 清文社 2001年)のp218に、次の記述がある。
「工場の土地・建物の価額は、概観的には、売上高に対して0.23を乗ずれば、おおよその価格を把握することが出来る。
工場の土地・建物のおおよその価額=売上高×0.23」
この著書(我田引水で手前味噌で申し訳無いが)から言えば、今回の松下電工のULT社の買収価格は、誠に適正な工場の売買価格と言うことが言える。
このことを逆に言えば、工場を建設或いは取得する場合、投下資本の
1/0.23=4.3≒4.0
4.0倍以上の売上高が必要であると言うことになる。
投下資本の4倍以上の売上高が予測出来なかったら、工場の建設もしくは製造企業の買収を行うなと言うことである。
銀行も工場買収、或いは工場建設する企業に融資する場合には、買収工場の売り上げの0.25までの金額が融資額の限界と心得ておく必要がある。
過剰融資して焦げ付きを見ることを避けるために。
もっとも企業の中には、どうしても当該製造企業を取得したいために、売上高と同じ金額で買収しょうとする企業もあるが。高く買いすぎて後で相当の苦労を味わうことになるが。